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ショートショート カフェオレのいわれ

アラバマの娘 愚かなルーシー
赤い癖っ毛 そばかすだらけ
買い物帰りの山道で
どこぞの野犬に襲われた

農場奴隷 まぬけのジム
たくましい体に 夜のような肌
とっさに野犬を追払い
ルーシー抱えて 送り届けた

それから二人は 逢瀬を重ね
ある夜 街を逃げ出した
両親 警察 奴隷主
皆が血眼で追いかけた

ジムの体は夜の色
けれどルーシー ミルク色
奴隷主がめざとくみつめて
ばん
長い銃口が 火を拭いた

白い肌が 青ざめて
ルーシーの気が遠くなる
牧場の中で牛に紛れて
ルーシーがジムにささやいた

ここではあたしたち 幸せになれない
離れ離れになるけれど
あたしはミルクの国に逃げますね

牛の中にルーシーおいて
ひたすら走った まぬけのジム
故郷の街に 南の国に
はるか ブルーマウンテン
豆の国に

ミルクが沸いた。カップに注ぐ。
用意しておいたコーヒーを混ぜる。

こうして
恋人たちは再び出会うことができました。
だから、砂糖なしでもカフェオレは甘いのです。


おいしい。

ショートショート No.115

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