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とめどなく頬を伝う涙が神々しかった。

何度か整体指導を受けていただいている方から

活元運動を学んでみたいと声をかけていただいた。


整体指導を行った後に活元運動指導を行うことになった。


頭を空っぽ、ポカーンとさせてカラダを緩めると

カラダ自身が動きたいように勝手に動き出すのが活元運動。

いのちを営んでいる無意識運動の数少ない直接訓練法でもある。


活元運動指導の初日はたいてい大あくびが出せるようになることを目標にすることが多い。

ぼくが話しているときにあくびが出てきても抑えずに

そのまま出してくださいねと念押しした直後なのに

あくびが出そうになったら慌てて口を押えていた。

押さえたご本人も苦笑い。


その抑え込もうとしてしまう習慣、意識こそが

勝手にカラダが動き出すことを制止して

ぼくらは社会生活を送っている。


だから頭が空っぽになって「わたし」が退いていくと

カラダは再び分かりやすく動き出す。

とくに不調や緊張を抱えている在り方であれば

なおのことカラダはその不快を解消したいからね。


活元運動には3つの準備運動がある。

一番大切なのが、最初の邪気吐き。

大あくびを誘導してポカーンとなるための準備運動。


あくびが出たらすかさず口を押えていた方も

隣でぼくが並走して邪気吐きを行うことで

じょじょに大きなあくびが出るようになった。


気がつくと邪気吐き動作をせずに

連続してあくびが出だした。

繰り返し、繰り返し、ついには20回を越えて連続であくびが出てきた。


狭い指導室の中央で目を閉じて正座であくびを繰り返していた。

彼の目からは涙があふれ、大量の涙が頬を伝っていた。

あくびが出る時に顔が少し上向きになるために

部屋の蛍光灯で照らし出されている彼の姿は

不思議と神々しさを感じさせるものだった。


正座で屹立している姿はギリシャ彫刻のよう。

まるで映画のワンシーンのように美しかった。


まだ2つ目、3つ目の準備運動は教えていなかった。

しかも活元運動の止め方すら教えていなかった。


活元運動の学びではなるべく早い時期に

カラダが勝手に動き出す体験ができたほうがいい。

カラダと向き合うモチベーションに繋がるからね。


神々しくあくびを続けている彼は

もはや目の前にいるぼくのことも忘れて

「わたし」という自我意識が退いていた。


チャンス!と感じたぼくは

そのまま彼の後にまわり頭へ愉気をして活元運動のサポートを始めた。


思った通り、活元運動が姿を現してくれた。


40年以上、ずっと「わたし」がカラダを操縦していると思って生きていた。

活元運動のさなかも、ポカーンとしているんだけど

「わたし」が居なくなるわけじゃない。

意識が飛んじゃうこともない。

目を閉じたときに周囲を感じている在り方だって

それ以前となんら変わったことはない。

意識はそのまんまなの。

神秘体験でもなんでもなくて、ふつうです。


ただし、カラダは勝手に動き出している。

初めての体験だったそう。


運動を終えた彼から出てきた感想は

「抑圧してたんだなあ」だった。

「ベールが取れたみたいに世界が見えます。」

そんな感想を聞かせてくれた。


生まれてからずっと在ったもの。

これからも死を迎えるまでずっと一緒に在るもの。

それがカラダであり、活元運動であったりします。



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