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さびしい現代人の話

 天気のいい日、私はよく川辺のベンチで読書をする。平日なら人も少ないので、落ち着いて本が読めるお気に入りの場所だ…と同時にそこは鳩たちにとってもお気に入りの場所だ。

現代社会は様々なテクノロジーの進歩や生活様式の変化で、生活が便利にそして快適になってきた。
しかしその便利さと引き換えに、多くの人が孤独感を抱いているのは否定できない。

SNSが広まり、表面的な繋がりは増えたものの、リアルな人間関係が希薄になった。
それに加えて2020年からの例の感染症騒動(あえて騒動と書かせていただく…)の影響も現代社会の孤独を加速させたかもしれない。

話を戻そう。
この日も私はお気に入りのベンチで、あんパンとホットコーヒーを横に置き読書をしていた。
ふと気配に気づき顔を上げると…

…鳩たちに囲まれていた。私が持っているあんパンが目当てなのだろうという事はすぐにわかった。

この手の鳩がたくさんいる公園で「どうぞ、ご自由にエサをあげてください!」というのを私は見たことがない。辺りに『エサやり禁止!』の看板は見当たらないが、きっとここもそうだろう。

だがしかし、ここを管理されている方には大変申し訳ないのだが…
この鳩たちに自分が頼られている気がして、あんパンの切れ端をすこしやってみた。パンの欠片を突っつく鳩を見て、自分の『世話をしてやりたい!』という欲求は満たされたが、すぐに後悔した。

あっという間に辺り一面をたくさんの鳩が埋め尽くしパニック!
「はやくつぎをくれ」と鳩たちが催促する。

しばらくすると…
「もうコイツからはもらえないな」
と私は見限られ、鳩たちは去っていった。

あれだけ賑わっていたのが嘘のよう。

現代人はさびしい。
感染症が猛威を振るった時代は終わり、再び人と人が触れ合えるようになった。私もリアルな人間関係を再構築しなくては。

ふと対岸を見ると、鳩がたくさん集まっている。

どうやら向こう岸にも、繋がりを求めたエサやりおじさんがいるらしい。


※土曜日の21時ごろ更新予定です。

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