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交通事故分析ー進路変更? 直近左折?

行政書士の東浦です。さて、今回はタクシー会社の方で対応している交通事故について解説&検討をしてみたいと思います。相手方保険会社と思いっきりバチバチ中の案件につき、「争いのある」案件、つまり行政書士としては請け負えないやつですね。今回は兼業である自社タクシー会社の案件なので思う存分バチバチやっております。まずは事故の概要から!

甲タクシー車両は乗客の指示で道路右側の施設へと入場するためあらかじめ道路中央に寄り右折合図を出していたところ、乗客が「ごめん、右じゃなくて左だった」と指示を訂正、甲の運転者はその指示訂正に従い合図を消し、左合図へ変更、安全確認の後に左にハンドルを切ったところ、中央寄りにあった甲車両を左側から交わして前方へ出ようとした乙車両が速度を上げながら進行してきており甲車両の左前部と乙車両の右前部〜右Frドアが接触。本件交通事故による負傷者はなし。


赤=甲 青=乙 黄色=甲が入りたかった施設

絵が酷いのはあまり気にしてはいけません。と言うことで本件交通事故を少し検討してみます。本件交通事故で問題になるのはまず判例タイムズ的に見た時にこれは「進路変更」の事故であるのか、それとも「直近右左折」の事故であるのかです。どちらにしても進路を変更、あるいは左折動作を行っている甲車両の過失が大であることは間違いないのですが、進路変更と直近右左折では通常、過失を修正するポイントが異なり、その捉え方によっては双方の過失のバランスが大きく異なることにもなるため、それなりに揉めるタイプの事故と言えるでしょう。甲車両の側からすれば合図を適切に出し直している(ドライブレコーダで確認が取れています)以上、乙車両の前方注視や見通しが甘かった(だろう運転)部分についてある程度の過失責任あり、という立場です。一方の乙車両はすでに自分の車がその進行(左から甲車両を回避)を開始している以上、甲の動き方は予測が難しいものだった、よって自車(乙)過失は限りなく小さいものである、という立場です。

乙車両側保険会社は判例タイムス137図ー事前準備がない右左折を準用した上で甲車両の合図遅れ並びに直近右左折による修正を主張、甲95:乙5で出してきました。一方で甲は、施設入場に対して直ちに137図を適用することが当該判タ図の趣旨に合うものとは考えない旨を主張しました。137図は交差点での挙動であることが前提となっており、交差点である以上は甲乙双方に交差点安全進行義務が課せられる、そのことが過失判断上でもそれなりにウエイトを占めているはずであると考えます。本件交通事故は確かに双方車両の位置関係は137図のものと類似していますが、137図はそもそも「右折しようと思ったけれどやっぱりやめた」のような動作を想定しているものだからそもそも進路変更を厳に慎まなければならない交差点直近や交差点内の挙動を想定、よって今回事故には関係ない、と言うことですね。
進路変更の交通事故は判例タイムス153図にありますが、甲車両側は153図の基本過失割合70:30で主張いたしました。本音で申し上げれば153図修正で乙車両の速度超過を強調したいところですが速度感が微妙なところで不毛な争いになる可能性がありそうだったのでその点の主張は控え、修正なしとしました。また、補強的な主張として、仮に137図を適用した場合は基本過失である80:20に対して乙の著しい前方不注意と速度超過15Km以上で20%の修正、一方で甲の直近右左折を認定、合図遅れを否認して10%の修正、結論70:30で153図と同じ結論となる旨を主張いたしました。

このような判例タイムスの図が直接的にはまらない、特に「どちらとも言える」ような案件は大体が揉めます。そして、訴訟で争うほど損害額が大きくないケースでは双方ともに言いたいことだけを言って最終的に塩漬け案件化、最終的に1年ほど経過すると長期案件を解決する専門部署のようなところが出てきて再交渉しながら解決の道を模索していくこととなります。今の所内では(甲側)折れるつもり皆無。相手の出方を待つところですがそれほどおかしな主張はしていないつもりでおります。さあ、この先どうなるか。また解決しましたらブログ上でも触れたいと思います。

このような、ちょっとややこしい案件こそ、まずはプロにご相談ください。行政書士東浦事務所では案件として受任できるかどうかの判定も含め、まずはお話をじっくりお伺いするスタンスです。相談は無料ですのでお気軽にお声がけいただけましたら幸いです。

と言うところで本日は以上! お疲れ様でした。


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