『アンガーマネジメント&メンタルヘルス』report!
今回は、2021年8月29日にオンラインで開催させていただいた、
『アンガーマネジメント&メンタルヘルス』
の活動報告をさせていただきたいと思います!
HBD(Hiroshima Blue Doctors)は、月に一回程度開催されている若手医師向けの勉強会です。
勉強会の内容はもちろん、当日の講演や質疑応答の内容を一部ご紹介させていただきますので良ければ是非ご一読ください◎
1.今回のセミナーの概要と講師紹介
言わずもがな医療現場はストレスフル!
誰でも,他人にイライラして仕事が手につかなくなったり,怒られて凹んだりしたことはあるはずです.「怒り」は人にぶつけるも,人からぶつけられるのも,イヤですよね.
「怒り」で後悔したり,傷ついたことがあるあなた.
「自分の怒り」と「他人の怒り」に対する対処法を学びましょう!
内容:
・医療職とメンタルヘルス
・アンガーマネジメント
講師
鈴木裕介先生
内科医・心療内科医・産業医
秋葉原内科saveクリニック
2当日のレクチャーの様子
当日のレクチャーの様子について、鈴木先生にお借りした講演資料を一部だけ特別に掲載させていただきながらご紹介させていただきます!
今回の講演は、以下のようなテーマでお話をいただきました👇
●医療職とメンタルヘルス
●アンガーマネジメントの⼼得
●アンガーマネジメントの限界
●怒りと⾃律神経(ポリヴェーガル理論)
まずは、ストレスフルな現場で日々勤務に当たる、医療従事者のメンタルヘルスについてです。
①医療職とメンタルヘルス
メンタルヘルスに問題を抱えている率が76.6%と最も高率な業界である医療、福祉業界は、精神障害の労災請求件数も他の職業と比較して高いです。
なかでも、バーンアウト(燃え尽き)は、対⼈⽀援職である医療や福祉に置いては職業病ともいえるものです。患者さんの訴えが重視されるがゆえ、即時性を求められるのはもちろん、職業柄厳しい規範や、高い責任感を持つ方が多いのが理由と言われています。
確かに、感情の表現が激しい患者さんに振り回されて、心身が披露していくというのは臨床を経験している方であれば誰もが感じるストレスだと私も思いました。
日々忙しい業務の中で、患者さんや同僚にどうしても抱いてしまう、陰性感情のコントロールはとても難しいです。中でも、怒りというのはときに反射的に表出してしまうことがあります。医療従事者にとっても役に立つ、アンガーマネジメントについて学んでいきましょう!
②アンガーマネジメントの⼼得
アンガーマネジメントとは、1970年代のアメリカ発症の、怒りのマネジメント⽅法のことです。元はDVや軽犯罪者の教育プログラムとして考案されたもので、「怒る必要のないところで怒らない」ための⼿法として発達してきました。このプログラムや概念は、現在企業教育や医療現場の教育など、様々な分野で注目されています。
まず整理しておかないといけないのは、アンガーマネジメントは怒るという行動そのものを否定しているわけではないということです。怒る必要のあることは上⼿に怒れ、怒る必要のないことは怒らないようになることを目指しています。
怒りというのは不安、苦しさ、悲しさなどの結果として生じる第二次感情であると考えてみます。問題のある怒りというのは、度を超えて怒りすぎたり、怒る頻度が高かったり、怒るとき攻撃的になってしまうなどといったものです。怒りを表出する前に、まずは数を数えながら6秒間待ってみたり、どれくらい自分が怒っているのか、数値化したり言語化したりするといった対応を心がけてみることが提唱されています。
なかでも、私達が怒ってしまう原因は往々にして、「医療従事者はこうあるべきだ!」「医療従事者なら~するべきだ!」といった、
自分のなかで勝手に構築してしまっている、理想と現実のギャップである考えることができます。これを、他人に対しても抱いてしまうのが、怒りの根源となるのです。
人間の感情は、相手に対して①自分と同じ・②少し違うが許容範囲・③自分と異なり許容できないという3つの領域で分けて考えることができます。
アンガーマネジメントなど様々な手法を用いて、相手と自分が異なるけれど怒るほどではない、②の領域を広げていくことの大切さを学びました!
③ポリヴェーガル(多重迷⾛神経)理論
最後に、今回のレクチャーの中で個人的に最も印象に残った、ポリヴェーガル(多重迷⾛神経)理論について少しだけまとめました!
人間の恒常性の維持に関与している自律神経は、交感神経と副交感神経の2種類で説明されることが多いかと思います。自分自身、自律神経については教科書でもそのように習うことが多かったため、その事実自体に疑いを持ったことがありませんでした。
しかし1994年、⼼臓の精神⽣理学の研究者S.ポージェスが提唱したポリヴェーガル(多重迷⾛神経)理論では、これまでの対抗的⼆元論(交感神経/副交感神経)ではなく、交感神経/腹側迷⾛神経/背側迷⾛神経の階層的三元論として自律神経を説明しています。
すなわちとても簡単にまとめると、これまで自律神経の説明に用いられてきた上の2つに加えて、背側服交感性神経による低覚醒の状態も存在するということです。
これら3つの状態のうち、最適覚醒であるリラックス状態を維持することでストレスに上手に対応することができます。ときに、過覚醒や低覚醒気味になる事自体は否定されるものではありませんが、なるべくその変動リズムを一定にすることこそが、上手なストレスとの向き合い方なのだということです。
このポリヴェーガル(多重迷⾛神経)理論を用いることで、臨床上様々な疾患の概念や、患者さんの感情を説明することができそうだと感じ、個人的にはとてもおもしろいなと思いました!
今後の実臨床で、この理論を当てはめながらいろんな事象を眺めてみようと、勝手にワクワクしています◎
私の拙い解説では、アンガーマネジメントやポリヴェーガル(多重迷⾛神経)理論の概念や素晴らしさはおそらく伝えきれていないと思いますので(開き直ってしまいすみません…笑)、興味がある方は是非鈴木先生の著書、「メンタルクエスト」を手にとって読んでみてくださいね!
医療従事者はもちろん、メンタルヘルスに興味がある方にとってはとても勉強になる一冊ですよ!👇
3.質疑応答
レクチャーの合間や最後には、参加してくださった方々から様々な質問が鈴木先生に投げかけられていました!
例えば、
●劣等感などの陰性感情でもアンガーマネジメントで学ぶ陰性感情対応への基本方針で対処できるのか?
●陰口としてストレスの発散をするのは果たして良いことなのか?
●トラウマを克服しないとアンガーマネジメントの有効性は乏しいのか?
といった質問です。様々な年代や職種から、とても切実でリアリティーのある疑問が沢山でてきて、聞いている側もとても参考になることばかりでした!
ひとつひとつの質問に対して、鈴木先生からgoodnoteを駆使した板書で丁寧に解説していただきました👇
こうしてあっという間の2時間が終了!
メンタルヘルスにそもそも興味が強い方が多く、懇親会参加率も過去1番の高さでした!で運営スタッフとしては嬉しい限りです。
4.次回予告『病棟指示』
次回10月のテーマは『病棟指示』です!
8月には感染状況の影響もあり、残念ながら延長したテーマだったので、今度こそ開催できたらいいなと思っております…!
詳しいフライヤーや申込方法はまた後ほど告知させていただきますね◎
今後もHBDの運営メンバー全員で、楽しく勉強になる勉強会をどんどん企画しますので、何卒よろしくお願いいたします!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?