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インクルーシブリーダーシップを実践する


#DIAMONDハーバードビジネスレビュー

"Diversity is being invited to the party; Inclusion is being asked to dance."

多様性であるダイバーシティという言葉は日本でも一般的だがインクルージョンという言葉はまだまだ認知度が低い。包括性と訳されることがあるが、今一つピンと来ないことからか日本語でもカタカタでインクルージョンとされることが多い。

冒頭のフレーズは、インクルージョンが今一つピンと来ない人に説明する際によく引用される米D&I(Diversity and Inclusion)専門家のVerna Myersの言葉だ。日本ではダンスパーティ自体がピンと来ない、ということになるが、米国人ならスッキリわかるフレーズだろう。

多様性のある人々がダンスパーティに招かれている様子を思い浮かべてもらいたい。人種や性別、性的志向、障害者、高齢者等々。しかしそのダンスパーティでお互いがグループを形成して壁際に集まっているだけでは何も新しいことは始まらない。それぞれが属するグループの垣根を超えてダンスをして欲しいとお願いすることになって初めて新しい化学反応が起こる。そういうメタフォーだ。

インクルーシブリーダーシップとは?

このインクルージョンを日常的なビジネス社会で行動として発揮するとはどういう意味なのか。私は以前巷にあるインクルーシブ・リーダーシップについて調査してみたことがある。

エグゼクティブサーチ会社のラッセルレイノルズ

”A set of proactive behaviours that leverage the unique attributes of each person in the workplace with the goal of enhancing overall performance potential”

と定義していた。日本語に訳すと「組織全体のパフォーマンスの潜在性を強化することを目標として職場の個人それぞれの属性を梃とする積極的な行動の集まり」となろう。

デロイトは

Inclusive leadership is about:
1. Treating people and groups fairly—that is, based on their unique characteristics, rather than on stereotypes
2. Personalizing individuals—that is, understanding and valuing the uniqueness of diverse others while also accepting them as members of the group
3. Leveraging the thinking of diverse groups for smarter ideation and decision making that reduces the risk of being blindsided

日本語に訳すと「インクルーシブリーダーシップとは、1. 人とグループを公正に扱うこと-すなわちステレオタイプでは無く異なる特徴に基づくこと。2. 個人を一人一人別の存在とする-すなわちグループの一員として受容すると同時に多様な他者の個々の特徴を理解し価値あるものとみること。3. 盲点が生じるリスクを軽減して、より賢い発想や意思決定を行うために多様なグループの考えを最大限活用する。」となる。

ECが立ち上げているalpの定義はさらに一歩積極的な行動を示唆する。

Inclusive leadership means having the courage to take conscious steps to break down barriers for people at risk of being excluded from society.

「インクルーシブリーダーシップとは社会から排除されるリスクを持つ人々のために障壁を取り崩す意識的なステップを進めていく勇気を持つということだ」

なぜインクルーシブリーダーシップなのか?

それではなぜ今インクルーシブリーダーシップが必要だと言われているのだろうか?

一つには、ビジネスを取り巻く環境、すなわち市場、顧客、アイディア、人材が多様化しているにも関わらず相も変わらず英雄のようなカリスマティックなリーダーシップ像が闊歩しているからだろう。

二つ目には、VUCAと言われる激動の時代に、伝統的なリーダーシップが変わらないといけないことの象徴になっているからだ。

とは言えインクルーシブリーダーシップは、これまでに出て来た他のリーダーシップ、例えばトランスフォーメーショナルリーダーシップ、サーバントリーダーシップ、オーセンティックリーダーシップなどと共鳴する部分がある。

インクルーシブリーダーシップの具体的な行動とは?

インクルーシブリーダーシップを研究した結果、当時在籍していた組織内で唱道した行動は次の三点だった。

・Valuing the unique contributions that each person brings to the team ・Take an active Interest in learning about other cultures
・Acting with humility and seeking contributions from others in order to compensate for one's own acknowledged weakness

日本語に訳すと「チームにもたらす個々人独自の貢献を高く評価する。他の文化を学ぶことについて積極的に興味を示す。自分自身が認識する弱みを補うために謙虚に行動し他者の貢献を求める。」となるだろう。

インクルーシブ・リーダーの話し方

このHBRの記事では具体的な事例を示しながら、インクルーシブ・リーダーとして特徴的な話し方を示唆しているので興味深い。

まず、「聞き手中心の言葉遣い」。「私は...」では無く、「私たちは」あるいは「みなさんは」とするだけで印象は大きく異なる。「みなさんの中には」という言葉で、自分はそのグループとは違うという疎外感を持つ人もいるだろう。

次に、「話のテーマに関する専門知識を示す」。これは大変興味深い。著者はその理由を、インクルーシブリーダーは「他者の視点」、自分の主旨と一致するものも相反するものも入念に検討することで理解と受容の両方を行なっていることをメッセージとして示す、複数の視点を持つリーダーは信頼性を増す、というのだ。

そして最後が「オーセンティシティを示す」。Authenticityとは「真実性、真正性」を言う。言行一致はまさにそれにあたる。特にコミュニケーションにおいては「リーダーがどれほど自分らしく見えるか、自然に話しているか、言葉が意図および行動と一致しているかに関する聞き手の認識を表わす尺度」である。

こういったインクルーシブリーダーシップの話し方は幸いにも学ぶことができる(Developable)なスキルだ。まずは実践。次回のWebinarの講演ではこの三点を留意してコミュニケーションしてみることにしよう。

(本記事の内容についてより詳しくご相談されたい方はこのリンクからコンタクトください。ダイバーシティやインクルージョン活動の企業組織での進め方、インクルーシブリーダーシップや無意識バイアスのトレーニングについてお手伝いいたします。)

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