井出玲子

編集者で作詞家志望のライター、フードコーディネーター。一応JSA認定ソムリエで、ワイン…

井出玲子

編集者で作詞家志望のライター、フードコーディネーター。一応JSA認定ソムリエで、ワイン方面はライフワークです。 普段の雑多なことや、美味しいものの話を中心に書いていこうと思います。 文章やフードコーディネート、編集のお仕事は下記まで。 heartyfood33@gmail.com

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グラスの中の初夏

カクテルはお好きですか? もちろん、カクテルと言ってもいろいろなものがあり、好みも人それぞれ。 甘くやさしいフルーツを使ったものや、きりっと辛いマティーニ、その日の夜を始めるのにふさわしいジントニック。 今日はジンフィズの話をしようと思います。 ジンフィズといえば、ジンとレモン、ソーダに少しの砂糖をシェイクした甘くさっぱりした飲み心地の透明なものを思い浮かべる人が多いでしょう。 そんなジンフィズの中でも、カクテル好きなら知っている、ちょっと変わったスタイルのものがあります。

    • 愛しているから離れていくということ

      世の中には人が離れ離れになるという物事がたくさんあります。 それは恋人との別れや、結婚相手との離別、大切な家族との別れ、大切な友人や、かけがえのない人とのサヨナラなど、出会った人の数だけ、それはいつしか訪れるものだと思います。 愛し合った恋人との別れには、感謝や笑顔なんてないと誰もが言うし、大切な家族とのお別れにはその逆の、敬意や感謝がたくさんたくさん詰まっていると思います。 けれども、なんらかの物事が原因で誰かと「離れざるを得なかったとき」に、どんな感情を抱くのかといえば、

      • ブランチは甘い香りにのせて

        少し遅く起きた日曜日の朝、趣味で飼っている熱帯魚たちに餌をあげ、前夜早くに眠りに落ちてしまったこともあり、散らかったままのテーブルを片付け、ぼんやりと何を食べるか考える。 そういえば前に、ホットケーキミックスを買っておいたなあ、と思い出して、パントリーを探すと、奥の方からその袋が出てきました。消費期限も大丈夫。今日は牛乳と卵もあります。 袋を見てみると、1人分くらいの分量が小分けになって大袋に入ってるんですね、最近のホットケーキミックスって。久しぶりに作って初めて知りました。

        • 有機栽培ってこういうこと……大西ハーブ農園を訪れて(2012年)

          世の中では、オーガニックや有機栽培の野菜が何よりおいしくて安全と思われていますが、実際のところはどうだかご存知でしょうか。 オーガニック農家の中でも有名な久松達央さんあたりに言わせると、有機栽培そのものが時代遅れなのだと言いますね。 実は有機栽培の野菜は、農薬を散布することがなかったり、少なかったりすることから、野菜や果物自体が自分を守ろうとするために、自ら毒素を出して身を守るので、アレルギーを持っている方にはかえって良くない、というのは、農業系のお仕事をしている人の間では常

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        • 病気のこと
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        記事

          呪いの言葉と心の鍵

          ストレスに弱かったり、メンタルが強くなかったり、何らかの病気を抱えている人ならわかるかもしれないのだけれど、誰かの何気ないひとことが、自分にとっての呪いになっているケースがよくあります。 機能不全家族の中で育ち、運動が苦手なことでクラスの子から心ない言葉をかけられたり、塾や習い事に通えば、そこで先生から言われたことが心にまとわりついてしまったり、そうでなくても屈折した人生を歩み始めているのに、屈折しすぎて元の位置に戻っちゃうくらいにはいろいろなことがありました。 今は亡き大

          呪いの言葉と心の鍵

          キュヴェ・イケガワが生まれるまで~2012年密着取材記

          ※この記事は2012年に取材し、執筆したものです。今後続きを執筆していく予定です。 1.想い「いやあ、実はこれ、どうかなと思って、みてもらおうと思って……。」 そう言って振り返り、大きなタンクの並ぶワイナリーの片隅に、数樽だけ並ぶ樽のほうを見ながら、私と、その頃、私の上司でもあった醸造家、現Cfa Backyard Winery代表でもある醸造家、増子氏に、少し不安げな顔で井島さんは促し、テイスティンググラスとピペットを手に、その樽の脇へと促した。その樽に入っていたのは、そ

          キュヴェ・イケガワが生まれるまで~2012年密着取材記

          いまはあなたが遠くても

          私は母と仲が良くありません。 仲が良くないといえば大したことはなさそうな感じがするけれど、ある事情から接触を避けている、というのが実のところです。 母との間には幼少期からの大きなわだかまりがあり、ある時から母と直接やりとりをすると、精神的なバランスを崩してしまうことが増えたのが原因になっています。 自分が幼少期に負った心の傷がトラウマとなり、それが母にも問題があったためだとわかったとき、お互いのために母にもカウンセリングを受けてほしいと頼んだことがあるのだけれど、そんなものを

          いまはあなたが遠くても

          薬は心の杖

          ここを読んでくれている人の中には、何らかの病気を抱えて悩んでいる人や、つらい思いをしている人もいるのではないかと思います。 私もそのひとりで、脳がバグを起こしているので、メンタルの病気やストレスが元となってかかる病気をいくつも持っています。 隠し立てしても仕方ないので、就職活動をするとき以外はクローズにすることもなく、こうして大っぴらに書いたりしています。 実は8月に、今就いている仕事がトリガーになり、適応障害を発症して会社を2週間休みました。 前職で経験した、緻密な校正の

          薬は心の杖

          あなたのファンでいることが、最大のアピールになる

          皆さんはチーズ、好きですか? 私は苦手な種類のものもありますが、割と好きです。 というか、ソムリエの資格を取る直前にいた店では、チーズの仕入れ担当をしていたことがあって、フェルミエさんからいろいろと仕入れて原価管理をし、チーズのプレートを作ったりしていました。 私はハマるとどこまでも深追いするタイプなので、当時持っていた「チーズ図鑑」では飽き足らず、料理書専門の古書店で手に入れた「ラ・ルースチーズ辞典」をめくりながら、ヨーロッパの昔ながらのチーズのエピソードなどを興味深く読ん

          あなたのファンでいることが、最大のアピールになる

          苦しくてつらいのが恋だと思っていた

          小さな頃、祖母の家に泊まりに行くと、夕食の時間が早かったので、食事を食べてからテレビを見たりして、茶の間でのんびりするのが習慣になっていました。 祖母はよく戦争の頃の話をしてくれて、時折ふと思い出したように、部屋の奥にある仏壇の下から、古ぼけたお菓子の缶を出してきました。 その缶の中にはたくさんの小さなモノクロの写真が入っていて、戦時中出征前に撮影した兄弟の小さな写真を見せてくれるのです。 まだ写真をプリントするのが高価だった頃だからなのか、それぞれの写真は大きくても名刺くら

          苦しくてつらいのが恋だと思っていた

          港の見える部屋でクスクスを

          クスクスが食べたくなると、亡くなったある人のことを思い出します。 その人は原宿のマンションにパートナーの女性とともに住んでいたのですが、そのマンションに欠陥が見つかったことから、パートナーの所有していた横浜中華街近くのマンションに転居し、パートナーと2匹の猫とともに暮らしていました。 広々としたリビングは書斎を兼ねていて、間接照明の薄明かりの中、キャビネットや壁を見ると、アール・デコを感じさせる、上品なアンティークのからくり人形や絵画が飾られ、昔、親から継いだもののバブル期を

          港の見える部屋でクスクスを

          いくつになっても、初めては楽しい

          どこかに宣言をしておかないと、立ち消えになってしまう気がして嫌だから、ここに書いておこうと思います。 私はもうアラフィフのいい年をしたおばさんなのだけど、この年になって初めて、ある取り組みを最近始めました。 それは「フィクションを書く」ということ。 今のところは短編になる予定で書き始めています。 もともと、自分はフィクション向きではないのではと思っていた節があり、エッセイを中心に書いていければいいなと思っていたりもしたんですが、とあるきっかけであることを思い出し、これを小説に

          いくつになっても、初めては楽しい

          これまで取材して表に出なかったものを読みたい人はいるのかな

          一般の、事務職とかしている人から見て、ライターというのはどういう仕事に見えているのかなあって思うことが時々あります。 ライターといってもいろいろあって、雑誌やウェブで記名記事を中心に書いている人もいれば、私が前職でしていたように、カタログやパンフレットなどのコピーや小さな特集、さらには商品詳細を文字数に収まるように書いたりしている人もいます。 この間中秋節の話を書いて、それが今週のおすすめ記事とかで紹介されたことで、今までにないスキをいただいたりして、それがとても励みになりま

          これまで取材して表に出なかったものを読みたい人はいるのかな

          つよがりと言い訳(その2)~愛してやまない祖母の家でのこと

          ふるさとはどこですかと問われたら、東京です、と答えるのだけれど、東京のどこかを問われると、なんとなくスッキリしない。 生まれたのは北区岸町の病院だけれど、幼い日をそこで育ったという印象がないので、そんなふうに思うのかも知れません。 家庭がいろいろと複雑で、3歳位で山梨県塩山市に住む父方の祖母の元に預けられ、5歳の時に母に引き取られて、北区東十条のマンションに引っ越しました。 北区岸町の家は母方の祖母の家で、小学校の5年生になった頃に東十条のマンションから引っ越して、中学生の3

          つよがりと言い訳(その2)~愛してやまない祖母の家でのこと

          たくましく美しい、魚たちのように

          みなさんは水族館って好きですか? 私は大好きです。 それがたとえ人間の管理下で健康を保ち、生きながらえている「不自由な存在」だったとしても、水の中でひれをたなびかせながら泳ぎ回るさまを見るのは、自分の縮こまった体や心を思い返すと、とても自由に見えるのです。 サンゴや岩礁の間をすり抜けながら、自分の体を震わせながら、異性にアプローチして子孫を残していく姿は、ちょっと人間のそれとは違う感じがして、その強さが愛おしいと思うのです。 20代のはじめ頃、当時はまだまだバブル景気に湧い

          たくましく美しい、魚たちのように

          夜空を見上げて想う、大切なあの人

          20代の後半、さまざまな事情から飲食店の仕事を辞め、ふらふらしていた頃に、友人が取締役を務める会社のお酒の納品先だった、丸の内にある中国料理店の仕事を紹介され、そこで1年ほどアルバイトをしていたことがあります。 高級な店でも、町中華でもない、ちょっと中途半端な立ち位置のお店。 丸の内駅前の、高層ビルの地下街にあることもあり、周辺のサラリーマンが仕事帰りにやってきては、ビールと紹興酒にコース料理で宴会、みたいな雰囲気のお店でした。 台湾人の料理長と、上海人のサブの料理人2人で厨

          夜空を見上げて想う、大切なあの人