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参加サークル:星屑書房

文学イベント東京 参加サークル 「星屑書房」の紹介ページです。

星屑書房は、福岡を中心に活動する文化系サークル。メンバーには、福岡市「市民文芸」小説部門(短編)大賞、福岡市「市民文芸」小説部門(超短編)西日本新聞社賞を同年に受賞された方もいらっしゃいます。


■ 「『暁烏』2号」

星屑書房のメンバー11名が小説・詩・短歌・イラスト・エッセイの作品を投稿した文芸誌。巻頭特集では、5人の作家が「2にまつわるストーリー」というテーマで小説を書いています。


■ 「ライク・ア・メリーゴーラウンド」

著者:一路真実
年上の女性に恋をした高校生のラブストーリー「ライク・ア・メリーゴーラウンド」など小説2編、エッセイ5編の全7作品収録。

 
 あの人に出会ったのは、小雨の降る葬儀場だった。
 前を歩く父親の傘越しに、弔問客に頭を下げ続ける彼女がちらちらと見え隠れしていた。彼女は父の従妹だということは聞いていたけれど、父とは随分と歳が離れているように見えた。
「ご愁傷様。園子も大変だったな。こいつは俺の息子の圭吾。高校に入ったばっかり」
 父に促されて僕が軽く会釈をすると、彼女は丁寧にこちらを向いて頭を下げた。彼女の大きな瞳を見て、ああ、泣いていないんだなと僕は確認した。憔悴した表情では あったけれど、澄んだ目には泣いた跡すら残っていない。

 梅雨の半ばの喪服は暑く、園子さんの首筋もじっとりと汗ばみ、まとめ髪の後れ毛は肌に張り付いている。それに気づくと、僕の頭は彼女の白い肌のことでいっぱいになってしまった。
 それからおよそ五十日の間、僕は次に彼女と会うことだけを楽しみにして過ごした。この期間、一時も園子さ んのことを忘れたことはなかった。
 授業中だってそうだ。
 あの日の彼女の姿を考えていたら、手元が狂って消しゴムを落としてしまった。拾おうと手を伸ばすと、隣の席の相島の手がさっと出てきて、思わず触れる。机と机の間の狭い通路で顔を寄せ合うと、相島は消しゴムを僕に渡して微笑んだ。
 相島の笑顔はかわいい。ずっとそう思ってきた。
 僕と相島は小学生の頃から一緒だ。もっともその頃の 相島はと言えば、背が高くて運動神経が良く、ポニーテー ルを揺らして駆け回るおてんばな少女だった。それなのに中学校でバスケ部に入ると、男子生徒から一気にマド ンナのように扱われ始めた。正直に言うと、当たり前のように近くにいた相島が遠くに行ってしまったように思 えたものだ。

<続く>

「『暁烏』2号」「ライク・ア・メリーゴーラウンド」は、文学イベント東京 販売予定作品


参加希望者(WEB作家さん・イラスト描きさん・漫画家さん)は以下でチケットを購入ください。


遊びに来たい方、作家の作品を買いたい方はこちら。



よろしければ、作品の自費出版の費用にさせていただきます。