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これまで取材して表に出なかったものを読みたい人はいるのかな

一般の、事務職とかしている人から見て、ライターというのはどういう仕事に見えているのかなあって思うことが時々あります。
ライターといってもいろいろあって、雑誌やウェブで記名記事を中心に書いている人もいれば、私が前職でしていたように、カタログやパンフレットなどのコピーや小さな特集、さらには商品詳細を文字数に収まるように書いたりしている人もいます。
この間中秋節の話を書いて、それが今週のおすすめ記事とかで紹介されたことで、今までにないスキをいただいたりして、それがとても励みになりました。
私がメインで書いてきたジャンルは食べ物やお酒、食器、伝統工芸といったジャンルなんですが、自分がすごく面白いと思って1年間取材を続けて、出版社などに持ち込んでもことごとくNGを出された企画もたくさんあって、そういうものこそnoteで書くべきなのでは?と今更ながらに思っています。
もともと私は日本ワインの造り手さんを応援するボランタリーなグループの代表をしていたこともあったし、国産ワイン向けのコンサルティング会社でマーケティングの仕事をしていた経緯があるので、日本ワインの造り手を多く取材してきました。

造っている人の顔の見える記事が書きたくて

カヴァーの写真、どなたかわかりますか?
すぐにわかる方は、山梨のワインにかなり精通している方かも知れませんね。
これは、シャトー酒折のキュヴェ・イケガワの畑を取り仕切る、池川仁さんの10年ほど前の写真。
一文字短梢で育てたマスカット・ベーリーAの収穫を行っているときの1枚です。
かれこれ10年ほど前、1年近くの間、冬の剪定の時期から収穫、そして仕込みの時期までの取材をさせてもらい、それを某出版社に持ち込むも不調に終わり、「そんなニッチなもの誰も読まねえよ」的なことを編集者さんに言われたことが忘れられません。
また、私が以前派遣社員→業務委託契約をしていた株式会社YUIDEAが以前持っていたオウンドメディアでは(残念ながら昨年度でクローズになったようです)、丸藤葡萄酒工業の大村春夫社長と、シャトレーゼワイナリーの戸澤一幸氏の「師弟対談」みたいなものも掲載したことがあり、日本ワインに関わるたくさんの方が読んで下さいました。
今そのアーカイブや原稿が残っていないということが個人的には恐ろしいのですが、何らかの形で復刻できないものかと思っています。

取材したい人がたくさんいる、日本ワインの現場

キスヴィンワイナリーの荻原さんが作った甲州

私が日本ワインに興味を持ったというか、真面目に知識を深めようと考えるようになったのは、ソムリエになりたいと考えるようになった頃のことでした。
私が20代前半の頃、日本で初めて世界ソムリエ大会が行われて、田崎さんが優勝したのですが、その当時は何度めかのワインブームに日本中が沸いていた時期でした。
ワインが好きになったきっかけは、旅先のペンションで巡り合ったボルドーのワインと、それを適切においしく飲ませてくれる技量の持ち主であった今の師匠との出会いに遡ります。
アルコールの中では珍しく生果から造る醸造酒で、経年変化をする奥深いお酒であることや、どのようにぶどうを栽培し、ワインを造るかでその表情が変わる繊細さに心惹かれ、気がつけばソムリエスクールに通うようになっていました。
そしてたまたま見つけた、勝沼の造り手が集まってプロモーションをしていた「ヴィンターネット」に関わるようになり、さまざまな造り手と出会うことになります。
現在ではベテランとなった方々から、若手の方まで、ともにワインを酌み交わし、さまざまな話をしてきました。
表に出す機会が持てなかったさまざまな話も、今では私の大きな糧となっています。

このままでいいのか、立ち位置をみんなに確認して欲しい

池川さんのマスカット・ベーリーAの畑

池川さんの話をまとめてアップしたいけど、果たしてそれを読みたいと思う人がどれくらいいるんだろう、なんてことも思ったりする一方で、もうそろそろ引退を考え始めているベテランの造り手の話を、まとめておきたい気持ちがとても強く、話を聞いて回りたいのです。
若い造り手には、それぞれの考え方があり、そうした中でもムーブメントを牽引していく造り手もいます。
例えばボー・ペイサージュの岡本英史くんや、ドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦くんのような。
考え方は十人十色で、ワインとの向き合い方は本当にそれぞれだと思います。
今はさまざまなイベントで、一般消費者が造り手と交流し、話をする機会がとても多くなりました。
その一方で、ワインジャーナリズムはどうなのかな、という感じもしています。
トレンドを作るのではなく、ワイン造りの現場を偏りなくきちんと伝えていけているメディアはあるのか。
もちろん、私自身が偏っているかいないか、という点も含め、日本ワインの立ち位置はこのままでいいのか、ということを考えるきっかけとなる媒体が必要なのではないかと思ったりはします。
今はかつての麻井宇介さんのような「叱ってくれる存在」がいないからこそ、そうして立ち位置を確認することは大切だなと思っています。

そんな話を掲載するためには、取材費と時間という、私にはどうにもならないものが必要なのですが、誰か出してくれる人はいないかなあと思っているところです。
どなたかいらっしゃいませんかねえ、そんな酔狂な人。

そんなことを言っているうちに、今年も仕込みのシーズンが終わっていきます。
造り手にゆっくりと話しを聞くなら冬。季節はもうすぐそこです。

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