ドラゴン目黒仮

4:趣味

これまでのDragon Eye

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少女はあっという間に家に到着した。村に行くまでの重い足が自分でも信じられないほどに帰りは足が軽かった。

「人って不思議……気分一つでこんなにも変わっちゃうのよね……ふふ」

少女は自分のことを少し離れたところから観察し、その変化が面白くてついつい笑ってしまう。そんな少女を今沈もうとしている太陽が優しく照らしていた。夕日が少女を赤く染める。少女が家の中へと入っていった。

「ただいま!」

誰もいない家の中に少女の声がまた響く。

手に持っていた荷物を机の上に置く。思っていた以上の量を購入(貰う)してしまったので村から家までとなるとなかなかの重量だった。かごに収まりきらずにもらった袋に目が行く。

「ふふ……」

少女がまた笑う。

「重い分の思いが詰まっていたのね!」と言いながら笑う。

言葉遊びをしてしまうほどに少女はうれしかった。とても、うれしかったのだ。

少女はさっそく、買い出しで調達した食糧を使って夕食の調理を開始する。今夜は少し量を多めに作ることにした。そんな気分だったのだ。鶏肉を使ったステーキ。そしてトマトスープにサラダも作る。

鶏肉をフライパンに載せて火を通す。表面(皮)の部分をまずカラッと焼く。軽い焦げ目をつけるぐらいに焼いていく。焦げ目がついたら反対側にひっくり返す。そこで少し水を入れてフライパンに蓋を被せ、蒸すようにしてゆっくり焼いていく。

トマトスープは保存してあるトマトをすり潰したものを使い作っていく。鍋に水を入れて沸騰さスープの素(トマトをすり潰したもの)を入れ塩やコショウを使いながら味を調えていく。

サラダは売りに出さなかった形が悪い少し虫に食われているモノを使って作る。軽く水で洗い。食べやすいようにカットしてく。虫に食われた部分を見ながら少女が呟く。

「虫もおいしいからこっちの野菜を選んでるのね!」

少女は形が悪い野菜の方がおいしいと思っていた。それが正しいかどうかは分からなかったが、少女はそうだと信じていた。

あっという間に、鶏肉のステーキとトマトスープ、サラダが出来上がりお皿に盛りつけていく。少女は出来上がった夕食をテーブルへと運んでいく。運び終えると席に着き、祈りを捧げる。祈りと共に店の店主と奥さんを思い出す。

「ありがとう」と一言、感謝の言葉が漏れる。

「いただきます‼」

少女は今日の食事がいつもよりおいしく感じた。そのせいなのか、街まで出かけてお腹が空いていたのか分からないが食べる速度が上がっていた。

「ごちそうさまでした」

あっという間に食べ終わり。食器を台所に持っていきそのまま一つ一つ丁寧に洗っていく。洗い終えたら元の場所に戻していく。

少し早いが少女は就寝の準備に入る。顔を洗い、体を拭き、歯を磨く。そして寝間着に着替える。そのままベッドへ向かうと思いきや少女は別の何かの準備を始めた。

テーブルの上に今日買ったリンゴを一つ置いた。

それから少し大きめの箱と紙を取り出してそれとベットの上に置く。箱を開くとそのには色々な画材が入っていた。そこから鉛筆を取り出して紙を持ちさっそくテーブルの上に置かれたリンゴを描き始める。

これが少女の趣味。

少女は絵を描くことが好きだった。

シャ、シャ!部屋の中に紙の上を走る鉛筆の音が静かに響く。小さなころから絵を描くことが好きだった。几帳面な部分や手を動かして何かを作るのが好きな少女に絵を描くという行為はあまりにもピッタリだった。少女は紙に線を引くだけで楽しいと感じられた。才能だ。彼女には絵を描く才能があった。

そんな彼女の為に母が買ったもの、それがこの画材だった。

少女の宝物だ。

紙の上にリンゴが描かれていく。すごい集中力で一気にリンゴを描き上げていった。少女はあっという間に描き終えて、その絵をテーブルの上に置いてリンゴと見比べる。そっくりに描けていた。誰が見ても上手いというだろう。しかし、少女は納得いっていない感じだった。さっさと画材の片づけに入ってしまう。画材と描いた絵をテーブルに置いてベットへと向かう。

「明日は早いからもう寝ないとね……おやすみなさい」

就寝の言葉をつぶやく少女。

描かれたリンゴはどこか冷たさを感じる。

……そんな絵だった。

そして、少女は静かに眠りについた。

読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。