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憧憬の地 ブルターニュ展覧会にてー

先月末、梅雨の足音を感じながらも、かねてより行きたかった
国立西洋美術館にて開催中の、
「憧憬の地ーブルターニュ展」に行ってきました。


ブルターニュ。。。。

ブルターニュ。。。。

当然行ったことありません‼️😆

上野公園では紫陽花が美しくほころびはじめていました。


ブルターニュといえば、フランス最果ての地。。。


Wikiより。


個人的なイメージでは、日本でいうとみちのく遠野。。。という感じでしょうか。(思い切り独断と偏見的な見方)

ケルト人の末裔が住んでいると伝えられ、独特の信仰を持ち、近代化から遅れ、死を日常的に感じ、あの世とこの世の境目を慈しみながら暮らしている。。。という印象です。



こちらは図録。

表紙はゴーガンとモネ。


絵でいうならば、
わたしの「ブルターニュ」のイメージはまさにこれ⬇️

「雨傘をさした飴売り女」 ポール・セリュジエ (図録より)。。。つげ義春のマンガに出てきそうな老女。。。


シャルル・コッテ 「聖ヨハネの祭火」から (図録より)


両方とも展覧会にきています。

やはりこう、どこか陰的な風土のような気がする。

古代の空気が残る土俗的で神秘的なイメージは多くの創作者を魅了しました。

図録の説明文によると、1839年にセーヌ河口とを結ぶ汽船が開通、
1863年にはパリからカンペールまで通じる路線が開通、
続く65年にはブレストへの路線が開通し、およそ17時間で行ける速さをえると、画家たちは独自の世界を切り拓くため、インスピレーションを得るためにブルターニュを目指したそうです。

彼らは各々のお気に入りの場所で絵筆を振いました。

今回、撮影OKの絵もたくさんあったので、ご紹介しますね☺️


ミュシャ 「砂丘のあざみ」


「岸壁のエリカの花」 コアフと呼ばれる女性の被り物をつけた、美しい作品。


ブルターニュのイメージは、当時のメディアにも取り入れられていたようです。


カロ 鉄道ポスター 「美しきブルターニュ カマレのタ・ド・ポワ」
ジュール・シェレ 「フランス海難遺族の為の慈善祭」ポスター
フィルマン・ブイセ ビスケット「リュ」のポスター
ミュシャのデザインしたビスケット缶パッケージ
こんなビスケット缶。。。宝物だよ。。。



ラウル・アンドレ・ウルマン 「かなしみの海」
マキシム・ラランヌ 「コンカルノーにて」
19世紀のブルターニュの地図や旅ガイド。
オーギュスト・フェアン・ペラン 「汽船を待つバ島の女たち」
アメデ・ベヌ 「トレメルクの村」
マキシム・ラランヌ 「エヌボンの眺め」



マクシミリアンヌ・ギュイヨン 「海の星」



エミール・オーギュスト・ウェリー 「ブルターニュ」(図録より)


今回の展示で一番美しいと思ったのがこちら⬇️

モネ 「ポール=ドモワの洞窟」

モネは人や遺跡には目もくれず、ベリールの海と断崖を描き続けました。

刻一刻と移り変わる洞窟の光の色や波を描写するために、天候に悩まされつつ、
ぬるぬるした岩の上で描き続け、10日の滞在予定が、2ヶ月半に延びたとのこと。

。。。延ばして正解ですよ。。。
見たことのない自然を自分の中に落とし込んで毎日観察しつつ紡いでゆくなら数ヶ月はかかると思います。。。

桜貝や卵色のような断崖の光と、青緑色の海の対比が素晴らしくて、見惚れてしまいました。


モネ 「嵐のベリール」



今回、ルドンの絵もみれました。

ルドン 「薔薇色の岩」(図録より)


ブルターニュ、訪れていたんですね。

ルドン。。。旅行苦手な超繊細すぎるHSP気質のイメージがあったので、意外でした。
新婚旅行含め、5度訪れているようです。


ルドンの雰囲気とブルターニュは、リンクするものを感じます。

この「薔薇色の岩」の絵、とてもよかったです。


リュシアン・シモン 「ブルターニュの祭り」


そして。。。


シャルル・コッテ 「悲嘆・海の犠牲者」

ものすごく大きなサイズで、海難事故の犠牲者の絵を描かれた、シャルル・コッテ。

冒頭でもシェアしましたが、この方の描くブルターニュの風景が

ザ、土俗的‼️

上記の宗教的なモチーフの他にも、皺が刻み込まれたお婆さんや、生活に疲れていそうな家族、不思議な儀式やらの作品を描いているんですが、

みちのく遠野を描いたらハマりまくるのでは。。。というくらい、一種の「泥くささ」を感じる作風で面白かったです。

中でも傑作だと思ったのが。。。⬇️

シャルル・コッテ 「夕べのミサ」(図録より)


。。。。ヨーダが。。。。。(゚o゚;;

夕方のミサに急ぐ寡婦を描いたもの。

今回展示されていたのは、作者が作成したレプリカ。
本物はフランスのプティ・パレ美術館にて「読誦ミサ」というタイトルで所蔵されているそうです。


「読誦ミサ」 ウィキメディアより。


この絵は強烈すぎて、離れがたく感じるほどでした。。。
物語やマンガの、印象的なコマに出てきそうで。。。

展覧会に行くと、はじめて出会う画家の絵に感動する時がよくあるのですが、
今回はシャルル・コッテにやられました。。。


リュシアン・シモン 「墓地のブルターニュの女たち」(図録より)


こちらは、第一次世界大戦で亡くなった兵士の遺族を描いたもの。
ブルターニュ地方でも、多くの男性が従軍したそうです。


モーリス・ドニ 「花飾りの船」


ドニは子供の頃からブルターニュと縁が深く、滞在し愛し続けました。

他の作家と違い、特異的な風俗や神秘的な風土を全面に押し出すのではなく、自分の描きたいモチーフや人生の節目で迎える心境を、土地や人々の風景の中になぞらえるかのように描き出したようです。

ずっとブルターニュに住んできたドニだからこそ、固定化されたイメージから解放された絵が描けたかもしれません。

ドニの絵はたくさん展示されていましたが、多くが画面が明るく、陽的なイメージを放っておりました。


そして。。。憧憬の地。。。といえばこの方、

ポール・ゴーガン。

ゴーガン 「ブルターニュの農婦たち」

そもそもは、安く泊まれるから。。。ということで極貧状態だったゴーガンはブルターニュに向かったそう。

非常にハマってしまったのか、その後も当地を幾度も訪れています。

ゴッホと共同生活する前、ゴッホとケンカ別れした後、タヒチ滞在後。。。と、

まるで人生に疲れきった時に、癒やされにでも行くかのように。。。😅

けれど、ゴーガンのブルターニュの絵、すごくよかったです。

ここで「描きたいものをみつけた」「自分が描くものを見つけた」かのような、煌めきや可能性がどの絵にも感じられて、いい絵ばかりでした。

ゴーガン 「海辺に立つブルターニュの少女たち」


ブルターニュは、ゴーガンにとって、アイデンティティを確認したりチューニングできる場所。。。
いわば、霊感が得れる、安心できる土地だったかもしれません。



明治期、日本人画家もブルターニュを目指しました。

小杉未醒 「ブルターニュの村の八月」


先駆けて目指したのは黒田清輝。

。。。すみません、めっちゃ失礼な言い方なのですが、

「とても才能ある画家なのに、アカデミーの発展を優先したせいなのか、いつも作品の詰めが甘い、絵に集中していない印象」

を黒田清輝の絵から、よく感じ取っていたのです。。。すみません。。。

けれど、うまいんですよ。。。

黒田清輝 「ブレハの少女」


貧しいお家の赤毛の少女を描いた作品。

まあ、うまいこと、うまいこと。
荒い筆致の上でバシッと決まっています。
この絵は荒いままでいいですね。
床と背景をもう少し塗ったら。。。という惜しさはあるのですが。。。
(スミマセン、上から目線で。。。)

スゴイところは、この色使ったのか〜、という当時の日本人は使わないような先駆的な色合いで攻めているんですよね。。。
この絵はとても目立ちました。


はじめて知ったのですが、大正期の山本鼎という画家の絵もよかったです。

山本鼎 「ブルトンヌ」(左) 「ブルトンの水浴」(右)お洒落。。。


今回海外から取り寄せた絵は4点のみ、あとはすべて国内所蔵の作品ということで、コロナ禍での収集作業だったのだろうし、大変だったろうな。。。と思う一方で、想像以上に楽しめた展覧会でした。

最近の展覧会は芸術家や時代を追うものの他に、イメージや象徴というテーマで作品を収集している印象を受けます。

ブルターニュという括りで、国内にこんなにも多くの作品があったとは‼️

ミュージアムグッズも、お洒落なものがたくさんでした。
貧乏なので図録買うので精一杯でしたが、ミュシャの缶欲しかったよー😭

展覧会は今月11日までです😊✨

ご興味がありましたら‼️

ここまでご観覧くださり、ありがとうございました‼️

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