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FilmStruckとFandorの話 - ニッチでコミュニティードリブンな定額動画配信サービスはNetflixに対抗できるんだろうか? -

シネフィルというか映画好きというか、そんな人が愛する定額動画配信サービスがありました。ひとつはFilmStruck、もうひとつはFandor。サービスが”ありました”というのは、FilmStruckは閉鎖されたことが発表されており、FilmStruckの競合としてそのポジションを争っていたFandorも、先日身売りすると報じられていたからです。

まずはFilmStruckの話。このサービス、2016年11月からWarnerMedia(元々はTurner Classic Movieが立ち上げ、今となってはAT&Tの傘下に)が展開していたんですが、日本では展開されていないので知らない人も多いんでしょうけれども、実は閉鎖されるに際してChristopher NolanやGuillermo del Toroなどがサービス継続の嘆願書を出すくらい、業界関係者の中にも熱烈なファンやその存在意義を認める人がいるサービスだったんですね。

アートハウス系や外国映画、クラシック映画など大手の配信サービスではなかなか取り扱うことがないニッチでカルト的な映画ばかりを集めたサービスで、世界の名作を高品質でパッケージ化してきたクライテリオンのライブラリー(The Criterion Collection)も追加料金を払うことで見ることができました。ただWarnerMediaが2019年末に向けて新たに始める自社OTTサービスに注力するために、事業として優先度が低いFilmStruck(DramaFeverも)を閉鎖することになってしまいました。

一方のFandorは、大手スタジオ系が展開するサービスとは違って、いわゆるスタートアップがサンフランシスコで立ち上げた定額動画配信サービスとして始まりました。創業は2010年とFilmStruckよりも古く、シリーズBではリバティーメディア傘下のプレミアムチャンネルStarzから700万ドルの出資を受けていました。FilmStruck同様に、いわゆるブロックバスター映画とは異なるインディペンデント系を中心に4000タイトルほど配信(もちろんThe Criterion Collectionも)。

ただここ最近は資金的な問題もあってか、よりポピュラーな映画をライブラリーに投入することを決めるなど、コアバリューから若干ズレているということが指摘されていました。FilmStruckの閉鎖の発表を受けて、Fandorがユーザーの受け皿になるのかと思われていましたが、残念ながら社員のほぼ全て(40人程度)を解雇し、現在買い手を探していると報じらています。

もはやNetflixに対抗できるのは、作品を持っているスタジオ系か、或いは明確なバーティカルとコミュニティー形成を丁寧に行なっているサービスのみだと思いますが、Fandorはソーシャルアカウントを中心に、Keyframeの名の下に映画に関する優れたオリジナルコンテンツを展開していましたが(過去形...)、コミュニティー形成という意味ではなかなか評価されていたように思います。

ただ、ここ数年VCなどから出資を受けてきた多くのメディアエンターテイメント系スタートアップ同様に、ちょうど資金調達かエグジットのタイミングに来ていて、Fandorもその流れに巻き込まれたのではないかなと思います。

そもそもFandorは映画批評のオリジナルコンテンツは展開していたものの、当たり前ながら作品の配信権は自社で持っていないため(権利者とのレベニューシェアモデルだったので)、一度儲かり始めると配信権も引き上げられる運命にあり、現在の資金力では(ファンは多いけど)事業としては大きく成長できないモデルでした。もちろんFandorにキャッシュリッチに買い手がいれば閉鎖されることはないわけですが、さてどうなるか。

もはや似たようなサービスを展開しているのはMUBIくらいでしょうか。世の中には映画好きを自称する人って結構いると思うんですけれども、実は言っているだけの人ってかなり多いですよね。月額1000円もしないサービスに入らないわけですからね。







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