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教育実習記(13)了

第10日目(最終日)

 始業前に、昨日の研究授業について、教頭先生からご高評を賜った。
 他の実習生と比較して、上手くできており、クラス全体を見渡せていたこと、教材研究をしっかりしていた点を認めていただけた。

 1限は、A組の音楽の授業を見学した。今日が最終日で、クラスの授業と関わる機会もこれで最後となるため、小さなことまで見逃さないように気をつけた。
 授業は教育実習生が担当していた。俺が最初に担当した授業のように、生徒を置いてけぼりにしていると感じた。生徒が音楽の知識をどれだけ持ち合わせているかを認識していなかった(当然、説明している自分はよく知っている)ためか、説明を端折ってしまっていて、理解できない生徒が騒ぎ出す事態となってしまっていた。
 和音の説明をしていたが、音楽経験者を前提とするような説明だったために、実習生が質問をして、偶然知識のある子に当たれば上手く進み、知らない子に当たると次の子を当て、また次の子を当て、と繰り返していた。生徒は授業を聞かず、周りと喋りながら問題を解いていた。これではいけない。

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 4限はC組での実習だった。M先生は、「自由にやればいいよ」と言われたが、結局はプリントに沿った授業しかできなかったように思う。自由な授業ができるようになるのはいつのことだろうか。
 授業は全体として、可もなく不可もなくという感じだった。昨日の研究授業の方が幾分うまくいったのではないかと思っている。最初の授業で、「ふつうにテキトーにやってる先生より熱意があって良かった」というコメントを書いてくれた生徒がいたけど、果たして、その子が最初に感じた俺の「熱意」を、今回の授業でも感じてくれただろうか。

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 そしてとうとう教育実習最後の帰りの会。

 挨拶の中では、今までの感謝の意を伝えた。
 また、彼らに伝えておきたい事を話した。

 まず1つめは、他人からの評価を気にしすぎず、素直に生きて欲しいということ。小さなことを気にせず、大きく生きて欲しいということ。
 2つめは、「現代社会」を教科書のなかのできごととして捉えるのではなく、自分と世界をつなぐキッカケにして欲しいこと。他人の言うことを鵜呑みにするのではなく、他人と違っていてもいいから自分が思っている事を忌憚なく発言できる人間になって欲しいと伝えた。

最後に

 俺が高校を卒業して早4年、生徒を取り巻く状況も、学校の様子も少し変わってきたように思ったが、変わらないものも多々あり、そこに昔の自分を見つける事ができた。

 先日の昼休み、数人の男子生徒が、BUMP OF CHICKENの話をしていた。新しいアルバムが出るという話だったと思う。
 最近は全然聴かなくなってしまったが、俺も彼らと同じ頃、そのバンドが大好きだったし、毎日のように聴いていた。
 そんな彼らを見ていると、むかしの自分を見ているようで本当に懐かしく、微笑ましく思えた。俺が通ってきた道を彼らも確実に歩んでいるのだと実感した。
 昔の俺と同じように、彼らは子供と大人の狭間でもがき、あがいている。
 いつまでも彼らの心を忘れずにいたいと感じた。

 長い人生のうちで、1年でもいいから高校教員をやってみたいなあ、と思った。

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