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地域の里づくり

「おせっかいワーカーになろう⑱」

 鍋料理を全く食べたことがない子どもや若者がいて、じわじわ増えているみたいです。たくさんの人と一緒に、調理したり配膳したり、ワイワイ話しながら、あったかい鍋を食べる楽しさは、人の温もりを感じる原点、原風景の一つだと思います。ゴリラ研究の山極壽一先生は「人間だけが食物を分け合って共に食事をする」と述べておられますが、みんなで食べる習慣や文化が日本の家庭から徐々に失われているのです。多くの人が子ども食堂に取り組むのは、何か根源的な不足を取り戻そうとしているのかもしれません。

 子ども食堂は食に関係する、料理や調理法、マナーや食文化だけでなく、様々なものを学ぶ場にもなっています。学習支援や野菜作り、遊び、文化や芸術活動に取り組んでいるところも多いです。

 様々な年齢や立場の人がやってくると出会いも増えます。一人っ子がきょうだいと遊んだり、おじさんに進路を相談したり、母子家庭の子が大人の男性と触れ合ったり、核家族の子がおばあちゃんに甘えたりできます。
色々な経験をもった人がいると、生き方と出会えます。どんな仕事や職業があって、資格や学校があるか、人生のモデルと出会えます。その仕事に就くまでのプロセスや苦労、喜びややりがいの話を聞けます。受験の失敗や失恋やリストラという挫折体験や努力や工夫で困難を乗り越えた成功体験の話も聞けるかもしれません。

 核家族でひとり親家庭も増えている現在の家庭では、どうしても母と子など一対一の閉じた会話になりがちです。色々な年齢や立場の人がいると、たくさんのインタラクションが起こって、様々な話を聴いてくれる人とも出会えます。聴いてもらえる人がたくさんいると、子どもは色々な話ができて、自分の気持ちや考えを整理できやすくなります。

 子ども食堂で食事を中心に長い時間を一緒に過ごすと、自然と叱る、励ます、褒める、慰める、諭すなどの関わりも増えて、だんだん新しいつながりが生まれてきます。子ども食堂は家族を包み込む温かいつながりや人間関係がある地域の居場所になって、いつでも行ける場所になってほしいです。何か困ったら帰っていける、おばあちゃんち(実家)のようなホッとできる居場所になればいいなと思います。そういう場所を新たに地域の『里(さと)』と名付けて活動していくのはどうでしょうか。

          【労協新聞2018「おせっかいワーカーになろう⑱」】

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