博士論文

業務用製品開発に適合した人間中心設計手法の構築に関する研究」で博士学位を取得しました。以下のような書き出しとなっています。

概要

コモディティ化した市場において価格競争を避け企業が生き残るためには,製品の機能や性能を向上させるだけではなく,製品のユーザビリティやユーザーエクスペリエンスの向上による競合メーカーとの差別化の努力をしなければならない.日本企業はその手段として人間中心設計プロセスの導入を始めている.

人間中心設計プロセスは1999 年にISO13407:1999(JISZ8530:2000)「インタラクティブシステムにおける人間中心設計プロセス」が制定されたことをきっかけに,日本企業において導入が検討されるようになった.しかし,ISO はプロセスを示しているのみであり,具体的にどのように社内に導入していくかの道筋を示しておらず,企業では実践度合いを上げるために試行錯誤を繰り返している.

特に業務用製品を開発する企業にとっては,人間中心設計プロセスに関する先行研究がその効果を示しているものの,書籍や論文で紹介されている事例のほとんどがコンシューマー製品を対象としていることから,自社で活用できる手法が見つからず導入が進まない状況となっている.

業務用製品とは病院,オフィスや工場などの施設に納入され,主に専門的な知識を持ったユーザーが業務で使用する医療機器,事務用機器や工作機械などのことをいう.こういった業務用製品とコンシューマー製品との間にはいくつかの相違点が存在する.例えば,コンシューマー製品は操作者と購入決定者が同じ人物である,初心者を含んだ幅広いユーザーが使用する,さまざまな場所や時間に利用されるといったケースが多い.一方,業務用製品は操作者と購入決定者が異なる,専門的な知識を持ったユーザーが使用する,業務で使用されるため利用状況が限定的であるといったケースが多い.

このような違いから,一般的に知られている人間中心設計手法であっても業務用製品開発にはそのまま適合させることができない.その結果,そういった製品は市場投入に失敗してしまう.本研究は,これらの問題を解決するために人間中心設計手法のカスタマイズを行い,業務用製品開発に適合する手法を構築したものである.

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