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研修中と書かれたあの子に拍手を送るお姉さんに、私からも拍手を

月に1回、最寄り駅より少し離れた駅から電車に乗って病院へ向かう。
いつも使う電車より、こっちの方が乗換が無くて楽だ。自転車を30分ぐらい漕がなきゃいけないけど、自転車に乗るのは結構好きだから、そこまで苦ではない。

かれこれ3年近くのお付き合いになる病院に行くときの楽しみが、ドーナツ屋さんに寄って帰ること。

月1回の楽しみと病院という面倒と思ってしまうスケジュールを一緒にすることで、3年間ちゃんと病院に通えている気もする。

先日もいつも通り病院からの帰り道に駅にあるドーナツ屋に寄った。
ドーナツ屋というより、ミスドといった方がイメージがしやすいと思うのでそう書いておく。

お店の中に入ると、私の前には既に2人並んでいる人がいた。
レジの方向に目をやると、でかでかと「研修中」と書かれたワッペンを付けた高校生ぐらいの女の子と、ずっと前からこのお店で働いているお姉さんの姿が目に入る。

その時、察した。
「多分あの子は私のレジを担当するんだろうな…」と。

いざ、私の番が来たら、いつもここで働いているお姉さんが小さく女の子にGOサインを出した。

予想通り研修中の女の子が「お次にお待ちのお客様…」と声をかけてくれたのだが、想像以上に緊張していることが伝わってきて、こちらまで緊張してしまった。

もう25歳の私は、ここで「社会が優しい」ということを、いち客として伝える。それが今日のミッションだといわんばかりに、笑顔で女の子の前に行き、いつもより少し大きめの声で、なるべくそのお姉さんの近くにあるドーナツから順に注文をした。

お会計の時も、いつもは画面を出すのが面倒で「持ってません」と言ってしまう楽天ポイントカードもちゃんと提示した。

マニュアルがあればきっと終盤にさしかかったタイミングだろう。
お金を渡して、トレーからお釣りをもらったとき、いつものお姉さんがその子に向かって小さく拍手を送っていたのが目に入った。

それがとても素敵で、私はそのお姉さんに向かって同じように小さな拍手を送りたくなった。

もう10年近く前の話になるけど、初めてアルバイトでレジを触ったときは緊張したし、注文を聞くのも本当に不安だった。それも、自分の真後ろでジッとその行動を見ている先輩にも緊張して。きっと研修初日なんて何もできてないも同然だったと思う。

でも、「できてるよ」「いい感じ」と褒めてもらえたことで、自己肯定感が爆上がりして、落ち込んだ気持ちもベホマされたみたいに全回復した。あの日々を少しだけ思い出すことができた。

些細な事かもしれないけど、きっとあの子はお姉さんの小さな拍手をずっと大切に記憶するんじゃないかなと思った日。そして、また来月もあのお店でドーナツを買おうと思った。

P.S.
ミスドと書いたときに、頭の中に阪神のF浪さんが
マクドナルドを「マック」と略す人に対して、じゃあミスタードーナツは「ミッスなん?」って聞いてたことを思い出した。どうでもよすぎて文中に書くのはやめたけど、やっぱり書きたかったので書いてしまった。


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