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ショートショート ほわっとちゃんと黒ガトちゃん

「ごめんなさい。」
バターパウンドケーキのほわっとちゃんが言いました。
「あたしこそ。」
ガトーショコラの黒ガトちゃんが言いました。二人仲良く、同じお皿の上でした。
「いいの。」とほわっとちゃん。「先に食べられちゃう、私が悪いんだから。」
「何言ってんの。」と黒ガトちゃん。「先に食べられるのは、あたし。」
「私が悪いの。バターたっぷりなんだもの。きっとお腹いっぱいになっちゃう。ひとりぼっちにしてごめんね、黒ガトちゃん。」
「あたしこそ、チーズもチョコも入っててごめんな、先で。」

おやつよ、とお母さんの声がしました。子供が二人、走ってきました。
お姉ちゃんがほわっとちゃんをつまみました。半分にして、口に放り込みました。
「おいしい。」
弟がきて黒ガトちゃんをつまみました。やっぱり半分にして、口に放り込みました。
「おいし!」
「半分、あげる。」「僕も!」
お互い口に放りこみました。
だからお腹の中でも、二人は一緒でした。

ショートショート No.62

マスク文庫さんのスイーツな小説コンペ応募作です。

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