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もっと人の目を気にせず転職ができる世の中になればいいのにね

(画像出所) NHK News Web

しょっぱなの投稿からEMBAとは関係なさそうな内容ですが、実は関係があります。私のEMBAでの個人プロジェクト(修士研究)のテーマは、「超高齢化社会において、企業はどのように良質な労働力を確保しサステイナブルに成長するか」でした。おお、仰々しい…けど興味があったんです。


2040年の日本、高齢化によりどれだけ労働力は減少するか?

本日2023年4月7日の日銀の黒田総裁の最後の会見(任期は明日4月8日まで)で、彼は、10年間の総括の中で、こう述べました。

経済の改善は労働需給のタイト化をもたらし、女性や高齢者を中心に400万人を超える雇用の増加が見られたほか若年層の雇用環境も改善した。またベアが復活し、雇用者報酬も増加した。

NHK News Web

日本は世界で最も早く高齢化が進行している国です。知ってましたか?2022年現在、総人口の1/3が65歳以上です。更に、労働力人口(15歳~64歳の人口)は2022年の6,430万人から、2040年までに1,500万人(約25%)も減少することが予測されています。つまり、日本経済は約25%縮小するということです。ますます貧乏な国になります。私が貧乏になるのは良いんですが、娘たちや次世代の若者に大変な思いをさせたくありません。

世界一の超高齢化社会で、経済を復活させるには?ー2つの選択

労働力減少の解決無くして経済の復活はあり得ません。解決策は、「①減少分を補う労働者を受け入れる」か、「②1人当たりの労働生産性を上げて減少分を補う」の2択です。

①においては、移民、女性、高齢者に労働参画してもらうことが解決の一助となります。しかしここで、日本は島国単一民族嗜好国家であることから、移民は定着しないと私は考えてます (させないとダメだけどね)。従い、女性・高齢者がカギを握ると考えています。日銀主導の低金利・円安誘導による景気刺激策は、女性・高齢者労働者数の400万人の増加に寄与したわけですから、大きな進歩であり、今後のさらなる推進への先鞭をつけることが出来た点で立派な成果です。どんどんやろう!

一方で、②一人当たり労働生産性を上げることも同様に重要です。そのためには、技術革新・イノベーションを生み出し少ない労働者でも多くの価値を生み出す必要があります。しかし、日本特有の終身雇用制こそが、これを阻む障壁であることが学術研究により指摘されています。(山田, 2016) 1つの組織に所属し続けることで、その人が持つ知識・経験の社会的広がり(”知識のスピルオーバー”と呼びます)が制限され、知見の交換・組み合わせによる革新が起きないという主張です。

EMBAでも知識・経験の持ち寄りが根底に流れる原理・原則です

これは、私がEMBAへの入学が決まった際に、初めに読むことを課された本としてRebel Ideas: The Power of Diverse Thinking の主張と同様です。著者は、ダイバーシティ(3人揃えば文殊の知恵)による社会的進歩の数十の事例(反例含む)が多数紹介し、そして、グループでの知恵を持ち寄り下した判断と実行の結果が、1人のそれより優れているかを論じています。

この考えを題材にした入学時に行われたManagement Praxis(経営実践)の第1単元は、その後20か月続くEMBAプログラムの全て(財務・戦略・イノベーション・個性とリーダーシップ・マーケティング・組織行動学・マクロ経済・コンサルティング実践…)の根底に流れるプリンシプル(原理・原則)を事前に教えるために企図されたものでした。すなわち、リーダーたるもの、ダイバーシティによる人間社会の進歩を理解し、それを常に念頭に置いて意思決定・行動せよと言うことです。EMBAで体の中に染み込ませられた最も重要な概念の1つです。

EMBAからズームアウトし、日本企業のあるべき姿を考える

さて、話を元に戻すと…。現代の日本において、労働市場の硬直性は、日本経済、日本の会社、日本の社員(個人・国民)にとって大きな経済的・社会的損失です。

「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた

(出典 日経ビジネス「「終身雇用難しい」トヨタ社長発言でパンドラの箱開くか」

2019年にトヨタ社長(当時)の豊田章男さんの上記発言に端を発し、年功序列制度の廃止、ジョブ型雇用の推進など、民間セクターの大手企業も動き出しを始めていることは、大賛成です。私は、更にドラスティックに「企業の責務として転職を推奨する」施策を打つべきと考えてます。翻って企業にもイノベーション・技術革新の恩恵を得ることが出来るからです。

具体的なアクションとして企業に提唱したいのが30代後半からの学びなおしの提供です。あなたと私の知識とスキルは日に日に陳腐化しています。従い、磨きなおすことは必須です。しかし、個人で取り組むのはお金と時間が掛かりすぎるので、後回しにしがちです。そうこうしているうちに、50代に差し掛かると、低スキル・低労働生産性を起因とした低賃金の罠にはまります。終身雇用制度があるから私たち社員は低い給料に悩まされ、一方企業は、クビにしづらいので、その費用が企業業績を圧迫します。これでは個人も企業も日本も得しません。

早い段階から学び直しの場を提供することで、50・60代になった私たちが高い労働生産性で企業に貢献できる状態を社会全体で作り上げることが重要です。給料も上がります。更に、他の企業も評価して雇ってくれますから、終身雇用制に起因する労働市場の硬直性が打破され、企業にとっても個人にとっても嬉しい好循環が訪れます。それは、日本経済のGDPを底上げするイノベーション・技術革新の恩恵を与えます。

おわりに(実践したらどうなった)

自費ですけど学び直しをした私は、16年勤めた会社に残らず去る決断をしました。全く違う業界で、16年で染みついた常識とはかけ離れた人たち・考え方・仕事の仕方に驚き、逆に私が持っている知識・経験・考え方を彼らに伝えることで自分も組織も進化をすることが出来ていると思います。私の専門はロジスティクスですが、転職した金融業界で生かせる私の知識・経験は両手では数えきれないほどありますし、逆に、ロジスティクスに生かせる業界横断プラットフォームの作り方・制御の仕方を既に同業界関係者に伝えました。

雇用流動性を高めて、日本経済が更に活性化することを願っています。また、今後、それを加速させる働きかけを仕掛けていければなと思っています。


(参考文献) 山田久 (2016)、「失業なき雇用流動化:成長への新たな労働市場改革」、慶應義塾大学出版会

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