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無料塾が人をつくる|第2章-3|皐月秀起

全面的に非を認める

練習に来なくなってから4~5日経ったあとに、私は2年生に対して頭を下げ、全面的に自分の非を認め、練習に復帰してもらいました。キャプテンという立場を利用して、理不尽な罰走を強要したことを心から反省しました。私がどう思っていようが、私を擁護する人がいなかったという事実に納得するほかありませんでした。

2年生が練習に復帰してすぐの週末に練習試合がありました。久々に全員が揃ってのウォーミングアップで、同じ3年生が「あー、前よりいい雰囲気になってきたな」という一言が聞こえてきたとき、目から涙が溢れました。涙ってじわじわ出るだけでなく、どばーっとあふれ出ることもこのとき初めて知りました。

練習ボイコットから学んだこと

結果的に、最終学年の最後の大会は県大会にも進めず、引退となりました。今回の一件が影響したかどうかは分かりません。今振り返ると、あのときは明らかに自分に慢心がありました。実績とキャプテンシーさえあれば周りは勝手についてくると明らかに思い上がっていました。信頼されてこそ、周りはついてきてくれる。リーダーとしての未熟さを思い知らされました。

もう一つ、「本当に追い込まれたときにこそ、本当の人間関係が分かる」ということを、この時期に経験できたのはとても貴重でした。何事も順調なときは表面化されないけど、今回のように窮地に陥ると、周りは見事なくらいさーっと引いていきます。それまで眠っていた不満なども次々と表に出てきます。

私を擁護する人はいなかった中、唯一「後輩の指導をお前に全部任せて悪かった」と言ってくれた3年生がいました。これは本当にうれしかった。真っ暗闇の中の唯一の光明でした。

ほろ苦い高校時代の思い出ですが、以降の人生の大きな糧になりました。

2試合連続で大きなミス

大学もそのまま関西学院大学経済学部に進学しました。体育会サッカー部に入り、引き続きサッカー中心の大学生活でした。2回生の途中からに正ゴールキーパーのポジションを掴み、試合に出るようになりました。

しかし、いい時は長続きしません。3回生の春のリーグ戦で、初戦と第2戦続けて自らの凡ミスから失点してしまい、1年にたった2回しかない公式戦の一つを自分のミスでぶっ潰してしまいました。第3戦からはレギュラーから外され、当時チームに6人いたキーパーの中で序列6番目に陥落しました。

確かに落ち込みはしましたが、「誰のせいでもなく自分が下手くそなのが悪い」と原因もはっきりしており、こつこつ練習して、いいプレーをして信頼をまた勝ち取っていくしかないと、次を向いていました。夏も、下部リーグの大会で実績を残し、秋のリーグ戦で再び先発メンバーに復帰できたことはとてもうれしかった記憶があります。

サッカー以外への興味が沸々と

サッカー中心の学生生活ではありましたが、「サッカーだけでいいの?」とも思うようになっていました。2回生のときにサッカーのプロリーグである「Jリーグ」が華々しくスタートしましたが、私自身はとてもプロになるような実力ではなく、どこかに就職はするのだろうなとぼんやり考えていました。1回生の早い段階から、少しずつサッカー以外に目が向くようになっていました。

年末年始の纏まったオフを利用しては、アルバイトで溜めたお金で、1回生のときにはアメリカとカナダに、それ以降も韓国や欧州(ドイツ・イタリア・フランス)にも行きました。中学生のときに、インドや東南アジア(香港・シンガポール・タイ)にも行っていたので、同世代の中で外国には比較的慣れていたほうだと思います。この頃から「海外で暮らすってかっこいいなあ」とぼんやりと憧れを抱いていました。

さらに、キャンパス内で面白そうなセミナーを見つけては、商学部など他学部にも足を運んだりしていました。大学の授業以外に、もっと自由に興味があることを勉強できる場所があったらいいのにと、おぼろげながら思っていました。この思いが、リーダーズカフェをつくる動機になったように思います。

3回生から始まるゼミも、当時経済学部で一番厳しいと言われていたゼミに入り、サッカー部の仲間からはかなり呆れられました。意識高い系の学生の中に1人ジャージ姿で、異彩を放っていました。自分としてはかなり背伸びをしつつも、サッカー部と違う別の自分の居場所ができ、とても居心地が良かったです。一つの組織やグループにどっぷり漬かるよりも、複数に属していろんな友だちができる方が自分には合っていました。

そういえば、中学生のときもサッカー部に属しながら、キーパーの反射神経を磨きたくて、主将をやっていた卓球部の友人に頼み込んで、朝練に参加させてもらっていました。あとは、メンバーが足りないと聞き、グリークラブやハンドベル部、図書部などにも首を突っ込んでいました。興味があれば何でもやらせてくれる、自由な校風が今から思えばとてもありがたかったです。

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