見出し画像

小学生編2 コーラ味の練り消し

※この話はフィクションであってほしい

その日、僕のウォールマリアは突破された

 小学校4年生の時だった。その日、僕はなぜかうんこを限界まで我慢していた。僕は今でもうんこを限界まで我慢する癖がある。便意を感じてから、お尻の谷が汗でびっしょりになるまでトイレに行かない。なぜか、理由はいくつかあるが、メインの理由としては、トイレに行くのが面倒くさいから、他の理由としては、限界まで我慢したほうがうんこをした時の快感が大きいからだ。だからこの日もいつも通りうんこを我慢していた。しかし、この日の肛門の踏ん張りゲージはいつもより一周分少なかった。僕のウォールマリア(肛門)は唐突に突破された。慌てて肛門を締めなおすも遅く、弾丸のように少量のうんこが世界に放たれた、はずだった。

まるで無かったかのように

 周囲を見回すと、漏れ出たうんこが見当たらない。少し足を上げたズボンを揺らしてみるも、僕の周りには何も落ちてはいなかった。感触に伴わない結果に僕は不思議に思っていたが、そんなことよりも隣に住んでいる、年上の幼馴染であるユキちゃんと遊ぶことが楽しみすぎて頭の中からは直ぐに消えていった。僕は走ってユキちゃんの家に向かう。アスファルトを駆ける。風の後ろ側に残り香を置き去りにして。

幼馴染の家に合ったコーラ味のねりけし

 ユキちゃんの家は自営業をやっており、自宅は店舗を兼ねていたため、かなり広かった。その中でユキちゃんと鬼ごっこやかくれんぼをやるのがいつもの遊び方だった。
 その日も僕はユキちゃんとかくれんぼを行っていた。普段は家の中に隠れるのだが、この日の僕は一味違った。2階のベランダという、今まで思いも付かなかったエリアの存在に気付いてしまったのだ。室内のカーテンを広げることで、僕が外にいることを完璧に隠すことができる。全てが完ぺきだった。
 しばらく隠れていると、ふと足元に練り消しが落ちていることに気が付いた。指でつまんで持ち上げてみる。多少の硬さはあるが弾力を感じる。色はこい茶色である。僕は気づいた。これはコーラのフレイバーを付けた練り消しだ。当時僕の学校では空前の匂い付き練り消しが流行っていた。コーラやラベンダー、オレンジなど匂いに特徴のあるフレイバーが付与されており、授業中に先生にばれないように匂いを嗅ぐのが僕の学校での最先端だった。
 僕もコーラ風味の練り消しは持っていたので気づくことができた。何も知らない人であれば、これはうんこと勘違いするだろう。そこで部屋の中から、カーテンをめくって僕を見つけるユキちゃんの姿が目に入った。
「へたれびと見つけた!あ、それコーラ味の練り消しだよ!嗅いでみて!」
 そういって僕に練り消しの匂いをかがせようとする。正直僕も持っていたので匂いも知っていたのだが、新しいコーラの風味が出ているのか、と思い匂いを嗅ぐことにした。普通にうんこだった。そう、僕が漏らしたうんこが時間差でパンツの中からズボンの中を滑り、外に逃げ出していたのだ。

全力で窓の外に投げた

 僕はうんこのフレイバーを纏ううんこをベランダから外に思いっきり投げ捨てた。ユキちゃんは
「あー!!何てことするの!!」
と僕に怒ってきたが、それどころではなかった。幼馴染の女の子に、自分の排泄物を触らせ、匂いを嗅がせるわけにはいかなかった。それに、どう考えてもベランダにうんこが落ちているはずがなく、うんこだとバレたらそのまま僕が漏らしたうんこということがバレてしまう。明日からの学校のあだ名はうんこマンで決定だ。
「あの練り消しは腐ってた!変なにおいがした!」
 その1点張りで僕はその場をしのいだ。
 それからユキちゃんは一足先に中学生になった。通学の時間も変わり、部活動を始めたユキちゃんと僕は、会うタイミングも無くなっていった。ある時に近所の道端で見かけた。部活の先輩と談笑するユキちゃんは知らない大人の女性に見えた。きっと、もう練り消しなんて持っていなかった。
 今ではユキちゃんはキャビンアテンダントとして世界中を案内している。あの日、宙を舞ったうんこのはるか上空を、今日も飛行機が飛んでいる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?