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元作詞家の恩師たち「Being/学校 ③」

マリオ中島

名誉挽回の登校

 帰宅した私は中島氏の宿題について考えました。自分がこの度このチャンスに何を求めるのか? 細かいことから抽象度を上げてゆくと大まかにテーマは二つ、これを持って翌日早速にノンアポで乗り込むことにしました。
 こういった業界の始業は大凡10~11時、何れにせよその日の調子がつく前にと、早目に伺ったかと思います。ところが行ってみれば御本人は未出社で
予定は午後とのこと。仕方なく一度外に出て食事などしながら時間を潰した記憶があります。そして13時を回ったタイミングで改めての挑戦でした。
「まだ来てない…」と思いつつ待たせて頂くと、間もなく氏がいらっしゃいました。
中島氏は私を見てニヤッとされて、
「おー随分早いね」とデスクの整理を始め、経緯を聞かれ早くに来たことをお話すると、
「早過ぎるよ、俺だって少しは休ませてよ」
みたいなことをおっしゃいましたが、考え過ぎか…幾分そのこと自体には満足されたようなご様子だったと思います。

初のまとも・・・な談義

 私が中島氏にお願いしたのは二点、
① 度々伺い作詞、制作等について色々ご教授頂きたい
② その過程でもしも成長が見られたら是非仕事のチャンスを頂きたい

「そうなの、分かった」
中島氏はBeingというチームでの制作基本精神を諸々話されました。各立場の各人が都度の目標に向け、その能力を惜しみなく出し合って時間と勝負しながら切磋琢磨、最高のモノを作り上げること…必要な時には24時間体制ですぐに集まって作業出来る環境であること…その躍進の裏にある見えない緻密な作業と努力を感じました。
 あと特に印象的だったのは、会話の中終始こちらの内側を覗き込まれ、それを正確に読み込まれているという感覚を持ったことでした。気遣いからか途中途中で冗談を言われるのですが、それに反応する余裕がない程の緊張と
言葉を選んでしまう慎重さを強いられ、しかし結果的には心の内を丸裸にされたような気分さえしました。

パクリに始まりパクリに終わる

 その日最初に中島氏が強調されたのは
「とにかく他人(作家)の良いところをパクれ、その上手い下手で勝負が決まる」
ということ。言葉や表現には限界があり、新しい造語でも持たない限りは皆その範囲で戦っている。極論はその焼き直し合いの中で、如何に自分のフィルターを通して表現するかである。それが所謂パクるということであり、有名アーティストの名を挙げて~や~はパクリの天才だ…とも言われました。
 創作に携わる者としてオリジナリティーに反する、当初はかなり不謹慎な発言にも聞こえましたが、私は追ってそれが全てであることを知ってゆきます。

担任教授の紹介

 最後に、
「俺もさあ、頻繁に相手出来る訳じゃないから、一人スタッフを紹介するわ。これからは彼とやり取りしてよ」
と言われ、ご紹介を受けたのが小松久氏でした。小柄な小松氏はどうやらこの話の流れを既にご存知だった様子で、
「小松です、宜しく」
と一言。次回の予定を頂戴し、実質初回…私のオリエンテーションは終了しました。小松氏が担任を引き受けて下さった訳です。

追 記

 中島氏とは諸々の後日談がありますが、次回からのエピソードを挟んで追って書こうと思います。
 次回から本格的な授業が始まります。

また続きを書きます。

渚のオールスターズ
(当該所属アーティストで構成)

♬  DAY IN VACATION

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