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辛い過去も、解釈をリサイクルすれば壁を越える道具になる 第4話【エッセイ】

1、楽しいの否定、再び

高校に入ると、成績はクラスで中の上ぐらいになっていました。別に勉強ができるようになったわけではなく、学校のレベルが低かったから、というオチです(今はもう少し偏差値高いはず)。

人間関係は相変わらずで、強固な壁を作っている私は、友達と遊ぶということもあまりなく、帰宅部だったので、家にこもってゲームをしたり、絵を描いたりすることがほとんどでした。

絵に関しては、かなりハマっていて、好きな漫画のキャラを描くだけでなく、自分のオリジナルキャラを作ったりもしました。設定らしい設定は考えていませんでしたが、そういった想像力は、物語を書く現在の自分に繋がっていたように思います。

当時描いた絵はもう残っていませんが、取り柄のなかった私からすると上出来で、絵を描いているときは本当に楽しかったものです。だから、心の内を見せない私が、これどうかなと、自分の描いた絵を家族に見せたりもしました。

が、もうお察しかもしれませんが、反応は冷淡なものです。へえ、ふ~んという後に、そんなことより勉強を……という言葉が続くテンプレリアクション。

兄は、家にこもってそういう漫画っぽい絵ばかり描くのは気持ち悪いから、もっとリアル系の絵……本物の人間を模写とか風景画とか……を描けよと、CDジャケットのアーティストの写真を例に出してきたりで、やっぱり見せなければ良かったと思ったのは言うまでもありません。

ここで、好きなんだからいいだろ言えないのが、当時の私です。自己否定に満ち溢れ、しょっちゅう『自分はダメ人間物語』が脳内で再生される私は、自分よりも兄のほうが正しいのだろうと考え、言われたとおりにリアル系の絵も描きました。しかし、漫画っぽい絵を描いているときに比べれば楽しくなく、なんのために絵を描いてるのか分からなくなり、やがて描かなくなりました(今はたまに描いてます、趣味として)。

2、音楽との出会い

やることと言えばゲームだけになってしまった頃、音楽に出会うことになります。キッカケは、兄が持っていたBOOWYのビデオ。

当時、BOOWYは解散して年数が経っていましたが、私は彼らのライブをビデオで見て、あまりのかっこよさに衝撃を受け、氷室京介さんの真似をして歌うようになりました。今でも動きを真似して歌えるぐらい、何度も見たものです。

しかし、ここでも私のメンタルがブロックになります。歌うことは楽しい。バンドもやってみたい。そう思っても、たとえばクラスメートに声をかけてバンドやろうとか、楽器をやっている人間を見つけて入れてくれという勇気もありませんでした。

結果的に、兄が昔、一緒にバンドをやっていた友達に声をかけ、私がボーカルとしてコピーバンドをやったりはしましたが、スタジオで練習するぐらいで、ステージに立つことはなく、私はただ歌うことが楽しくて歌っていただけでした。心の底では、ビデオで見たライブように、人に見てほしい、人前で披露したいという気持ちもあったと思いますが、ステージに立って歌うなど、リアルに考えれば不安と恐怖しか浮かばなかったでしょう。

これといったこともないまま高校生活は過ぎていき、高校3年になると、当然進路の話が出てくるわけですが、私は大学にはいけませんでした。いかなかったではなく、いけなかった、です。

そもそも進学校ではなく、卒業したらほとんどの生徒が就職するような学校。一部の上位が大学に進学するぐらいで、私はその上位に入っていませんでしたし、家庭の事情もありました。

音楽の専門学校に行きたいという思いもありましたが、親はいわゆる「手に職がつくような学校以外はダメ」という考えで、親という立場と、親の私に対する評価を考えると、そういう判断になるのは自然だったと思います。

本当に行きたいと思うなら、バイトしまくるなりにして、自分で進学のための金を一部でも稼ぐとか、そういうやり方もあるわけですが、自己否定だけなら誰にも負けない(ONE PIECEのウソップのように、ネガティブで俺に勝てると思うな的な)という当時の私に、そんな発想は出てきません。

そして就活の時期、私は学校側から提示された就職先の中から一つを選び、集団面接(これ嫌い(笑))を経て、卒業後は社会人として働きだすことになります。

メンタルの問題は何一つ改善しないまま、何が問題なのかも分からないまま、頑張ってるだけでは評価されない未知の環境へと……

3、今回のお話で「こうしたほうが良かった」重要ポイント

今回書いた中で、これはこうしたほうが良かったという部分を上げておきます。

偽りの自分を作り、人に一切弱さを見せなくなった当時の自分について、です。

仕事だと本音を出せないことは多々ありますが、自分のキャラを偽るとストレスが大きく、長期的に見るとうまくいかないそうです。そして弱さを見せないことは強さではなく、弱さを受け入れ見せられることが強さ。助けてほしいと言えることのほうが、強いのです。

犯罪行為でもなければ、ちょっと変わってるなという個性でも、それを受け入れてくれる人はいます。みんなに好かれることは難しいですが(みんなに好かれようなんて考える必要もない)、素の自分を出して、全員に嫌われるのも難しいもの。

改善したり、角度を変えて見て強みとして使ったりすれば、ダメなところもただの弱点ではなくなります。素の自分を見せても付き合える人と付き合っていけばいいだけです。

物語のキャラも、良いところもダメなところもあるからこそ個性が出るし、人間味が出るし、だからこそ親しみも湧きます。

私たちも同じです。
良いところもダメなところも含めて自分。
それでいいんです。

次回は社会人となってからのお話。
散々な状態が続いてますが、ようやく今に繋がるターニングポイントが訪れます。

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