昨日のお客さん。2月18日

ひまだった。ひまだったのに、タイムカードを切ったのが夜中2時2分。まじか。

最近はどんどん深夜につよくなりつつある。というのも、慣れたからという理由をべつにして、「感情の起伏をなるたけ起こさない」というやり方を身につけてきたところで、「できるだけ淡々に」「無に」なることが、眠気とつかれをあまり感じないようにさせる好手段なのだ。


20時半にNGNさんがくる。せいらさんとマキさんがしゃべる。あまりにひまでお客さんがくる気配もないので、ママさんがNGNさんのとなりに座った。

NGNさんが、「春からどうするの、どこかに就職するの?」と私に聞いてくる。

「ナイショです」「身請けしてあげるから、ここ(お店)やめないでね」と笑いながらいうNGNさんに、マキさんが「身請けとは?」ときく。

「むかしのさ、花魁、ほら吉原とかあるでしょう、ああいうので、身請けっていうのがあったのよ。ほらああいうところって、囲われてるから。どこにも行けないから。人身売買のセカイだから、結婚するか働きつづけるか、みたいな。で、身請けされる女の子っていうのはもう、いまのお金でいったらそらすごいわよ、2億とか払ってもらえるんだから」

とママさんが麦シャンパン(ビールのことですわ)をぐーびぐび飲みながらマキさんに話す。

「え、じゃあ、王子さまじゃないですかあ」

と言いかけたマキさんは、

「…あ、いやうーん、そうでもない、のか…?」

と自ら否定する。

「まあそうね、王子様っちゃ王子様だけど、でも、そうはいったって、その身請けされた女の子だって、外でて、仕事、まあお相手ね、しなくていいって意味では、王子さまだけど、でも、そのひと、身請けしてくれたひとの本妻になるわけじゃないし、2番目っていうか、愛人、みたいなポジションでしょう、まわりの目とかもあっただろうし、それまでああいう仕事してきて病気になったりで子供がうめないからだだってふつうにあるわけだから」

とママさんが言った。

「身請けしてくれるそのひとがいいひととは限らない」

と締めくくられた。


22時近くになってもお客さんがこない。みかさんが「もう22時だわ…」とつぶやいたかと思ったら、電話が鳴った。TMTさんが5人でくるらしい。


もう少しで70歳になるというTMTさんの退職祝いだということで、門前仲町の「伊勢屋」でお赤飯を買ってきたというTMTさんは、「お祝いだから、みんなに一口ずつ食べてもらいたい」と言ってお赤飯をあけた。黒ゴマを少々ふりかけて提供する。70歳に見えないTMTさん。お若いし、元気だ。「カレーパン買ってきたよ」というTMTさんは、いつも大量になにかお土産を買ってきてくださる。

なんでも、「数が少ないと、貧相にみえるんだよ。俺それがいやなの」と言うTMTさんは、ほんとうにがっつりと一気にいろんなものをお買い上げなさるので、一緒にいるこっちが「そ、そんなに!?」とワタワタしてしまうほどだ。


TZKさんがくる。じゅりさんとゴルフの話をしていた。私はゴルフのゴの字も知らないので、「スコアを70出すのはすごい、しかも女の子で」と絶賛するTZKさんに、まわりのひとが驚く。じゅりさんは謙遜するも、「ゴルフは頭だからねえ」とそのあとふらっといらっしゃったWTKSさんが褒めていた。「俺なんか100もきれないくらいよ。もうずいぶんやってないから110とかいっちゃうんじゃないかなあ」というWTKSさん。0時半過ぎに帰っていったTZKさんを見送って、ママさんは麦シャンパンをがんがんに開けのみ、WTKSさんに「うたって!」とマイクをさしだしていた。


中野サンプラザの「大きな玉ねぎの下で」をリクエスト。

ここが二軒目だというWTKSさんは、「もうずいぶん酔っ払っているんだ」と言いながら最初に冷えたお水をのんでいたくらいで、顔色はまったくといっていいほど変わらないが、うたうと酔っているのがなんとなくわかる。

ママさんが「あたしも歌うわ!」と、「グロリア」を熱唱していた。

さて帰りましょうかと準備をしていると、どんどん曲をいれるママさんに、なんの歌をうたおうかとスマホで曲選びをしているWTKSさん。

小林明子の「恋におちて」を歌うママさん。じゃっかん涙目になった私を、WTKSさんは気づいただろうか。


ユーミンをリクエストしたWTKSさんに、ママさんは「やさしさに包まれて、にしようかしら、紅白のね〜あれね〜感動しちゃってね〜」と言うので、「私は埠頭を渡る風がいいです!!!」とリクエストする。

「シメの歌にこれってどうよ?」と言いながらも歌ってくれた。後半は私にマイクが向けられ、歌った。


そのあとママさんが米津玄師の「Lemon」をいれ、「歌ってこれ」とマイクを私に差し出す。歌えないです〜〜〜と断る私に、「パワハラかしらんこれ」と言いながら歌わせる。だれも歌おうとしない(歌えない)ので途中で切った。


「WTKSさんにとっての音楽の神様ってだれですか」

と聞くと、即答で「中島みゆき」と返ってきたので、ママさんが「あれ歌いたい!」と言って「空と君のあいだに」をいれた。

「2番が好きです」と言う私に、案の定マイクが渡される。


「きみの心がわかるとたやすく誓える男になぜ女はついてゆくのだろうそして泣くのだろう」

だなんて、さらっと言える書ける中島みゆきは最高にクールで格好良くて天才だと思う。


帰りはママさんに一万円のタクシー代をもらって帰った。

嬉しい!楽しい!だいすき!