見出し画像

教育実習記(2)

 教育実習が始まる前の打ち合わせの際に、担任のK先生が、「最初の頃はお互いを探り合ってた時期があったけど、今はだんだんクラスにうち解け始める時期になってきた」という話をしていた。確かにクラスは全体的に仲良くやってる感じだった。
 K先生は生徒のことを「高校1年生は幼いよ~」と言ってたが、A組は特に男子に大人しい子が多いせいか、俺がが1年生の頃のクラスと比較すると、確かに幼い(優しい?)印象を受けた。
 普通、クラスに20人男子がいれば、ラグビー、野球、バスケ部などの運動部の生徒がクラスの中心メンバーとなるはずだが、A組にはそういう1人もキャラがいない。サッカー部は2人いたがどちらもおとなしい感じで、軽音楽部か卓球部とかテニス部とかが集まっていた。

【 他県の事情は詳しく知りませんが、私が勤務している県(他県)では、基本的に中学校に対して、新規入学生がどのような生徒であるのかを聞き取りしています。学力が高い高校であれば同じ中学校からたくさんの生徒が集まるようなことは少ないですが、手頃な中下位校の場合は、近隣の特定の中学から10人以上の生徒が入学する場合も多く、中学時代の人間関係をそのまま高校に持ってくることもあるため、中学時代にトラブルがあった生徒同士は別のクラスにしたり、授業中に騒がしい生徒や発達特性のある生徒が1クラスに固まらないようにしています。
 おそらく、母校の場合はそこまでの配慮はしておらず、芸術選択科目でクラス分けをしていたはずなので、音楽選択クラスだったA組におとなしめの男子生徒が集まったのだろうと思います。】


第2日目

 教育実習2日目ということもあり、クラス全員の顔と名前が一致するようになってきた。事前にクラス担任から写真と名簿をもらっていて、名前と顔を覚えてきたつもりだったが、写真と全然違う顔の生徒も何人かいたし、実際に会って話してみるとイメージと全然違っている生徒も結構いた。

 1限はB組で、M先生の現代社会の授業を見学した。
 生徒にテスト問題を見せて貰ったら、なかなか高度な問題が多く、俺も知らないようなことが結構問題に出されていた。
 M先生の授業では、授業の冒頭に「小話」があって、それだけで授業の半分ぐらい使ってしまっていた。こういう自由な授業が出来るといいなと思った。

 小話の内容は、先日報道された、非嫡出児の無国籍問題に触れていた。日本人の父と外国人の母の間に生まれた後、父親から認知を受けた子どもに日本国籍があることの確認を求める訴訟を題材に、スウェーデンは非嫡出児比率が56%、フランスが50%であるのに対し、イタリアは10%、日本が2%であることに触れていた。
 またそれに関連して、遺産相続についても、非嫡出児は嫡出児の半分という件にも触れており、「次の違憲判決はこれが来る」と予言していた。

【 M先生は、ニュースなどを題材に小話を展開し、それを授業につなげていくというスタイルをされており、「教科書を教える」のではなく、「教科書で教える」と仰っていました。違憲判決の予言も当たりました。】

 3限の日本史の授業はテスト返却から始まったが、担当者は「語群選択問題に同じ記号を何回も使った」生徒に対して苦言を呈していた。
 テストの記号問題が分からないときに全部同じ答えにしてみたり、同じ単語は2回使わないはずなのに全部同じ単語にしてみたりすることがあるが、この先生は、「そういうセコいことをするやつには点をやらない」と怒っていたのだ。

【 この考え方は賛否両論あると思います。入試であれば1点でも多く取ろうという意味で、分からない問題もとりあえず記号を書いておくというスタイルが正しいと思いますが、「日頃の学習成果をチェックする」という趣旨である定期テスト(そして担当者の斟酌によって評定がつけられる学校の制度下)においては、全部同じ記号にするという学習態度は好ましくないのかも知れません。】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?