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未来を見据え、「森」と生きる人たちを取材【 東京チェンソーズ 】

2021年8月6日、とあるご縁から「東京チェンソーズ」という少しユニークな林業会社さんを取材させていただきました。

東京チェンソーズさん(以下、東京チェンソーズ)は、以下の基本理念を元に「森林を造り、育て、整備する事業」「木を余すことなく1本まるごと販売する事業」「木材を木のおもちゃや日用品等の企画・製造・販売をする事業」「森林空間を活用した体験サービスを提供する事業」などを営まれています。

東京の木の下で
地球の幸せのために
山のいまを伝え
美しい森林を育み、活かし、届けます。
出典:東京チェンソーズ公式HP

当記事は、「東京チェンソーズ」を立ち上げた青木亮輔さん、ご縁を紡いでくださった日揮ホールディングス株式会社の皆さま、東京チェンソーズのプロジェクトに関わるメンバーの皆さまと半日を過ごし感じたことを綴るnote記事です。「林業の現状に触れてみたい」という方や、「森と生きる」というテーマにピンとくる方にお読みいただけたら嬉しいです。

舞台は、東京唯一の村「檜原村」

多摩地域西部に存在する東京唯一の村「檜原村(ひのはらむら)」は、全体の94%が森林です。かつては広葉樹が生い茂り、林業が盛んな地域でしたが、戦争によって多くが焼き払われた土地にスギやヒノキが植えられたといいます。

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しかし、現在(2021年4月)の檜原村の人口は2000人に及ばず、多くの地方にも起きている「過疎化」が進んでいます。さらに、国産の木材価格は低迷し、林業を志す若者も減少。「荒廃した森が増える中、誰かが森林を守ってゆかなければならない」という課題意識から、青木亮輔さんと4名の同志によって「東京チェンソーズ」が立ち上げられました(画像:地域人口関係統計図表)。

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切り捨てられた部分に光を当てる

東京チェンソーズの特徴の一つである「1本まるごと販売」。これまで木材を販売する際は、木1本のうち全体の50%が「原木市場」へ、そこからさらに50%が削ぎ落とされ「製材所」へと流通していました。「まっすぐな幹は家具や建築材料として使いやすいから」という理由だけで、木1本のうち75%はうまく活用されていなかったのです(ちなみに、スギの語源は「まっすぐ」が訛った言葉からだそうです)。

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そこで「東京チェンソーズ」は、今まで流通することのなかった、個性豊かな山のカケラたちを見つめ直し「1本まるごと販売」を始めました。それらを世界に一つだけの家具やおもちゃとして販売したり、子どもたちに木に触れる機会を届けるワークショップも行われています。

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根っこから葉先まで、木1本から採れる素材は同じ形が2つと無く、どれも美しく、力強さを秘めています。私達はこの山のカケラを通して、失われてしまった山と人々の暮らしを再度つなぐきっかけをつくりたいと考えています。(画像 / 文:東京チェンソーズ公式HP

これを聞いたとき、野菜なら葉、根、皮を捨てることなく食べ、魚なら骨と皮も食べる「全体食(ホールフード)」の考え方に近いなと思いました(マクロビオティックやヨガでは「食べるものの一部を切り捨ててしまうと、偏ったエネルギーを取り入れてしまう」だと考えられています)。

効率や標準化を重視したときに切り捨てられてしまう“規格外のもの”にこそ新しい価値が眠っている。あらゆる分野で大切な視点だと感じました。

他人事だった森を自分ごと化する仕組み「mökki」

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青木さんにご案内いただいたのは「mökki」いう文字が描かれた看板があるエリア。mökki(モッキ)とはフィンランド語で小屋(または別荘)という意味で、東京チェンソーズでは「豊かな小屋」と定義されているといいます。

今後、mökkiのエリアを「キャンプ場」や「学びの場」として会員さんとシェアしていくご予定だそうです。ポイントは、ただお金を払ってもらって使ってもらう場所として開放するのではなく、場をつくるプロセスに関わってもらうこと。例えば、「ここに道があったらみんな使いやすいんじゃないか?」「沢からフィールドまで水を通せる?」「どんな木を植えて森をデザインする?」といったように、みんなが森づくりの当事者として関われるプロジェクトとして展開していきたいと考えられているそうです。そうすることで、「他人事だった森」が「自分たちの森」に変わる。そして、「次の世代の子どもたちが豊かに暮らせるように」という意識が養われるということなのだと思います。

30年かけて、森とともに歩む「東京美林倶楽部」

2015年には、一般の方と一緒に30年かけて森林を守り育てるプロジェクト「東京美林倶楽部」も発足されています。当日は、このコミュニティの会員の方もご参加されており、「この子はわたしが育てているの!30年後に孫と一緒に見に来たいと思っているのよ」と嬉しそうに話されていたのが印象的でした。

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先日、横浜市で「働き手やお客様に愛される超地域密着型の美容室」を経営される中島翔さんという方とスタッフの皆さまにお話を伺う機会がありました。なぜこのお店は人から愛されるのか? それは、なんの変哲もない美容室に「DIY」を掛け合わせることで、一人ひとりのスタッフがお店を「自分たちの店舗」として捉えたから。すると、お店への愛着が自然とお客様へ伝わり地域に根強いリピーターを生んだとのことでした。「受け手」としてではなくう「作り手」として参画してもらうことが当事者意識を育むということを学ばせていただきました。

まとめ

改めて、今回のご縁におつなぎいただいた吉井拓史さんに感謝申し上げます。木は育つのにどうしても時間がかかってしまいます(だからこそ林業は収益化が難しい!)。そんな中、「国からの補助金に依存せず、いかに愉しく森を育んでゆくか、人々のつながりを紡いでゆくか」にワクワクしながら取り組む東京チェンソーズの皆さまにたくさん刺激や気づきをいただきました。

その他に撮影した写真はこちらから


noteを読んでくれてありがとう! 僕らしく、優しさのリレーをつなぐよ。