ブラックコーヒーを自分で淹れるようになったら、まず自分の好きな濃さを知ろう

noteのおすすめで出てきた「コーヒー初心者が飲みやすい豆は浅煎り一択」とかいう記事を見たんですが、「スペシャルティの個性は浅煎りでしか分からないので浅煎り一択!」みたいな主張を見て、うわ、典型的な「オタクが自分のマニアックな知識を披歴ようとしてして、独りよがりぶりにドン引きされる」ケースだ……と思ってしまったりしてしまいました。

私は周囲からもコーヒーマニアとして認知されているのでコーヒーの話はよく振られますが、「評判のコーヒー店でおすすめになっていた高い浅煎りの豆を買ったけど、酸っぱくて飲めたものではない」という相談はよくされます。これは若い女の子から初老のおじ(い)さんまで人を問わないですね。なので浅煎りが初心者向けだとは全然思えないです。


自分としては、「コーヒー初心者」がコーヒーを全く飲まない人ならまずカフェオレから飲ませますし、「コンビニのブラックコーヒーは飲みなれてていて、そろそろ自分で淹れるようになりはじめた人」くらいを指すならば、そのくらいの人に対するアドバイスは「コーヒーはまずは薄く淹れろ、調節が難しければ濃いめに淹れてから後でお湯で割ってちょうどいい濃さにしろ」が最初に来ますね。ブラックの場合、甘味は低濃度でも感じられすぐ飽和するのに対して、苦味は濃度比例で濃く感じられるようになりますので、「初心者」が美味しく感じるゾーンはやや薄目くらいのことが多いです(下図参照)。「自家焙煎店で高い豆を買ったけど魅力が分からない」という文句の半分以上はこれで解決する、というのが自分の経験談です。コーヒーマニアの方も、豆や淹れ方の手技は饒舌に語るけど、味に対する影響が非常に強い濃さの問題にあまり言葉を割いていない気がします。

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図 コーヒーの濃さと味の感じ方


焙煎度については、「コーヒー初心者」がコーヒーに求める「個性」は解像度が粗く、紅茶と比べたコーヒーらしさあたりになるので、コーヒーらしい個性が強調されるシティロースト(2ハゼ始まり程度)あたりが「初心者向け」だと思っています。そもそも元のnoteも「中煎りは全ての人におすすめできる焙煎度」とか書いてありますし。なら初心者向けのお勧めはそっちでしょ、と。浅煎りがお勧めできるのは、自分でコーヒーを淹れるのにある程度慣れた人だと思います。


※コーヒーをお湯で割って濃度調節する話は、日本でも指折りの(出版物でも名を知られる)コーヒーマニアの人たちが、渋みが出ないよう抽出時間の管理を重視するようになる中で、濃度調節を抽出時間を長くするのではなく豆の量をかなり多めにして後からお湯で割って希望の濃度にするというテクニックとして作られてきたもので、割と王道でもあります。

※エスプレッソ好きの方がそれを「はちみつのような口当たりで、しっかりとしたコクとキャラメルのような甘み、そしてどこかコーヒー特有の酸味が感じられる」と評して浅煎りを批判していたのも見たんですが、エスプレッソは当のイタリア人でも砂糖を山盛りぶち込む人が多いのであちらも初心者向きではないですね……

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