見出し画像

エステバンの怖いもの

戦国時代。豊後の大友家。当時、キリスト教が大友家の家中に広まっており、大友宗麟の正室の奈多夫人は、娘がエステバンというキリシタン少年に対して、仏寺へ護符を取りに行くよう頼んだ際に拒否されると、棄教しなければ死罪にすると、この時、家督を継いでいた長男・大友義統に命じたことがあります。
さすがに、大友宗麟が仲介してキリスト教の少年は無事でしたが、キリスト教と敵対する奈多夫人を、宣教師らは、イスラエル国王のアハブの妃で異教を崇め、預言者エリヤを追放した女性である「イザベル」と呼ぶようになったと言います。これはその時、拒否したエステバン少年の話。

暇をもてあました侍従の若者が数名集まり、それぞれ嫌いなもの、怖いものを言いあっている。
侍従A「俺は『幽霊』が怖い。」
侍従B「俺は『クモ』。特にセアカゴケグモがいると考えるだけで怖くなる。」
さらに「ヘビ」「コウモリ」「毛虫」「フグ」と言い合う中
エステバン「みんなくだらないものを怖がるなあ。世の中に怖いものなどあるものか。あー情けない。」
とつよがっている。

侍従A「おいおいエステバン。怖いものはないのか?」
エステバン「あーおらに怖いものなんてないだよ。キリスト様のご加護があるからね。」
侍従B「この前お使いを断って殺されかけたくせに。怖くなかったのかよ。」
エステバン「あんなのは怖くもねえ。ちょっとちびったけどな。」

侍従のみんながやいややいやと騒ぎ立て「嘘をつくな」とエステバンを問いたてた。
侍従A「本当に怖いものはないのか?」
と聞くと、
エステバンはしぶしぶ「本当はある」と白状した。
侍従B「では、何が嫌いなのか?」
と念を押され、エステバンは小声で
「つる〇の甘酒まんじゅう」とつぶやく。侍従が聞き直すと
エステバン「つ〇や甘酒まんじゅう。10個で390円。ああ。考えただけで身震いがする。」
エステバンがガタガタと震えだした。
エステバンはその後、「甘酒まんじゅうの話をしているだけで気分が悪くなった」と言い出し、隣の部屋で寝るといって部屋から出て行ってしまった。

残った侍従たちはエステバンのその姿をみて、本当に怖いのだと信じてしまった。
侍従A「あいつは気に食わないから、まんじゅう攻めにしておどろかしてやろう。」と、金を出し合い、〇るやに行き。まんじゅうをたくさん買いこんでお皿に山盛りし、エステバンの寝ている部屋へ運び込む。
目覚めたエステバンはまんじゅうを見てびっくりする。
エステバン「わああっ。まんじゅうだ!わーい。いけね。こわーい。つ〇やの甘酒まんじゅうじゃないかああ。」
エステバンの声を聞き、侍従たちがこっそりと部屋をのぞく。
エステバンはひどく狼狽しているのかと思うと。ニコニコして小躍りしている。
エステバン「ああ。こんな怖いものは見たくもない。こうなりゃ、食べてしまって、なくしてしまおう。」
エステバンは大きな声でそういうとお皿に盛った甘酒まんじゅうを一つ口に放り込んだ。
エステバン「うん!うますぎて、怖い。」
などと言ってまんじゅうを全部食べてしまった。
侍従B「うん?!どうやらだまされたようだ!ちっきしょう!」
一部始終をのぞいて見ていた侍従たちは、だまされてまんじゅうを買わされていたことに気付く。怒って部屋になだれ込みエステバンを問いただした。

侍従A「お前が本当に怖いものは何だ!」

エステバン「このへんで、濃いお茶が1杯怖い。あ、ちょっとぬるめのやつね。」

エステバンの怖い物でした。


よければサポートお願いします。