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「人生は敗者復活戦」 仙台育英須江監督 石巻法人会 新春講演会

 公益社団法人石巻法人会(松本賢会長)主催の新春講演会が10日、石巻グランドホテルで開かれた。昨夏の全国高校野球大会で東北勢悲願の優勝を果たした仙台育英学園高校野球部の須江航監督(39)が講話。白河の関越えを果たした過程や子どもの考え方の変化などを紹介し、失敗することの大切さを訴えた。

 演題は「失敗から学ぶ~実りある1年になるために~」。経営者や高校野球OBら約200人が来場した。須江監督は初優勝の勝因で「一つは運が良かった。全て第一試合で生活のリズムが取れ、大舞台でもTシャツとジーンズで過ごすように普段通りに全員が臨めた。ある選手は仙台や石巻市民球場にいるようだと語っていた」と回顧した。

失敗の重要を訴える須江監督

 「成功は再現性がなく、学べることはないと考えている。優勝を運と言ったが、成功は人、時代、タイミング、偶然などが合致して起こる。同じようにやっても得られるものはない」と断言。「逆に失敗の中には時代を問わずたくさんのヒントが隠されている。これはジャンルを問わない。私たちも過去、東北勢が決勝で敗れた試合を分析してきたことも大きな要因につながった」と強調した。

 一方で「昨今は失敗すること、挑戦することを怖がる子どもたちがすごく増えたと感じる。根本的理由はわからないが、それがすごく気になっている」と警鐘を鳴らした。

 「成功者は時間とともに右肩上がりにあがるという発想の子が増え、途中に挫折があると思っておらず打たれ弱い。挫折のない人生なんか面白くないし、挫折のない人生などないと伝えなければ。私は『人生は敗者復活戦』と言っている」と語った。

 昨今は成功に特別な才能や家庭の財力などが必要と考える子どもが多く、将来の成功の有無は生まれた家庭でランダムに決まるという若者言葉で〝親ガチャ〟と表現される。

 須江監督は「この言葉がすごく嫌い。何かいろんなものが整ってないと成功できないという真相心理があるよう。今はネットで多くの考えに触れられる時代。『そんなことはない』と小さな成功体験を植え付け、変えていく必要がある」と述べた。

 大人の子どもに対する接し方には「説明が丁寧な時代が来ている。とりあえずやるは通用しない。なぜ必要なのかの説明が重要で、そこを履き違えると互いにコミュニケーションが取れなくなる」と指摘。「優勝が与えたものは、自分たちもできるということ。一方で優勝を成功体験にすることを恐れている。思い出は優しいが、ぜひ糧にして卒業してくれたら。新チームも〝2回目の初優勝〟を目指して挑む」と締めた。【横井康彦】





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