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「採用=直接雇用」に限らず、デザイナーを確保するにはどうしたらいいか、を考えてみた

前回、Webサービスに関わるデザイナーはどのくらいいるのか、転職市場にはどの程度の母数存在しているのかを調べてみたのですが、それを踏まえてどうやったらデザイナーを採用できるのかを考えてみようと思います。

前回の記事はこちら

以前エンジニアをどう採用するか?という手法に関して考えたのですが、普通に考えていくと今回も同じような内容になってしまうので今回は「採用=直接雇用」だけに限らず、いかに「デザイナーリソースを確保していくか」という広めの視点でゆるめに考えてみることにします。

エンジニアの採用手法についての記事は下記。興味ある方はどうぞ!


前回のおさらい

国勢調査や特定サービス産業実態調査から考えていくと、Webサービス企業に所属するWebデザイナーの総数は「9,469人」。その中で転職市場に出てくると思われるのが「327人(採用しようという瞬間にターゲットになり得る人数)」。それに対して求人数が「1,551件」。

採用倍率にして4.74倍!

普通にやっていたら、いつになったら出会えることやら...という数値ですね。。。


しかも最近の傾向として、デザイナーさんに対して「UI設計もできて、コーディングもできて、それに経営陣とサービスのディスカッションできる、サービスディレクションできる」みたいな感じでどんどん要求も上がってきている会社も多く、採用を担当している方や人材紹介会社の人からすると「そんな人どこにいるのよ...」みたいな状態になっているかと思います。


では、どうやって採用するか?

ここでは、人材紹介会社や求人媒体、社員紹介をフルに駆使して採用するためにできる限りの施策は打つ、というのを前提にさらにこういうアプローチもありなのでは、ということを考えていきたいと思います。

まず、デザイナーの確保を「採用」「採用に限らずデザイナーにお任せすべき仕事をしてくれる人を確保する」という2つにわけて考えていきます。


採用

採用手法の精度をあげていくためにあらゆる施策を行うことは前提ですが、それに加え抜本的に「デザイナーにとって働いてみたい環境」を作る、ということに注力していくことも必要ですね。

考えられるものとして、

・デザイナーの給与を上げる
・仕事の実績を個人のポートフォリオとして公開することを認める
・副業や兼業の解禁(積極的にサポート)や週5フル以外の働き方の提供
・育休、産休中の支援や保育費補助など

etc...他にも考えられると思いますが、以上のようなことは考えられそうです。

1つずつ補足すると、


・デザイナーの給与をあげる

これはわかりやすいかつ直接的な施策として考えられそうです。DODA調べによると、Webデザイナーの平均年収は「330万円」で全100職種中90位。グラフィックなどを入れたデザイナー全体での平均年収は「382万円」となっています。

同じ調査でのプログラマ(エンジニア)の平均年収は「468万円」。職種の差はあれど、市場での希少価値や現代のWebサービスやアプリにおけるデザインの重要性の高さ、求められるレベルなどを考えても低すぎる気がします。。。給与って決して市場の需要と供給のバランスではなく社内や他社との横並びで決まっていることが影響していると思いますが、なんか不健全な気も...


「ウチの会社はデザイナーをとても重視している。求めるハードルは高いけど、その分しっかりスキルや実力を評価して年収は700万円以上です」

みたいな会社が出てきたら、応募は集まりそうですけどね。もちろんそれだけじゃダメなんでしょうが。


・仕事の実績を個人のポートフォリオとして公開することを認める

デザイナーにとっての履歴書であり、職務経歴書である「ポートフォリオ」。個人でポートフォリオやサイトを作っている人も多いと思いますが、どこかの社員の方が仕事でやったサービスに関してポートフォリオに載せられなかったり、フリーランスの方が関わった作品を載せられなかったりということが往々にしてあります。(権利関係とかあるとは思いますが)

社内のデザイナーが業務で手がけたサービスを自分のポートフォリオに載せられることで、デザイナー自身のブランディングにも伝わりますし、それを会社として社外に発信することで「デザイナーのスキルアップに積極的」「デザイナーが手がけたものを大事にしてくれる」などの印象が伝わり、採用にもプラスになりそうな気がします。


前職のDeNAがクリエイター採用のためのサイトで社員1人1人のポートフォリオを掲載していますが、こういう取り組みはもっともっと増えていいなと思います。

DeNAのサイトはこちら


・副業や兼業の解禁(積極的にサポート)や週5フル以外の働き方の提供

これはデザイナーに限った話ではありませんが、もう副業を制限しているメリットは何もないと思います。これを読んでいるみなさんも、名刺を作りたい、新しいサービスのLP作りたい、HPリニューアルしたい、などで知り合いのデザイナーに仕事を依頼したことある人多いのではないでしょうか。私もあります!デザイナーの友人・知人に聞いても、「知り合い経由で仕事の依頼がきたことある」という人はほぼ全員。もう実質、副業禁止です、は意味なくなっていますし、現在の雇用を取り巻く流れを考えても「副業当たり前」くらいの発信にしてもよさそうです。


逆に「ウチの会社はデザイナーのスキルアップや柔軟な働き方を応援している。だからこそ、会社として副業や兼業を積極的に奨励しているし、サポートも行っている」

というくらいの方が魅力的な職場だなと感じてもらえそうですよね。


副業もそうですが、正社員でも週3勤務可能とか時短勤務okとか、出社しなくていいよ、とかデザイナーのパフォーマンスが最大限発揮できるような働き方の提供も同時に考えていくべきなのかなと。

もうこのへんは世の中でもたくさん言われていることですが。


・育休、産休中の支援や保育費補助など

これもデザイナーに限った話ではないですが、産休や育休自体をフレキシブルな形で取得できたり産休、育休中の手当てやサポートを充実させることで安心長く働ける環境を作ることもこれからは大事になると思います。

産後の育休は1年間が最大、というところも多いと思いますが、よく周囲で聞く話に出てくる「小1の壁(小学校にあがると帰宅が早くなるため、時短勤務もしにくくなり仕事を辞めてしまう人が出てくること)」なども想定して、柔軟な支援を作っていくこともよさそうです。

いまは保育園に入ること自体が難しいですし、入れたとして保育料がとても高い、などという例はたくさんあると思うので保育料の補助や、保育園が入りやすい地域への引っ越し補助・家賃補助など会社として「働きやすい環境」の整備に投資するのは有効な手段だと思います。


以上、いくつか考えられる手段を書きましたが、これ以外にもたくさん方法はありそうです。役員にデザイナーを入れ会社の意思決定にデザイナー視点を入れる、とか。勉強会やスクール、ガジェットやツールなどスキルアップにつながりそうなものは全て会社負担にするとか。

さまざまな方法があると思いますが、デザイナーが働きたいと思う環境をあらゆる方面から準備していくことを考えていくのがよさそうです。


では、次に採用以外の手段を。


採用に限らずデザイナーにお任せすべき仕事をしてくれる人を確保する

採用するための環境整備について書いたのですが、そうは言ってもなかなか簡単に投資ができないこともあると思います。ただ、何もしないわけにもいかないので、採用以外でデザイナーの仕事をお任せする人を確保するかということを考えてみたいと思います。


私が考えるのは下記の2点。

・フリーランスとの業務委託
・制作会社との専属契約

ここも1つずつ考えていきたいと思います。


・フリーランスとの業務委託

フリーランスのデザイナー(今回はWebデザイナー)はどのくらい存在するのかを簡単に計算してみます。前回のnoteのデータを活用すると、フリーランスのWebエンジニアは「35,353人」。前編同様、エンジニアとデザイナーの比率を9:1と考えるとフリーランスのWebデザイナーは「4,001人」。

日本国内で約4,000人いることになります。

この中で求めるスキルが合致しており、かつ稼働が空いているデザイナーを探すのはなかなか大変。特に週5フルコミットとなるとほとんど見当たらなそう。知り合い経由以外で探す手段もなかなかないのが現状ですし。


私はデザイナーのフリーランスを探すのであれば、いくつかデザイナーがたくさん登録しているサービスが出てきているのでそういったサービスを有効活用するのも1つの手だと思います。


具体的には、

・ITプロパートナーズ(ITプロパートナーズ
・サーキュレーション(flexy
・キャスター(キャスタービズ

あたりでしょうか。

※追記
PROsheetの中川社長より直接「ウチ、この分野では日本最大級ですw」と連絡をいただいたので、加えさせていただきます。PROsheetオススメです!笑

PROsheetはこちら

どのサービスもフリーランスや起業してたのデザイナーなどが数百から千名単位で登録されており、「週3だけ常駐で」「週4稼働だけどリモートで」のように働き方をフレキシブルにすることで優秀なデザイナーの力を借りることができるようになっています。しかも専属の担当がいるので自分で探すよりもスピード感持って進められるので、こういったサービスを積極的に利用するのはおすすめです。


ITプロパートナーズの説明ページをみると、全体登録者で4,823名、その中でデザイナーは29.7%とのことなので「1,432名」は登録されているようですね。デザイナー1000名以上集めるってすごい!


・制作会社との専属契約

次にデザイン制作会社とうまく連携することでデザイナーの力を借りる方法を考えてみます。

前回も利用した特定サービス産業実態調査で再び見てみると、デザイン業の事業所数は「8161事業所」あるのですがその中で78%、6,367事業所が4名以下で運営されています。イメージ的には営業とか経理を行う人が1名と残り3名のデザイナー、などの構成でしょうか。

さらに調べると、4名以下の制作会社の従業員一人当たりの売り上げ平均は「736万円」


ここから家賃や諸経費を引くと、多めに見積もってもデザイナー1人あたりの収入は400万円-500万円前後といったところではないでしょうか。デザイナーとして独立、制作会社を経営していても年収がとてもあがる、というわけではなさそう。

おまけにデザイナーで営業や経理、契約書の締結や交渉、見積もり発行などビジネスサイドの仕事や事務作業が苦手、という人は多い印象ですが、制作会社を経営しているとそういったストレスがたまるような仕事もやらないといけません。営業やらなくていいのであれば、やりたくないなーと思っているデザイナーも多いのではないかと想像できます。


このような制作会社にいるデザイナーの現状を考えると、デザイナーが不足しているWebサービス企業も取り組み次第では、お互いにメリットがある形になりそうです。


具体的には、

「きらりと光る4名以下の制作会社を探し出し、その会社のデザイナー全員に毎月40万円を支払うので自社のデザイン業務を専属でやってほしい。そのほかに依頼があった仕事は受けてもらって構わない。」

のような専属契約を締結してみる、という取り組みは有効そうです。


タレントバイのためにデザイン会社をM&Aするという戦略を取る会社もありますが、コストもかかるし意思決定としてスピード感もなかなか出にくい。

ただ、デザイン制作会社に対しての「専属契約」という形であれば、制作会社にいるデザイナーは営業しなくても安定した収入が入りますし、社員になるわけではないので自由な働き方や自分がやりたい仕事や時間の使い方もできます。

「デザイナー採用ができない会社」と「デザイン業務に集中できず、なかなか安定的に稼ぎにくい制作会社」という2社のニーズが専属契約を結ぶことによって解消することが可能になります。


今回出した以外にも柔軟な選択を行うことで採用や人材の確保が一気に容易になることも考えられます。常識や今までのやり方だけにとらわれず、市場を全体的に理解した上で、人材確保の方法を考えるスキルも今後の人事や経営者にとって必要な能力になりそうです。



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