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おいしいコーヒーの真実

スターバックスの第1号店というだけあって、米シアトルにあるその店はずいぶん繁盛している。新人店長は目を輝かせながら自社の理念を語っている。
「まだ道半ば、未来は明るい。」

同じころ、その「スタバ」で飲まれているコーヒーの原産地では、ひどくやせ細った子供が、お腹をすかせて泣いている。この地域では人々が深刻な飢餓状態にある。

彼らが必要最低限を満たされた生活を送るには、生産したコーヒー豆に、現状(当時)の10倍の値がつかなければならないという。なにも車や家電を買うためではない。子供に栄養のある食事と安全な水を与え、最低限の教育を受けさせるためのそれである。

生産コストに関してはもっと過酷で、豆の取引価格に対して、コストがその1.5倍かかるという。つまり彼らが汗水垂らして働けば働くほど、赤字を膨らませていることになる。

コーヒー豆は、生産者から消費者の手元に届くまで6度もの取引がなされる。原料が安く買い叩かれると、生産者が苦しむばかりでなく、運送業者や中間業者も「節約」の対象となる。当然ながらそこにも生活者は多くいる。

生産者は自分の育てた豆が、欧米でいくらで売られているのか知らない。すべては市場の「フクザツな構造」と、人間の思惑によってこうなっている。

この映画が日本で公開されたのは2008年。16年経ったいま、日本では「フェアトレード」という言葉すら浸透していないように思われる。自分だって、people tree社のチョコレートを数回買ったぐらいで、いいことをした気分になっている。


それでも、やらない悪より、やる善だろうか。

善をなすなら、まずは真実を知るところからである。


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