ノートに人生を書く
わたしは演技を学ぶための専門学校に通っていた。
大学の就活と同じように、デビューに向けて準備していくのだが、オーディション対策の授業があった。
卒業後、事務所に所属したいのか、劇団に入りたいのか、具体的にどうしたいのかわからなかった。
担任の先生と個人面談で素直に伝えたとき「5年後、10年後どうなりたいのかをノートに書いてみて」と言われた。
まったくピンとこなかった。
共演したい女優さん、俳優さん、立ってみたい劇場、出てみたい作品はいくつか思いついた。
でも、周りが求めていたような「有名になるためにこの事務所に入りたい!」「この劇団のお芝居が好きだから入りたい!」という答えは出せなかったし、そこまでの情熱や欲がなかった。
そのときのわたしはただ「どんな形でもいいから芝居を続けられたらいいな。それで食べていけたら最高だけど、時間がかかるだろうな」くらいにしか思わなかった。
結局、ノートは書けなかった。
卒業して5年。
わたしは今、芝居していない。
昨年まではフリーランスという身でバイトをしつつ、知り合いの劇団に声をかけてもらったり、オーディションを受けたり、たまにワークショップを受けたりして、細々と芝居を続けていた。
諦めた、というわけではないけど、少し疲れてしまった。目指していた世界と自分の気持ちのズレを感じて、続けることが苦しくなった。
誰かに強制されたわけじゃない。
"芝居を続けなきゃいけない"というプライドや、"芝居を続けている"という見られ方にこだわっていた。
何のためにやっているのかわからなくなった。
だから、わたしは今年に入って今までしていた活動をやめてみた。
オーディション、ワークショップ、知り合いの舞台観劇、宣伝のためのSNS、役者でいるためにしていたこと諸々。
甘い考えなのかもしれないけど、またやりたくなったらやればいい。そこまでの意欲が湧いたら挑戦すればいい。
心の中で「芝居を続けられたらいいな」という気持ちは残ってるから、それを大切に。
今のわたしにできること、やりたいこと、必要とされる場所を探して、楽しい何かに出会いたいな。
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