#19 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第6話「シカゴシティの夜」
夕陽がすっかり落ち、大空に紫色に染まり始めた頃でも4時間近く走り続ける赤いジープがあった。
そのジープは右側に見えるミシガン湖に沿って数時間も止まらず運転を続けていた。その車の中でセミロングの青髪をしている少年が、運転席で運転している緑色の髪をしている父親らしき人物に話しかけていた。
竜賀「ねぇねぇ父さん?」
光男「ん?何だ?」
その少年藍川竜賀は父・光男に疑問をぶつけていた。
竜賀「この右にあるのって本当に湖なの??なんか向こう岸が全然見えないんだけど?」
光男「ああ…地図が確かならここはミシガン湖だよ…世界で6番目に大きい湖で時期が来ると、アメリカの色んな州から水浴びに観光客が沢山やって来るらしいぜ」
源太「こんなに広い水の塊なのに湖と海の違いが分かんないんだけど……」
2人の会話に入って来たのは、褐色の肌をしている黒髪の少年、猿渡源太であった。竜賀は源太の質問に答えた。
竜賀「海は陸を囲んでる水の塊で、湖は陸に囲まれてる水の塊って感じかな?」
光男「後は海の水…つまり海水は塩が沢山含まれていて、湖の水…淡水には塩がほとんど無いんだ」
源太「へぇ…何で海の水って塩が含まれてるの?」
竜賀「それは……何でだろ?」
光男「これには諸説あるから、一概にこれ!とは言い辛いんだけど…大昔の世界では海がまだ無かった時代に世界中を覆い尽くす酸性雨って言う危険な雨が降ってたらしいんだ」
竜賀「あの理科の実験とかである何でも溶かす酸性のこと?」
光男「そうそう…それが世界の岩や石に当たりながら水溜まりが多く出来ていったんだ…それが岩や石を溶かして中和しながらできたカルシウムや鉄みたいな水に溶けない物質は海の底に沈んでいったけど、一番水に溶けやすい塩化ナトリウムが中和された水を海水に変えてるって訳」
源太「その…塩化ナトリウム?ってのが…つまり」
竜賀「塩のことだね…日本では海水から水を飛ばして残った結晶を料理の味付けに使ったりするすんだよ」
源太「え!?それじゃああのソルトって海から出来てるの?」
光男・竜賀「そうそう」
そんな雑談を交えながら三人は道を進んでいった。そしてしばらくすると湖岸沿いに明るく人目を惹くネオンの光が見えてきた。
源太「ねぇ?あの綺麗な光何なんだろう?町なの?」
光男「ああ…地図通りならあそこはシカゴのはずだよ」
竜賀「シカゴ?何か聞いたことある名前だけど…」
光男「シカゴと言えば、お父さんの時代で言えばシカゴ・ブルズだろ!それにシカゴ・ホワイトソックスも有名だしな」
竜賀「父さん、それスポーツばっか…シカゴと言えばアメリカでニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐ大都市でアメリカの鉄道中心都市として栄えた大都会でしょ?」
光男「おおーー!良く知ってんなぁ?」
竜賀「シャーリーさんから学んだんだよ……西に行くんだったらシカゴは絶対勉強しておきなさいってな」
光男「なるほどねぇ…」
源太「さっき言ってたシカゴ?ブルズ?って一体何?」
光男「ああ…アメリカのNBAのプロバスケットボールチームの名前でかの有名なマイケル・ジョーダンが活躍したチームさ」
源太「………誰それ?」
光男「……ええええええええええ!!?」
源太の無のリアクションに光男は仰天した。いきなり大声を上げられて竜賀と源太は驚いて咄嗟に耳を塞いだ。
源太「〜〜びっ…くりした〜〜何ですかいきなり」
竜賀「突然大きな声出さないでよ!」
光男「アメリカ住んでてマイケル・ジョーダン知らんとか有り得るの!!?日本の一般人でも知ってるのが当たり前の伝説のスポーツマンで、彼の持つ背番号23番は今でも伝説として色んなスポーツ選手達が付けたがってるんだぜ」
竜賀「父さん…とりあえず言っとくけどここ異世界だからね?まずバスケットボールって言うスポーツ自体生き残ってるかも怪しいくらいだからね?」
光男「……マジかよ……エアジョーダンのスニーカーとか売ってねぇかなぁ」
竜賀「だとしたら奇跡でしょ」
源太「何でおやっさん落ち込んでるの?」
竜賀「父さんスニーカー好きだから、アメリカ来たらマイケル・ジョーダンモデルのスニーカーでも見てみたかったんだってさ…観光かっての…」
落胆の声を漏らした光男を呆れ顔で見ながら竜賀は源太に説明していた。そうこう言っている間にどんどんシカゴの都市が近付いてきたーーーー
ーーーー徐々に近代的な建物が増えてきて、ある巨大なアーチの前までやってきた。竜賀はそのアーチの文字を読み上げた。
竜賀「Welcome to CHICAGO.…か…」
光男「ここは果たして天国か、地獄か…」
源太「できれば天国でありますように…!!」
竜賀「いやどっちも死ぬやつや」
源太が祈る様に十字を切っているのを見て、竜賀は源太にツッコんだ。
三人を乗せたジープが都市の道路を進んでいると道路沿いにある高いビルの灯りが道を明るく照らしていた。
源太「は〜〜〜………めっちゃ綺麗な都市だなぁ…まるで宇宙旅行に来た気分だ」
光男「竜賀?…お前気付いてるか?」
竜賀「うん…違和感バリバリあるよ」
源太「え?…何?何か変なことあったの?」
竜賀「日本の東京の大都会を見ていたら、シカゴは違和感しかないよ」
光男「源太、周りをよく見てみろ……何か変じゃないか?」
源太は窓から車の外を見てみた。ビルの黄色い光は道路を日中の様に照らし、店の看板は赤、青、黄色、白、緑、オレンジなどカラフルなネオンで彩られており都市を明るく輝かせていた。都市を歩く人々は数人くらいで、車も3車線の道路を3台くらいすれ違った。
源太「別に何も感じないけど?」
光男「俺や竜賀からしたら、こんなに明るい建物がやたら多い…それに反して都市を歩く人々がさっきから全然見当たらないんだよ…車も3車線もあるのに全然走ってない」
竜賀「日本の東京なら、こんな大都市ならこれだけ走ってたら100台くらい余裕ですれ違うんだけどな」
源太「………あっ!!そういうことか!確かに人がいない!!……でもそれって今夜だからから出歩くのが危険ってことなんじゃ?」
竜賀「だとしたらさっきからお店の看板の電気をつけっ放しにしている理由が見つからない」
光男「ああ…こんなことしてても電気代の無駄使いだしな……とりあえず」
光男は周りをキョロキョロと見回しながら低速で運転を続けた。
光男「…この辺りで泊まれる所が無いかどうか聞いてみようか?」
すると右側の歩道を歩いている黒いジャンパーを着た男を見つけた。光男は急いで半ば強引に車を道路傍に停車した。黒ジャンパーの男は驚きこちらに警戒する様に距離を置いた。
光男「すいませーん!!」
車の窓を開け、その男に光男は身を乗り出しながら話し掛けた。
男「何だ?アンタ?何者だ?」
光男「いえ!そんな怪しいモンじゃありませんよ!!ただ長旅に疲れたんで、今夜泊まる所を探してたんです!!」
男「………」
男はまだ警戒心を解かず、光男の顔をじっと見ていた。男の表情に徐々に不安な気持ちが湧いてきた竜賀は咄嗟に声が出た。
竜賀「あの!!…僕達観光でこのシカゴまで来たんですけど!もし何かマズい事情があれば明日の朝にでもすぐ出て行きますから!今夜泊まれるホテルかモーテルを教えていただけないでしょうか!?」
竜賀が首を伸ばすように身を乗り出し男に説明した。男は子供が乗っていたのに驚いた表情をしていたが、害は無さそうだと思ったのか少しだけ警戒心を解いた。
男「アンタらここらで見ねぇ顔だな?東洋人か?」
光男「え?……そうです…!アジアの日本人です!」
男「道理でここいらで見ない顔だと思ったぜ………アンタら観光でこんなとこ来たのか?」
竜賀「はい!!アメリカをレンタカーで一周しようって言う旅行をしに来たんです!」
男「………だったら悪いことは言わねぇから今すぐこの都市から出て行きな…この都市にアンタ達の思う様なパラダイスなんか何もねぇんだからよ」
竜賀「そこを何とか!一晩だけ泊まれるホテルを紹介していただけませんか!?」
男「このシカゴシティにもう安全な場所なんてねぇ……シカゴだけじゃねぇ…もう合衆国全体を見ても安全な所なんてどこにもねぇんだ!」
光男「一体何があったんですか?」
男「このシカゴで適能者の一味同士の抗争が始まっちまったんだよ…色んな伽霊能力の連合組織にも対応を要請しても、他のトラブルに忙しくてこっちに手が回らないんだとよ……」
竜賀「そんな……」
男「解っただろ?…この都市は見捨てられたんだよ…ここは徐々に戦場になる…だからさっさと離れるんだな」
光男「そういうことならここからーーー」
竜賀「いえ!この人!僕の父は4時間もの長時間運転で疲れてるんです!何とか今晩泊まる所だけでも教えていただけませんか!?」
光男「お、おい!」
男「!……だったらこれを持って行きな…」
男はポケットから紙を取り出し、そこにペンで何か走り書きしたかと思ったらそれを光男に差し出した。光男はそれをゆっくり受け取った。
光男「………これは?」
男「この先の駅前を右に曲がってそっから3マイルくらい行ったとこに『ローグ』ってホテルがあるはずだ…そこの管理人と俺は昔っからの馴染みでな…俺の紹介だって言えば話しくらいは聞いてもらえるだろうよ」
そう言い残すと男はその場から逃げる様に離れて行こうとした。
竜賀「おじさん!どこに行くの!?」
男「どこでも良いだろうが!そんなの!……もうここは俺達の居場所じゃなくなったんだからな!」
そして男は背中が夜の暗闇に溶け込むほど遠くまで早足で歩いていった。光男と、竜賀、源太の三人はそれをしばらく見つめていたが、それから光男はジープを再び運転し始めた。
光男「ほら!行くから窓から顔引っ込めろよ二人共」
竜賀「う、うん!」
源太「……うん」
そして車は走り出しもらった紙に書かれてあるホテルの場所まで移動した。源太はあの男とは何も言葉を交わさなかったが、あの寂しそうな背中を何故か知っている様な気がした。ーーーーー
ーーーーー道で遭遇した男の案内通りに来たホテルと言うのは意外とすぐに見つかった。看板には『ローグ』という文字が青いネオン浮かび上がっており、赤いレンガ造りの5階建ての建物だった。
光男は荷物を出来る限り持ち出し、ホテルの正面玄関に二人を引き連れてホールに入って行った。フカフカの絨毯に豪華なシャンデリアが三人を迎えていた。
しかし肝心のホールで出迎えてくれるはずのホテルマンどころか従業員が誰もいなかった。
光男「あのー!!誰かいませんかー!!?」
光男が大声で呼びかけたが、誰も返事がなかった。沈黙が三人を押さえつける様に全く音が響かなかった。
源太「……留守なのかな?」
竜賀「……………いや、確かにいる」
竜賀が静かに耳を澄ます為に目を閉じていた。
源太「え?マジで?」
光男「…分かるんだな?」
竜賀「さっきからあそこの通路の角から俺らとは別の心臓の鼓動みたいなのが聞こえるんだ」
竜賀の指差した先には少し暗がりになっている通路の様だ。
光男「あの〜〜?我々は観光でシカゴまで来たんです!今夜ある方に薦められてこのローグってホテルまで来ました!」
竜賀「…!?伏せろ!!」
竜賀が突然叫んだ。その声に反応した光男と源太は咄嗟に身を屈めた。
バアアアンッ!!!
合図の直後、ホールに銃声が響き渡った。竜賀は耳を両手で抑えて横目で二人を見ると、光男が身を伏せながら両手を小さく上に挙げながら必死に叫んでいた。
光男「ストップ!!ストップ!!ジャストモーメントッ!!!」
???「シャラァップッ!!ドンムーブ!!」
ホールの通路から男が出て来て、散弾銃を光男に突き付けながら近付いてきた。
???「お前ら何しにここに来やがった!?」
光男「だからさっきも言った通り!観光でこの都市に立ち寄って、このホテルを紹介してもらったので…今夜はここで一泊だけさせてもらおうと思いまして……」
???「だったら証拠を出せ!!紹介状か何か持ってるはずだろう!!?ペテン師め!!」
すると光男は左手を上着のポケットに入れて、例の手紙を男に渡した。男は無理矢理手紙を奪い取ると光男に銃口を向けたまま距離を取り、手紙の文字を読み始めた。
???「……なんてこった…これはマーカスの字じゃねぇか…『親愛なる我が友エリックへ』…確かに俺宛だ…お前らこれを一体どこでーーーー」
ドカァァァン!!!!!
一同「「「「ああああああああああああああああ!!!?」」」」
突如ホールの玄関のガラスを吹き飛ばす大爆発がホテルの前の道路で鳴り響いた。三人は身体を伏せていたのが幸いして熱風を背中に浴びただけだった。しかし、銃を持った男は強烈な爆風に身体を吹き飛ばされ、壁に叩きつけられていた。
光男「〜〜〜〜っ!あっち〜〜!!」
竜賀「〜〜〜っ!!何なんだ一体!!?」
源太「おやっさん!!竜賀!!さっきの人は!?」
竜賀と光男は源太の言葉にハッとして頭を上げると目の前で痛みに苦しむ男の姿があった。
光男「!!?大丈夫ですか!!?」
竜賀「おじさん!大丈夫!僕の声聞こえてる!?」
光男が男の安否を確認すると、苦しそうな声を漏らしながら男は目をゆっくり開けた。
???「いきなり…耳元で大声出すんじゃねぇよ…死んじゃいねぇよ、大丈夫だ」
男の意識がはっきりしているのを見た二人はほっとしたが玄関口から怪し気な笑い声が聞こえてきた。
???「ヒヒヒヒヒヒヒ……おい見たかグレイブ?アイツらの間抜けな姿?」
グレイブ「そうだなジェイコブ…やっぱり爆発は薬物並にスカッとするなぁ」
源太が光男に近付いて、炎の中から出て来る不気味な2つの人影を目を凝らしながら見ていた。
すると炎の中から二人の大男が現れた。両方とも顔立ちや体格、褐色の肌色がそっくりで、片方は顔が右半分刺青を入れており、もう片方は顔の左半分に同じ様な刺青を入れていた。
光男「アンタらは一体何者なんだ?」
グレイブ「ワァーォ!今の爆発で生きてられる奴がいたのかよ?ラッキーだったな?今から楽しくあの世にいけて?……俺の名はグレイブ・トンプソン!そしてコイツは俺の双子の弟…」
ジェイコブ「ジェイコブ・トンプソンだ!二人合わせて『マッド・トンプソン兄弟』って呼ばれてんだ!」
源太「何でこんな非道な真似ができるんだよ!!?」
頭から血を流す男を見ていた源太が怒りで唇をワナワナを震わせながら双子の兄弟に聞いた。
グレイブ「何で??そんなモン自分の能力を試してみてぇからに決まってんじゃねぇか?」
竜賀「……はぁ?」
ジェイコブ「兄貴…コイツら何か怒ってねぇか?意味分かねぇぞ?」
竜賀「…だったらもっと阿呆でも解る様に言ってやろうか?……何の罪もない無関係な人間をこんな風に巻き込んどいて…テメェら何ヘラヘラしてんだよって言ってんだよ…!!」
竜賀の言葉は静かではあったが怒りを孕んでいた。竜賀の怒気が周りの空気を徐々にヒリヒリさせていった。
ジェイコブ「……ハァーーン?…怒ったか?そんな無適能者のゴミの為によ」
竜賀「どういう意味だ…?」
グレイブ「弟が言ってんのは……能力もねぇ癖に偉そうにしてるそんなクズを心配してんのが頭クルクルパーだってことさ!そうだよな?」
グレイブの言葉に頷き嘲るようにニヤニヤしているジェイコブを見て、竜賀と源太は拳を血管が浮かび上がるほど強く握り締めていた。ワナワナと身体を震わせる二人を見た光男は怪我をしている男に向かって話かけた。
光男「あのーエリックさんでしたっけ?」
エリック「あ、ああ…そうだ…俺はエリック・ブラックだが…」
光男「Mr.ブラック?良かったらあのクソ失礼な双子を内の息子達が成敗しますけど」
エリック「バカな!やめておけ!アイツらは歴とした適能者だ!強さも並じゃないんだ!悪いことは言わん!早く逃げろ!殺されてしまう!!」
光男「その代わりといっちゃなんですけど、今夜俺達三人をこのホテルに泊めさせてもらえませんかね?」
エリック「何を馬鹿なことを…!!」
光男「大丈夫です…内のガキ共はちゃんと強いですよ」
心配そうな顔をするエリックとは裏腹に笑顔を見せる光男は竜賀と源太に向かって、行けと言わんばかりに目配せをした。
ジェイコブ「おいおいグレイブ、アイツら俺らとやり合う気らしいぜ?」
グレイブ「上等じゃねぇか…能力を他人に向けて試し撃ちすんのは禁止になっているが…相手がこっちに歯向かってきたんなら話は完全に別だからな」
ジェイコブ「正当防衛って奴か?ヒヒヒヒヒヒヒヒ…」
トンプソン兄弟はまるで獲物を見つけた様に舌舐めずりをし、グレイブは右手から、ジェイコブは左手から伽鍵礼符を生み出した。
グレイブ・ジェイコブ「「伽霊覚醒!!」」
グレイブは身体が緑色に輝き、ジェイコブは青く輝き出した。
源太「だったらこっちも…」
竜賀・源太「「伽霊覚醒!!」」
竜賀は身体が青く輝き、源太も身体が赤く輝きだした。四人の間には異様な緊張感が漂い始めた。
竜賀「表へ出ろ…そこで相手してやる」
グレイブ「いいぜ……」
外の車の通らない道路で向かい合う様に立った四人は構えを取って戦う空気を纏っていた。
竜賀「俺達が勝ったら、もう二度とローグには近付くな」
ジェイコブ「ああ、言いぜ…ただし俺らが勝ったらテメェら四人共能力試しのサンドバック扱い決定だからな?」
源太「煮るなり焼くなり好きにすれば良い…」
グレイブ「決まりだ!」
グレイブの言葉を最後にジリジリを空気を焼き切ってしまう様な緊張が四人を支配した。
そしてーーーー
ジェイコブ「…行くぞオラァァァ!!!!!」
一番最初に動き出したのはジェイコブだった。左手から伽鍵礼符が現れ青く輝いたと次の瞬間、光は大きな鎖鎌となった。その鎌の切先は竜賀の首を目掛けて投げ込んで来た。
竜賀「ッ!!?」
竜賀は咄嗟に身体を屈めて避けながら前転しながらジェイコブに飛び込んだ。しかしジェイコブの左手にはもう1つの鎌が握られていた。
ジェイコブ「甘えええっ!!!」
源太「竜!!?」
ジェイコブの鎌の刃が今度こそ竜賀の頭に当たる。誰もがそう思った瞬間、竜賀の右手から鞘の付いた刀が現れた。竜賀の刀はジェイコブの左手を外側から思い切り強打し、鎖鎌をぶっ飛ばした。
ガンッ!!
その直後グレイブが源太目掛けて襲いかかってきた。源太もそれに応戦していた。
グレイブ「余所見をしてると寿命が縮むぞ!!」
源太「縮むだと!?当ててからものを言えや!!」
ドンッ!!!
源太に掴みかかろうとしたグレイブの腕を手繰り寄せ、一本背負いの姿勢に入りグレイブを地面に叩きつけた。
その様子を遠目で見ていた光男は弟子の成長を見守る師匠の顔で竜賀と源太を見ていた。
エリック「まさか…あのトンプソン兄弟の攻撃をものともしないなんて……あの子達は一体…」
光男「ブラックさん、まだまだですよ」
エリック「え?」
光男「アイツらは確かに適能者です…しかし、伽霊能力を発動させられるから強いとは言えないんです」
エリック「なに!?」
光男「こっからですよ…アイツらの本当の凄さは」
To Be Continued
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