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映画

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映画コラム 某ブログでも書いています。
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記事一覧

映画『異人たち』は現時点で今年ベストの傑作だったが主人公二人の親密になるシーンがあまりにも切なくあまりにリアルでいまだに忘れられない。アンドリュースコットがこんな事は久しぶりだからと息継ぎがうまくいかず呼吸が乱れる箇所。あのシーンだけでもう奇跡のような映画だったと思う

日記: 日々と娘と映画と

桜がヒラヒラと散る様をみたら、2000年代の岩井俊二映画を思い出した。 松たか子主演で北海道から上京した大学生一年生の瑞々しい姿を捉えた『四月物語』。制服似合ってないね、などといいながら桜並木を駆けながら高校に進学する2人の可笑しくも美しい映画『花とアリス』。どちらも何度観たか数えきれない程に偏愛している作品である。 昨日、初めて生後5ヶ月になった娘を連れて地域の子育て支援センターという場所に行ってみた。 当たり前のことだけれど人間は行動あるのみなのだなと、些細なことな

【悪夢の島で最悪なヴァカンスが始まる】映画『インフィニティ・プール』感想

これぞまさに『The 悪趣味映画』清々しいまでの悪趣味映画だった! 監督は本作が長編3作目となるブランドン・クローネンバーグ。 これまでもセレブの掛かったウィルスをマニアに売りつける『アンチヴァイラル』や、人の意識を乗っ取って暗殺をさせる『ポゼッサー』などアブノーマルなテクノロジーを題材にした映画を撮っている監督だ。 父親は『スキャナーズ』、『クラッシュ』など数々の傑作で知られるデヴィッド・クローネンバーグ。 父親は"鬼才"、"変態"という通り名で呼ばれているが息子のブラ

2024/03/30の日記:Remember Mr. Lawrence オッペンハイマーにおける役者トム・コンティの位置付け

オッペンハイマーを観てきた。映画全体の感想は多くの人が、より鋭敏な人が物語や演出の構造における気付き、感嘆を現してくれるだろうから、自分の視点で最も驚き印象に残った一点について書く。 スタッフロールでトム・コンティの名前を見つけたとき、声を上げてしまった。アルベルト・アインシュタイン役が彼であったのだ。 トム・コンティ。 大島渚監督「戦場のメリークリスマス/Merry Cristmas Mr. Lawrence」でジョン・ローレンスを演じた役者であるが、 その柔和で温か

『ゴジラ-1.0』

外から見たゴジラ 真っ暗な映画館内に重低音が響く。耳障りな、しかし聞き慣れたリズムだ。IMAXの巨大スクリーン内では、小洒落た街並みを覆い尽くすように、鋭利な岩を体中に生やした壁がまっすぐに立ち上がる。壁の片方にある長い尾は地面を裂くようにゆっくりと揺れ、もう片方にある二つの目はこの世の憎しみを閉じ込めたかのように燦々と光っている。街を破壊して歩くカイジュウの全貌をとらえたヒロインがその名前を呼ぶ。映画に詳しくない人も必ず知っている名前。「Godzilla」という一言に、場

【復讐の果てにある世界】映画『ペナルティーループ』感想

恋人を殺された青年は同じ時を繰り返しその度に犯人を殺す。 3月22日から公開されている映画『ペナルティループ』。 復讐とタイムリープを題材にしたSF映画だ。 監督は『人数の町』の荒木伸二。主演は『街の上』での若葉竜也、共演に伊勢谷友介、山下リオ、ジン・デヨン。 ここ最近「タイムループ」を題材にした映画を見かけることが多くなった。 2019年に公開された『ハッピー・デス・デイ』。2022年公開の『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』、去年公開

2024/03/24の日記 : 映画版「薔薇の名前」とダークソウル3、読みと深読みとフロム脳

 毎度のことながら傾倒しております、年間読書人氏のレビュー記事で知った「エーコの読みと深読み」を買って読み終えていたので、1986年の映画「薔薇の名前」を観た。 「エーコの読みと深読み」は、学者であり作家ウンベルト・エーコが代表作「薔薇の名前」「フーコーの振り子」の反響を経て、読み手の想像以上の解釈の広がり、作者の意図を遥かに超えたその飛躍に触れるにあたり、適切な範疇の読解"読み"と夢想妄念の類"深読み"の線引はどこにあるのか、ということを論じた講義を本にしたもの。それに加え

【感想ではなく記録のための雑文】2月に観た映画6作品(2024/2/1~2024/2/29)

昨年からはじめた視聴した映画の記録です。 本を読むのは実はあまり得意ではないので、映画を観ようという流れです。 アマゾンプライムは月600円。月6本観たら元を取った気分になれます。アニメの方は、銀河英雄伝説以降これは!と思うものに出会えずフラフラと色々なものを眺めています。今放映されているものは一話ずつ増えていくのをじっと耐えながら観てますが、一気見できる作品が欲しい。 例によってアウトプットする準備は一切なく書いています。観てない人から見れば(観た人もかも)意味不明かもしれ

【圧巻!これぞ本当の異世界体験】映画『デューン 砂の惑星 PART2』感想

3月15日から公開予定の『デューン 砂の惑星 PART2』。 デューンと呼ばれる砂漠の惑星を舞台にしたSFアドベンチャーで、2021年に公開された『DUNE デューン 砂の惑星』の続編にあたる作品だ。 3月8日から3日間、全国のIMAX、Dolby Cinemaの劇場で先行上映をしていたので自分も観に行ってきました。鑑賞したのはミッドランドスクエアシネマの3月8日の19時30分からの回。客入りは7割ほど、性別、年齢はさまざまという印象。 前作の『DUNE デューン 砂の惑

【観たらあなたも虜になる!】映画『赤い糸 輪廻のひみつ』感想

昨年の12月22日から公開されている『赤い糸 輪廻のひみつ』。 現代の台湾を舞台に、死んでしまった主人公が再び人間に転生するために、縁結びの神様「月老(ユエラオ)」になって奮闘するファンタジーだ。 この作品、観た人の感想が熱い。 年末くらいからSNSで本作の感想が流れてきたのだが、「多くの人に観て欲しい」、「本当に面白い!」などみんなのハマり具合がとにかく熱い。 経験上こういう感想が熱い作品は面白いことが多い。そしてその予感は間違ってなかった。 ちなみに鑑賞したのは愛知

強烈なビジュアルと世界観でカルト映画として愛される『ファンタスティック・プラネット』がYoutubeで3月8日より2週間限定で無料公開中! ゲームの「ピクミン」の参考元の1つとしても知られる本作、この機会を見逃すな! (URL) https://www.youtube.com/watch?v=Vgvl3Ym6zXU

東京大空襲の悲劇、生存者の最後の言葉を語り継ぐ/映画『ペーパーシティ 東京大空襲の記憶』

東京大空襲の悲劇、生存者の最後の言葉を語り継ぐ/映画『ペーパーシティ 東京大空襲の記憶』予告編-Adrian Francis 2:09min 2023 その悲劇は紙や木で作られた街を襲った──十万人を超える犠牲者を出した東京大空襲の生存者の最後の言葉をオーストラリア人のドキュメンタリー映画監督がいま語り継ぐ『ペーパーシティ 東京大空襲の記憶』 1945年3月10日午前0時過ぎ 1945年3月10日午前0時過ぎ、アメリカ軍の爆撃機が東京を襲撃し、木造の家屋や多くの紙材

【徹底解説】 映画『PERFECT DAYS』

いよいよもうすぐ米国アカデミー賞。 日本勢からも3作品がノミネートされています。 長編アニメーション賞の「君たちはどう生きるか」、視覚効果賞の「ゴジラ -1.0」、そして国際長編映画賞の『PERFECT DAYS』。 個人的にも昨年のベスト映画だったので、とても期待したいところです。 とはいえ他2作品が有力候補なのに比べて激戦区なのでどうなるか。 そんな期待も込めてより本作を楽しめるように色々調べたことをnoteにまとめておきたいと思います。 『PERFECT DAYS

【あなたは何を信じるか?】映画『落下の解剖学』感想

人里離れた雪山の山荘で起きた事件 不自然な男性の落下死。疑われる妻、盲目の息子。果たして男性は事故死か、殺人か、自殺か? 2月23日から公開されている『落下の解剖学』。 フランスの山荘で起きた事件を巡るヒューマンサスペンスだ。 監督は『ソルフェリーノの戦い』、『愛欲のセラピー』のジュスティーヌ・トリエ。主演は『さようなら、トニー・エルドマン』のサンドラ・ヒュラー。 第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でパルムドールを受賞をはじめ多数の映画賞受賞ということで公開前