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上から目線のエリートは安倍自民党を支持するか?-都内・参議院選挙の比例代表の得票率から見える風景

 よく、野党はなぜ勝てないのか、的な記事がありまして、そこでの答えはたいてい上から目線で大衆の期待に応えないからだ、ということになっている訳です。逆に、TikTokで受ける安倍晋三とかが反例として出されてくる、と。本当にそうなんですかね、と私は訝しく思います。

 アメリカではエリートへの反感からドナルド・トランプの支持が高まった、ヨーロッパでは既存左派への不満から極右に支持が集まっているという話から類推されているのかなと思います。しかしながらそういうのはいわゆる海外を引き合いに出す「出羽守」的な言説であって、ここは日本だぞということを私は言いたいです。

 そこで、ある調査をしてみました。安倍政権になって、自由民主党の絶対得票率の伸びた地域はどこなのか。絶対得票率というのは、有権者数を母数にし、どれだけの有権者が投票したのかという割合です。一般的な得票率は投票者数を母数にします。この指標は、野党の得票数の多少によって、自民党の得票率の数字が左右されてしまうという難点があります。よくいう投票率も各党の絶対得票率の合計でありまして、どれかの党が得票を伸ばさない限り、あがらないものです。

 ここで質問です。武蔵野市とあきる野市、安倍政権になってから自由民主党の参議院選挙の絶対得票率がより伸びたのはどちらでしょうか。武蔵野市は、一般市においては最も豊かな住民が住む、エリートを代表する都市です。ネット上の情報によりますと平均所得は479.87万円、全国9位とのことです。他方、あきる野市は一般的な自治体です。平均所得は313.10万円、全国254位となります。お金持ちの自治体が多い都内では低い方であるかもしれません。

 なぜ野党が勝てないのか論者の言うようなことが正しいならば、安倍政権で自由民主党の得票がより伸びたのは、あきる野市になるはずです。

自民党絶対得票率(武蔵野市・あきる野市)

 上のグラフの青い線があきる野市、オレンジの線が武蔵野市です。武蔵野市の方があきる野市よりやや低いレベルで推移していましたが、2013年に一挙に逆転します。第2次安倍政権の最初の参議院選挙です。

 グラフをよく見ていただくとわかりますが、あきる野市の自民党の絶対得票率は2016年で18.16%で、2001年の20.01%を越えないレベルで推移しているのに対し、武蔵野市の2016年の得票率は20.32%で2001年の17.69%を越えています。この年以前の絶対得票率は計算していませんが、たぶん、参議院の比例代表制が始まってから最大レベルでしょう。武蔵野市では、とても安倍晋三が人気があったということがわかります。

それでは全都的にはどうなのでしょうか。民主党への政権交代前夜で自由民主党の人気がなかった2010年と安倍政権の中で一番得票率の高かった2016年の間の伸びを比較します。

自民党絶対得票率の伸び(2010→2016)

 安倍晋三が得票率を上げた地域は都心と中央線沿線を含めた多摩の東の方かなという感じです。ちなみに1位が中央区の10.50%、2位が千代田区の10.14%、3位が杉並区の9.39%、4位が江東区の9.24%、5位が文京区の8.82%、6位が武蔵野市の8.78%、7位が調布市の8.73%、8位の稲城市の8.20%、9位が品川区の8.15%、10位が国分寺市の8.01%となります。ちなみに11位が三鷹市の7.99%でした。

 所得と自由民主党の絶対得票率の関係を調べてみます。2010年はあまり所得との関係は見られません。2019年になるとグラフが左上向きに上がる傾向があるように見受けられます。ちなみに左の方で高いのは西多摩郡です。農山村部はまた違う傾向があるようです。

2010年自民党絶対得票率と所得

2019年自民党絶対得票率と所得

所得については下記より引用
https://jp.gdfreak.com/public/detail/jp010050005010113000/1

 ここまでの分析でわかることは、都内・特に都市部の安倍晋三人気は所得と関連がありそうだ、高所得であればあるほど、安倍が好きと言えそうだということです。彼の反「知性主義」的な言説から庶民の支持を得ていると思いがちです。しかしながら、過去の自由民主党の首相と大して支持の度合いは変わらない。むしろ、彼が反「知性主義」的な主張をすればするほど、高学歴なエリート達が彼を支持するという、奇妙な現象があったようです。

 この辺は、以下の記事に書いた問題解決志向のエリート達の志向と関係しているのかな、と思います。

 冷静に考えてみると、野党は支持されないのかということを言ってくる方々というのは、かなり上から目線であり、庶民を代弁するエリートの感があります。こういうのを弱者憑依と言うんでしたっけ。

P.S.
 庶民の得票が野党に来ているかというとそうでもありません。高所得であれば旧民主党→自由民主党という流れがあり、低所得であれば旧民主党→棄権という流れがありそうです。

棄権率武蔵野市・あきる野市




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