見出し画像

46.人口問題

今の日本は少子高齢化、人口減少、社会の変容等によって、地域の“繋がり”が希薄化して個人や世帯が抱える課題も多様化し、そして複雑化しています。

また、独居又は高齢者世帯が増加する中で、身近な住民による見守りや気にかけ合う関係性の構築が重要になっていますが、様々な場面で地域の担い手が不足しています。

これからこうした課題がますます深刻化することが懸念されています。
 
今年に入って総理大臣も“異次元の少子化対策”という…ぶっ飛んだスローガンを掲げて急に発信し始めました。

それもラストチャンスだなんて…ギリギリまでよく待ったものです。
 
このように日本では少子高齢化や出生率の減少が問題視されています。

こうした問題は大きくまとめて“人口問題”と呼ばれています。
 
人口問題とは、人口から生じる様々な社会問題を指します。

先進国での少子高齢化や出生率減少、開発途上国での人口増加による貧困問題や環境破壊などが人口問題として挙げられます。
 
日本を含めた先進国と呼ばれる国々で人口問題をテーマにすると人口減少がよく取り挙げられますが、世界を見てみると過剰な人口増加も大きな問題になっています。
 
開発途上国を含めた世界全体では人口は増加し続けています。
 
国際連合によると1950年を境に世界人口は増加し続けています。

国連人口基金(UNFPA)の“世界人口白書2023”によると、2023年の世界人口は80億4500万人で、2022年よりも7600万人増加しました。

世界人口が80億人を突破するのは初めてであり、これまで1位だった中国をインドが抜きました。

日本は1億2330万人で世界第12位です。

2022年は1億2560万人で世界第11位でしたが順位を落としました。

2050年時点で世界人口は約97億人にまで増加すると予測されています。
 
特に人口増加が激しい国は、新王者のインドとこれまで長年第1位に君臨していた中国が挙げられます。

中国は1950年時点で約5.3億人だった人口が2021年時点では約14億人になっていて70年間で3倍弱にも増加しています(現時点で14億2570万人)。

インドの場合は1950年時点で約3.5億人だった人口が2021年時点では約14億人になり、その後も猛烈な勢いで増加し、現時点で14億2860万人になっています。

このように、現時点でもこれら2国だけで世界人口の約36%を占めています。

また、アフリカのような地域でも人口増加の傾向は顕著に表れています。

1950年時点で約2億人だったアフリカ人口も、2021年時点では約13億人にまで増加しています。

中国やインドに比べて対象範囲が広いことを考慮しても、70年間で6倍以上もの人口増加をしているのは世界でも類を見ない状況です。
 
過剰な人口増加は問題を引き起こします。
 
人口増加を実現しているのはインドや中国、アフリカのような開発途上国であるという点です……(中国やインドの経済発展は目覚ましいですが、現段階では開発途上国として扱います)。
 
つまり、世界的に見ると、極僅かな地域で集中的に人口が増加しているということです。
 
人口が増加するとその分だけ食料や水といった資源、衛生環境に優れた住宅地、経済的に自立する為の職などが必要になります。

しかし、現実的には人口増加に見合うだけの要件を揃えることができていません。

特に開発途上国では貧しい家庭での出生率が高い傾向にあり、貧困に苦しむ人口が増加しているという問題を抱えています。
 
人口が増加すると生まれてきた人々に対応するだけのエネルギーや食糧が必要になります。

そして、これらを用意する為に環境破壊が発生します。
 
ここでいうエネルギーは、車や船が動く為の運動エネルギー、機械やIT機材に欠かせない電気エネルギーを指します。
 
エネルギーを生み出して消費する際には石油や石炭といった化石燃料が不可欠ですが、これらを使用すると二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが排出されてしまいます。
 
つまり、人口が増加すればそれだけエネルギー需要は増加し、その分だけ環境破壊が進行する恐れがあります。
 
また、食糧に関しても同様であり、人口増加とともに食糧需要は増加します。
 
需要を満たすだけの食糧を確保する為に、森林伐採や耕地が行われて温室効果ガスを吸収する森林も減少してしまいます。

その結果、森林の減少や温暖化の進行といった環境破壊に繋がっています。

人口増加に伴うエネルギー需要の増加によって、より多くの資源が必要になります。
 
しかし、これらの資源は有限であって、このまま人間が採取し続ければいつかは枯渇する恐れがあります。
 
世界の石油生産量は2010~2030年頃にピークを迎えて、それ以降は減少していくと予測されています。
 
また、天然ガスについても採掘可能なのは残り約50年程度と言われています。
 
このようにエネルギーを生み出す資源の枯渇が予測されている一方で、世界人口は増加してエネルギー需要も増加しています。
 
今後の技術革新による採掘量や燃費の向上を踏まえても、資源の枯渇は避けられない課題と言えます。

各国が抱える人口問題やその原因は様々です。
 
同じ人口増加という問題を抱えていたとしてもその原因や適切な解決策、対策は異なります。
 
現在の予測では少なくても、2050年までは世界人口は増加し続けるとされています。
 
そこで課題になるのは、人間が生きていく為に不可欠なタンパク質の確保です。
 
しかし、肉を大量に用意しようとすると、畜産に使用する広大な面積の牧場と動物を健康に育てる為の餌が必要になります。
 
また、大量の餌を準備する為の広大な面積の農場と水も欠かせません。
 
しかし、利用できる地球の面積は限られていて、牧場や農場を増やす為に森林を伐採するのは環境破壊に繋がってしまいます。
 
そこで、人口増加への対策として注目されているのが植物肉や培養肉といったフードテックによる人工肉です。

これらは新たな技術革新によって実現された食品であり、各種人口問題に対する対策として世界的に注目されています。

人口増加に伴うエネルギー需要増への対策として風力発電や電気自動車といった自然の力を利用してエネルギーを生み出す技術…グリーンテクノロジーが注目されています。
 
グリーンテクノロジーでは燃料として自然の力を利用するので、石炭や石油といった枯渇資源への依存から脱却できると期待されています。

一方でこうしたグリーンテクノロジーの活用にはレアアースやレアメタルといった希少資源の活用が欠かせません。

そして、これらの希少資源は石炭や石油といった化石燃料と同じく有限の資源です。
 
その為、グリーンテクノロジーは資源枯渇に対する解決策にはならないとの指摘もあります。

人口増加に伴う資源の枯渇問題には、今後も技術革新や各国の適切な政策、規制などが必要になると考えられます。
 
現代はインターネットによって世界中の人たちと簡単に繋がることができる時代です。
 
しかし一方で、目の前の社会との繋がりが希薄になり、地域社会や職場、家庭内でも居場所がなく孤立する人が増えています。
 
そこにきて、2020年から続いたコロナ禍の自粛生活によって更に社会の分断が進みました。
 
このことに危機感を覚え、コロナ以前からも言われていた地域共生社会などの社会的な繋がりを創出する新たな支援システムを早急に開発する必要があると考えられています。
 
それはSDGsの基本理念である“誰一人取り残さない社会の構築にも繋がります。
 
日本では主に人口減少によって様々な社会問題を引き起こしています。

人口減少は言い換えると、新しい世代が生まれてこない…ということです。
 
これを日本社会全体で見ると、相対的に高齢者の割合が増加していくことになります。

すると、高齢者を支える為の社会保障制度を維持する負担が上昇していきます。
 
日本では定年を迎えて会社を引退した高齢者の生活を維持する為に、様々な制度が導入されています。

例えば、年金制度や後期高齢者医療制度などが挙げられます。

制度の財源を確保する為に各種税金が設けられていて、高齢者の割合が増えるほどに現役世代への税金負担も大きくなります。
 
また、新しい世代が生まれてこないことで、次世代の生産人口が減少していくことになります。
 
生産人口は、国内で生産活動を行っている人口を指し、経済協力開発機構(OECD)によると15~64歳の人口と定義づけられています。
 
生産人口が多いということは、労働者と消費者が多いことを意味します。
 
このように生産人口は、その国の経済を活性化させる上でとても重要な役割を担っています。

日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少傾向にあります。

更に、2050年の生産人口は2021年と比較して約30%減少すると見込まれています。
 
ただ単に人口が少なくなっていることだけが原因ではなく、優秀な人材が海外に流出していることも大きな原因です。
 
生産人口が減少することで、労働者と消費者の不足が発生して国内経済が縮小することが懸念されています。
 
第2次ベビーブームと呼ばれた1973年の出生数が約210万人だったのに対して2022年の出生数は約77万人です。
 
当然ながら、生まれてくる子どもの数が減少すればその世代においても、将来、親になる人たちも減少していきます。
 
その為、どこかのタイミングで出生数が回復しない限りは今後も少子化は加速していくと予測されています。

2030年に出生数は77万人になると予測されていたのですが、あまりにも早く…2022年にその数に到達してしまいました。
 
このように人口減少は日本に様々な問題を引き起こします。

ではなぜ、こうした人口減少が起こっているのでしょうか…。
 
日本の人口は1960~1970年前半までは増加傾向にありました。

自然な流れで行くと、そのまま現代まで人口が増加しなければおかしいはずです。
 
しかし実際は1975年頃から人口や出生率が減少し始めました。
 
原因としては、ライフスタイルの多様化があります。
 
これまでの日本人のライフスタイルは、男性や女性、年齢による役割が存在していました。
 
例えば“男性は外で働くべき”、“女性は結婚したら家の仕事をするべき”や“早く結婚して子どもを作るべき”といった考え方などです。
 
その為、男女ともに学校を卒業したら就職して、ある程度の年齢になれば結婚しました。
 
女性はそのタイミングで退社して家に入り、子を産む準備や子育て、家事に集中するというのが昔は一般的でした。
 
そして、働けばそれなりの給料上昇がありました。
 
しかし、時代とともにこの考え方に変化が起きて、少しずつ女性の社会進出が促進されたり、娯楽や求められるスキル、働き方も多様化したりなど…多くの人が主体的に生き方を選択するようになりました。
 
このようなライフスタイルの多様化によって、男女ともに結婚や妊娠を望まない人たちが増えたことが人口減少に繋がっていると考えられています。
 
あとは、就職氷河期世代を中心に社会に失望というか…希望を持てていない世代が大勢いるのも事実です。
 
今後、人口減少が続いていくと生産人口も減少していくので、多くの産業分野でAI化や機械化が進み、業務の効率化が進むと考えられています。

具体的には製造業や販売業…、その他の単純作業による業務は、AIや機械に代替されていきます。
 
これらを駆使しても労働力が足りないことは明白で、外国人労働者の導入や高齢者の社会進出によって労働力を賄っていく必要があります。

今後は人とロボットが協力して働く方法や人種や年齢を問わずに働きやすい環境の整備が求められています。
 
日本全体で人口問題への解決策が模索されている中で、地方は より顕著に人口減少による影響を受けると考えられています。
 
地方では若者が大学進学や就職を機に、都会へ進出するケースも少なくありません。
 
これが続けば、地方における若年層や生産人口が輪をかけて減少してしまい、経済力の低下を引き起こします。

更に、地方の状況に危機感を抱く若者が、都心部へ流出するという悪循環も発生しています。
 
長期的にこの傾向が続くと、人が全くいない地域も出てくると予測されます。
 
高齢者が増加していくと、病院や老人ホームといった医療や福祉施設を利用する人が増えていきます。
 
しかし、生産人口が減少しているので、増加する利用者に対応できるだけの医師や看護師、介護士の人材を確保できなくなります。
 
こうした状況になるとますます、現場で働く人への負担も大きくなります。
 
また、一般的な病院で高齢者が増えていくと、その分、若年層への対応が行き渡らなくなるかもしれません。
 
生産人口減少による税収の低下と高齢者が増加していく中で社会保障制度を維持する為の財源確保は、日本における課題の大きな1つのです。
 
生産人口減少は私たちが普段利用している行財政サービスにも影響を及ぼします。
 
働き手が減少すれば経済力が低下し、その分、各自治体の税収も悪化して行政サービスの質が低下すると考えられます。
 
具体的には、財政悪化を理由に社会保障制度を廃止したり、人手不足が原因で水道や橋といったインフラ設備の老朽化対策が行われない…などの問題が発生することが見込まれます。

このように、日本の人口問題は様々な分野に影響を及ぼします。
 
また、現在の日本の出生率は減り続けているので、何か具体的な対策を取らなければ今後一層これらの影響が大きくなります。
 
厚生労働省の“令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-”によると、女性は出産や結婚を機に30代前後で就業率が減少する傾向にあり、人口問題への対策としてこれを解消していく必要がある…としています。
 
また、60歳以上の高齢者に関しても、今後の高齢社会を考慮すると就業率を上昇させなければならないと記されています。
 
具体的には、2040年時点で30歳~34歳女性の就業率77.8%から北欧諸国並みの就業率81.5~82.2%へ、また35歳~39歳女性の就業率76.0%も同じく北欧基準の83.4~85.6%程度まで引き上げる目標を掲げています。
 
高齢者についても、2040年時点で男女合わせて60歳代前半の就業率を80%、60代後半の就業率は60%強を実現する為に取り組んでいくと記しています。
 
人口減少による働き手不足への対応を行うとともに、少子化への対応も極めて重要であると指摘しています。
 
一般的に、少子化の原因として日本人の未婚化や晩婚化の影響が大きいと言われています。
 
そして、若い世代の結婚や出産、子育てが行えないのは、先述したライフスタイルの多様化に加えて、経済的な不安定さや子育てや教育にかかる費用負担の重さなどが挙げられます。
 
その為、若い世代が将来に展望を持てるように、雇用環境の整備や子育て支援に関する制度の充実などを目標に掲げています。
 
日本では人口減少が問題視されていて、これは多くの先進国でも同様の課題を抱えています。
 
しかし、人口問題は日本を含めた先進国だけの問題ではありません。

SDGsは、将来にわたって住み続けられる地球にすることを目指して、2015年に国連で採択された国際的な目標です。

持続可能な地球にする為には、解決しなければならない課題が山積みです。
 
そこでSDGsでは、今地球が抱えている課題の解決を目指し、17の目標と169のターゲットが掲げられました。
 
人口問題は、17ある目標のほとんどと関係する問題です。
 
その中でも特に密接な関わりを持つのが、目標11の“住み続けられるまちづくりを”です。

目標11は先進国も途上国も関係なく、みんなが住み続けられるまちづくりを進めることを目指しています。
 
ここまで見てきたように、人口問題によって 先進国であれば人口減少による過疎化など、途上国であれば人口増加による貧困の加速や環境破壊などの影響を受けることになります。
 
住み続けられる“まち”にする為に、これらの課題解決は避けては通れないものであるので状況に合わせた技術開発や適切な政策を進める必要があります。
 
少子高齢化や人口減少は止まらないとして、日本はどういう形でこれから存続するのかを根本から見つめ直して考えていかないといけないのかもしれません。
 
これからどんなに日本の人口が減ったとしても、イギリスなどのヨーロッパの大国のような数です。

今のままを維持することが難しいというか…もう不可能なだけであって、考えようによってはまだまだ方法があるのではないでしょうか。
 
これまでの制度とか考え方で乗り切ろうとするから無理があるだけなのかもしれません。
 
日本は長寿大国です。
 
科学や医療の目覚ましい発展によって、日本は世界でもトップクラスの長寿国になり多くの高齢者が生活をしています。
 
その一方で、生まれる子どもの数は年々減少していて、現代の日本は“少子化”と“超高齢化”が同時進行で進んでいます。
 
“少子高齢社会”です。

今のお年寄りたちは、戦後復興の時代を過ごしてきた人たちです。

高度成長期を経て、激動する様々な時代を生き抜いてきました。
 
先進諸国に追いつけ追いこせでやってきたその記憶は、今でも世の中全体の意識にも反映されているように思います。
 
つまり、日本はまだ若い伸びしろのある国だという意識が今でもどこかに残っているのかもしれません。

1980年代の日本は人口全体に占める65歳以上の高齢者の割合、つまり高齢化率が先進諸国の中では低い方でした。
 
しかし、1994年には高齢化率が14%を超えて、国連の定義でいう“高齢社会”になりました。
 
その割合はどんどん上昇して2007年にはついに21%を突破しました。
 
先ほどの定義に当てはめれば、それは“超高齢社会”ということになります。
 
高齢“化”社会という言い方が未だに使われていますが、実は日本は既に世界最強の超高齢社会そのものになっています。
 
しかも、これからも少子化が進行すれば、高齢者の数は頭打ちになったとしても日本全体の人口も減り続けますから、高齢化率はますます上昇していきます。
 
現在の若者が高齢者になる2065年頃には、高齢化率は40%近くに達するのではないかと推計されています。
 
先進諸国の同じ頃の高齢化率の平均は30%弱の予測ですから、日本の高さが際立ちます。
 
日本という国自体が若かった1960年代の高齢化率はまだ6%前後でした。
 
1人の高齢者を多くの現役世代で支える“胴上げ”のような状態です。
 
それが今では、2.3人で1人を支える“騎馬戦”の状態で、現役世代の負担が大きくなってきていることがわかります。

高齢化率40%に迫る2065年には、1.3人で1人を支える構図です。

ほとんど“肩車”のような状態です。
 
この重い負担に社会は耐えられるのか…ということです。
 
誰もが大いに不安を感じて当然ですし、不安に思って真剣に考えないと政治家も含めて誰も助けてくれません。
 
まさに、“国難”です。

現役世代が高齢者を支えるこれまで同様の仕組のままでは、もう社会全体が成り立たないところまできています。
 
介護保険制度は2000年から始められましたが、そこには共同連帯の理念が反映されています。

介護に要する費用を高齢者自らも負担する仕組があらかじめ用意されています。
 
特に、人生百年とも言われるこれからの時代では現役から退いた後も、人は何十年という長い時間を生きることになります。
 
高齢者も支えられるだけでなく、誰かを支えていく存在にならなければ社会の活力が失われてしまいます。

だからこそ、高齢者にも社会参加を求める必要が出てきます。
 
実は、今から半世紀以上も前に作られた老人福祉法でも、健康に留意して、できるだけ社会参加をすることが既に促されています。
 
そうは言っても、まだ意識が全体に低いと思います。
 
地域社会の活動に参加している人の割合は、1980年代後半には4割ほどでしたが、現在では6割程度に高まってきてはいます。
 
高齢者の意識も少しずつ変わってきている…と言えるのかもしれません。
 
こうした社会参加を促す取組は、団塊の世代の全員が75歳以上になる2025年を目指して進められている地域包括ケアシステムにも反映されようとしています。
 
このシステムにおける高齢者は、元々、生活支援、介護予防といったサービスの提供を受ける“支えられる”存在でした。
 
しかし近年は、健康な高齢者には、サービスを提供する側…つまり“支え手”として社会参加してもらおうという考え方が出てきています。
 
高齢者に生きがいや活躍の場を提供することで、社会保障の持続可能性を探ろうとする取組です。
 
とはいえ、元気な高齢者が増える中で、地域社会の活動に参加する高齢者も増えてはいるものの、その内容は、趣味の域を出ない活動がほとんどという現状でもあります。
 
“元気な高齢者は支え手に”…というメッセージをもっと呼びかけていくとともに、ケアシステムを更に推進してより広い世代や領域に対応できるような仕組を作っていくことも欠かせません。
 
そして、そういった取組を深化させる構想が“地域共生社会”です。
 
長く生きていれば、誰もが高齢者になります。
 
一方、こうした高齢者自身に向けた将来の方策を考えながら、当事者としての身近な課題にも関心を持ちたいところです。
 
高齢者だけで暮らすのではなく家族と一緒に暮らしている高齢者は約4割程度となっていて、意外に多いと思われるかもしれませんが、同居しているその家族の3分の2は単身者です。
 
高齢で病弱な親を同居する中高年の子が1人でケアする状況に支援策を講じることが急がれます。
 
定年後、仕事一筋だった男性が退職後に行き場を失う…ということも多々あります。
 
もっと先まで見ると、平均寿命の長い女性の方が老後に独りで暮らす期間が長い場合が多いことも考えられます。
 
男女を問わず、生涯を独身のままで過ごす人も多くなっています。

今、それを選択している現役世代も、いつかは高齢者になります。

つまり、独り暮らしの社会のあり方を見据えることも大切になります。
 
超高齢社会において、地域共生が不可欠なのであれば、すべての世代がその構成員になります。
 
高齢者になってから初めて“支え合い”を意識するのではなく、早いうちから地域参加の意識を持っていれば、より自然な形で地域社会に溶け込んでいけるはずです。
 
例えば、お隣のお年寄りのゴミ出しや雪かきなどを手伝ったりするのも良いかもしれません。

そんなちょっとしたことが、地域参加の第一歩になると思います。
 
地域共生社会の実現と同時に、時代の変容に柔軟に対応できる制度などの構築、インフラの縮小や整備など……、発展ではなく未来も見据えて“できることを適格にやる…継続する”ことが大事なことなのかなと思います。
 
“居場所”と“繋がり”、まずはそこから始まる福祉です。


写真はいつの日か…札幌市手稲区の前田森林公園で撮影したものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?