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42歳の大学教員が30代の理系研究者に伝えたいこと

現在、私は42歳の大学教員(准教授)で、生物系の研究室に所属し、生物学と情報学を教えている。今回のnoteは30代の理系研究者に伝えたいことである。

「30代」

20代に比べて、体力、気力は若干落ちてはいるが、もっとも実りのある時期が30代である。知識・経験の量は格段に増えていて、頭の回転も早い。研究者にとって、30代の研究が「プレイヤー」としての1番の業績となりうるといっても過言ではないだろう。とはいえ、ポスト選び(ポスドク・大学教員・研究所職員等)に迷いこんでしまう不安定な時期でもある。以下に3つのポイントを述べる。

①まず「実験」である。30代になると、学生やテクニカルスタッフと一緒に実験を進められる時期であるので、実験をわかりやすく教える指導力が強く求められる。ラボのルール作りなどに着手する人も多いだろう。とはいえ、研究室にとっての初めての実験や、手技的に難しい実験に関しては、自分が最初に率先して進めるべきである。自分の研究室で限界のある技術であるならば、他の研究室に教えを請いにいくことも重要だ。そして、ある程度の道筋が出来たら、学生やテクニカルスタッフに丁寧に引き継いで、進めていってもらおう。これが30代での実験のコツである。30代での実験は、仲間との共同作業だと思って欲しい。

②次に「人脈づくり」である。あなたが20代の時にきちんと業績を積み上げてきたならば、周囲からの評価も高まっていて、学会委員などの仕事の依頼や、日本語総説などの執筆依頼、シンポジウム・ワークショップでの運営・座長を任されることも多くなるだろう。ここでは決して「雑用だから」と断ってはいけない。人脈づくりの点からみて、これらの仕事ほど効率良く、質の高いものはない。特に自分より上の世代の著名な研究者の方々と繋がることができる格好のチャンスでもある。面倒がらず、このチャンスを存分に活かそう。インパクトのある業績を持っているならば、学会賞等の名誉を受けることも出来る。特に学会賞はぜひとも手に入れておきたい。

③最後に「研究資金の獲得」である。まず1番重要なのは「科研費」である。業績がある人は積極的に「基盤B」もしくは「若手研究」を狙おう。また「さきがけ」も、今後の研究人生に多大なる意味を持つ。大学に所属しているならば、ぜひとも獲得したいところである。一方、研究所所属であると「さきがけ」は狙いにくくなるが、研究所内だけの大型予算があるはずである。ここで「さきがけ」と同額程度の所内予算に果敢に挑戦しよう(著者はこちらを経験している)。また、②の人脈づくりとも関係するが、著名な先生と関係ができて、もしあなたが高く評価されているならば、「基盤A以上」や「NEDO」等の大型予算の仲間に入れてもらえる確率が高くなる。もちろん、自分がプロジェクトリーダーになって、積極的に動くことができれば御の字である。

さて、最後に注意点だ。研究者にとって、20代後半から30代にかけて、結婚を経験する人が多いだろう。子供も出来て、家庭の時間を確保することが大切になってくる。「ワークライフバランス」が叫ばれる世の中であるが、私の意見では「家庭」は自分自身の土台であり、最も大切にすべきであると思う。「家庭」という土台があってこその「研究」だという意識を忘れてはいけない。家庭の時間は必ず確保し、優先度を高めた方が、人生の充実度、幸福度は高くなる。仕事だけが人生ではない。

このような悩みを解決する手段を、包括的にまとめた良書がある。坪田一男先生の「理系のための人生設計ガイド」だ。ぜひ一読されることをお薦めする。

「20代へのメッセージはこちら」

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