見出し画像

語り尽くされた「ブランド」を、CXの観点で考える

”ブランドとは何か?”なんて話は、古今東西さまざまなところで語り尽くされているし、既に偉大な先人が素晴らしい定義をしてくれています。

でも、これほど、解釈が人それぞれ多様に分かれる言葉は珍しいし、それぞれの解釈が、組織や人のスタンスや発言・行動に大きな影響を与える言葉も他に無いと思います。

もちろん、日々の仕事でCX (Customer Experience) について考えている私にも、私なりの「ブランド」の解釈があり、それが日々の発言や行動、戦略や戦術にまで影響をしています。

なので、これからnoteでCXについて綴っていく上で、まず最初にこの「ブランド」という言葉の私なりの解釈を語っておくことが、私自身の考え方をご紹介していくこのnoteの“座標”になると考えて、この記事を初めに書くことにしました。

「ブランド」とは何か?

私の「ブランド」の解釈はこうです。

お客さま(1) があらゆる接点(2) において五感を通して体感(3) し、
その時々のお客さまの感情によって変化(4) する、
商品・サービスの選択に深く・長く(5) 作用する正負の価値(6)

もっと端的に表現すると、

お客さまが、体験を通じて得た、瞬間的かつ継続的な価値認識

となります。

6つのポイントに沿って、詳しく説明します。

ブランドを形作る6つのポイント

Point.1) 主語は「お客さま」

まず大前提は、ブランドの主語は「お客さま」であるということです。

メーカーやサービス提供者だけで作れるものでも、押し付けられるものでもなく、あくまでも「お客さま」が知覚・認識するものです。

つまり、「お客さま」に知覚・認識されなければ、ブランドは存在しないことになります。

Point.2) 「あらゆる接点」において問われる

ブランドは、お客さまとの「あらゆる接点」に関わります。

お客さま(主語)が、商品やサービスを使った時、メーカーや社員が発信するメッセージや広告に触れた時、商品やサービスに関わるデザインを見た時、商品やサービスの決済や配送(いわゆるフルフィルメント)の対応、インターフェースや接客の印象など、全ての接点です。

”ブランドを体現するのは人である”というようなことも言われますが、まさに、メーカーやサービス提供者の人が作った、有形・無形のあらゆるものが、お客さまの中の「ブランド」を形作っていきます。

Point.3) 目に見えない価値を「五感を通して体感」してもらう

人は、五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)を通した体験や実感を伴わないものは理解が難しいと言われます。

現金などそれ自体が貨幣価値を持つものを除いて、価値や印象の多く(“きれい”、“かわいい”、"おいしい”、“良い香り”など)は、それ自体は目に見えないし触れることもできません。

目に見えるデザイン、サウンドロゴやテーマソング、食べ物であれば味、香りの記憶、触り心地など、五感のいずれか(または複数の組合せ)によってしか、知覚し理解してもらうことはできません。

逆に言えば、五感に訴えることができれば、目に見えない価値をお客さまに理解してもらえるということです。
お客さまに感じて欲しい価値を、如何に「五感を通して体感」してもらうかが、重要になります。

Point.4) 人それぞれ、その時々の「感情によって変化」する

ブランドは、主語であるお客さまに知覚・認識してもらうものであるということは、当然、人によっても、また、(同じ人でも)その時々の感情によっても、その印象は変化することになります。

だからこそ、CXを考える時には、多様な人、シチュエーション、感情を想定して、どんなお客さまがいて、どう感じるかを、考える必要があります。

画一的に、漫然と、同じメッセージやコミュニケーション、体験を提供していては、対応できなくなります。

Point.5) 人の印象は「深く・長く」続く

お客さまの印象はその時々の感情によって瞬間的に変化する一方で、一度お客さまに知覚・認識してもらった印象は、良くも悪くもそう簡単には覆りません。

例えば、Aというファーストフード店は“健康に良さそう”で、Bというファーストフード店は”健康に良く無さそう”という印象を与えていたとします。
Aが新商品を開発した際、特に説明をしなくても、お客さまは一定の度合いで、“健康に良さそうだな”と感じてくれるでしょう。
一方で、Bが健康に配慮した新商品を開発したとしても、よほど丁寧に説明しないと、その商品を”健康に良さそうだ”と感じてもらえませんし、Bというお店全体の印象を覆すことは難しいでしょう。

ブランドを無形の資産として捉えることができるのは、このようにお客さまに知覚・認識してもらったブランドの価値はストックされるからです。

Point.6) 正(ポジ)の価値も、負(ネガ)の価値も存在する

メーカーやサービス提供者がどのように意図しようとも、ブランドはお客さまが知覚・認識する価値なので、当然、ポジティブな印象を与えた“正の価値”も、ネガティブな印象を与えた“負の価値”も、両方とも存在します。

前述の“健康に良さそう”(正の価値)と、”健康に良く無さそう”(負の価値)がそれです。

メーカーやサービス提供者は、ブランドを語る時、正の価値ばかりを意識しがちですが、負の価値もまた、そのメーカーや商品・サービスのブランドです。

CXとは、「ブランド」を形作る活動である

冒頭で述べたように、私の「ブランド」の解釈を端的に表現すると、

お客さまが、体験を通じて得た、瞬間的かつ継続的な価値認識

となります。
つまり、CX (Customer Experience:お客さまの体験)を考えることは、「ブランド」を形作るための活動そのものであると考えています。

そして、CXはお客さまとの全ての接点における体験を考えるものであり、メーカーやサービス提供者の事業活動のほぼすべてに関わります。

こう考えれば、「ブランド」や「ブランディング」というものが、特別に高尚な概念や活動ではないし、事業活動に関わる全ての人が取り組めるものであるということが言えます。

私自身、スキンケアブランドで「CXマネージャー」を名乗るからには、自社の事業活動の全てに関わることを責務だと思っていますし、ブランドに関わる全ての人がCXの向上という活動を通して「ブランド」の構築に貢献しているのだということを常に意識して欲しいと思っています。

おわり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?