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十字軍遠征は最初からエルサレム奪還がねらいじゃなかった⁉


“十字軍”!
名前がかっこよくて世界史をかじった学生なら誰もが覚えている単語ですよね。
しかし彼らのやったこととなると、なんだかよくわからない。

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世界史では、十字軍は、キリストの聖地であり、
イスラム教が支配していたエルサレムを
奪還するための軍隊と習いますよね。

ですが7回200年にわたって行われた十字軍は、
エルサレムを奪還しても長く統治ができなかったり
途中でエルサレムが目的でなくなったり、
一貫してそうで全体がみえにくい。

そのグダグダ感は、将軍争いで10年殺し合った応仁の乱をスーパー・グレードアップしたみたいだ。

この曖昧さはイスラムの軍隊が強かったからとか
補給線が拡大しすぎたからといった
戦略的理由だけではありません。

もっと十字軍って政治的で、
どろどろした意図があったのではないか。


先日受けた講義で教授がとても興味深い仮説を立てていました。
十字軍の目的がそもそもエルサレム奪還になかったという説です。どういうことでしょうか。

今回の記事では、キリスト教史で最も有名かつ最大の汚点でもある十字軍のもう1つのねらいについての仮説を考察していきます。

人物や事件については大幅にはしょりました(というかまだ勉強不足)のですぐ読めます。


◆まだまだ権力のない王


ローマ帝国が瓦解した後、ヨーロッパは数百年、文化的に後進国になります。かつてのきらびやかだった都市には草が生い茂り、まさにつわものどもが夢のあと状態。

識字率もかなり低く、文化間の交流もほとんどなかったようです。

そんななかあらわれるフランク王国などの王様たち。

中世のヨーロッパは王が絶対的な権力をもってはいませんでした。
貴族が日本の戦国大名のように力をもってドンパチしてて王は統治するのがやっとだった。
多分、なめられてた。

王は国家を統一したいのだが、
貴族が言うこと聞きません。

そこで王はキリスト教と手を結びます。


◆王権神授説


「王の権力は神さまから与えられているんだよ。逆らったらいけないんだよ。地獄行きだよ。」とキリスト教の教皇に言わせたのです。これが王権神授説なんていいます。

効果てきめんでした。
「いやだ!地獄行きたくない!」と思った貴族は戦争をやめて王に従いはじめます。
それだけ当時の人々にとって来世の願いは切実だったのです。


王さまは国を平和に治められる。キリスト教は布教ができる。Win-Win な関係ができて両者はズブズブになっていきます。

ここで終わればいいのですが、そうはいかなかった。
貴族は戦争につかっていたエネルギーを発散できなくなったのでイライラが募ります。
今まで使っていた兵力や武器がほとんど不要になってしまったのですから。
戦いたい。でも王に背けば地獄に行く……


◆貴族エネルギーの発散

王はほっとけなかった。
このままでは内乱が起こるかもしれない。
なんとかして余分なエネルギーを発散させなければいけない。

どっかの国で戦争はダメだと叫んでおきながら、大量の兵器が使わず劣化してしまうので、戦争ふっかけている状況と似ていますね。

そこで着目したのが、当時イスラム教に奪われていた聖地エルサレムを奪還することだったのです。言ってみれば合法的に殺人ができる口実ができたのだ。

第1回十字軍を主導したウルバヌス2世という教皇がいます。

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ウルバヌス2世(1042-1099)


彼は現フランスのクレルモン=フェランで伝説的な演説をしたのですが、どうやら演説中アドレナリンが上がりきってしまい本音がちょろっと出てしまったようです。

「神の子のみなさん、ヨーロッパは貧相で狭い。こんなところで争ってはいけません。あのいまわしいイスラム教徒をたおして土地を奪い返しましょう!”乳と蜜の流れる国”は、神があなた方に与えたもうた土地なのですから!

神の名を借りた、よりタチの悪いジャイアニズムですが、こんなようなことを演説してしまったようです。

貴族のエネルギーも適度に消費できた王はますます権力を強めていく。
のちの絶対王政に繋がっていくのです。

あとになって振り返ってみるとキリスト教の最大の汚点の1つとなってしまった十字軍。家を焼き、ものを盗み、何万人という人を殺してしまった。

その背後には政治的な理由もあったのですね。

◆まとめ


①中世のヨーロッパ貴族は戦士だった
②王は貴族を束ねるのに苦労した
③キリスト教と手を組んだ王は神の名のもとに貴族を束ねることに成功する
④貴族の余剰エネルギーの発散に王は悩んだ
⑤そこで目をつけたのがエルサレム奪還だった

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