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編集スパルタ塾|1年もがいて辿り着いた、企画を磨く5つのポイント。

編集スパルタ塾振り返りnoteの後編です。

前編では、編集スパルタ塾がどのような場所だったのか、受けてみてどんなことが得られたのかについて書きました。

後編では、僕が感じた企画のポイントや年間MVPをいただくことができた理由を自分なりに考えてみました。これから編集スパルタ塾を受講される方のみならず、企画に携わる方の参考になれば嬉しいです。

良い企画のための5つのポイント

さっそくこの1年間で良い企画をつくるために大事だと感じた5つのポイントを実際に発表で使ったスライドと共にお送りします!

①ベストにこだわらない。アイデアの量を重視する。

編集スパルタ塾が始まって半年ほど、自分の中で「これだ!」と思ったアイデアがあれば、他の選択肢を考えることもなく、突き進んでいました。

でも、この方法では駄作ばかり積み上がるし学びも少ないので、やめた方が良いです。1案だけで勝負すると、客観性が生まれません。結果として、お題の意図にも添えてないことが多々あります。

これが顕著だったのが、J-WAVE渡邉さんの『「ながら聞き」という言葉を、もっとポジティブな語感に』という課題。

番組パーソナリティに「ずっと真夜中でいいのに。」を起用しよう!というアイデア1本に突き走ってしまいました。

今見返すと、「ながら聞き」を「耳じゃらし」にしようって発想も恐ろしいですよね…。ただ、当時は本気で良いと思っていました笑

(↑J-WAVE 渡邉さん回の課題スライド)

後半はアイデアを最低30案出した中から、アイデアを絞り込んでいくというスタイルに変更。ずっとゲスト賞が獲れず、やり方を模索している中でフィットしたのがこの方法でした。

アイデアノート。「Mnemosyne」のA4無地を愛用してます。

提出時は自信のあるアイデアに絞って勝負するのですが、他の可能性も知っているからこそ、「なぜそのアイデアにしたのか」説明できるようになります。

②センスは知識からはじまる。インプットが9割。

情報のインプットは課題のスタート地点に立つために必要な時間です。毎回Webの記事は読み漁りますし、関連する書籍も平均2,3冊は読んでいました。

知識がある程度蓄えられてくると、ゲストが何を目指しているのか、どんなことが好きなのか、何に課題を感じているのかという傾向が掴めてきます。

課題に関連する本の一部。ゲストの深澤さんがデザインしたペンも買って試してました。

リサーチした内容の中から自分が共感できることや違和感を得たところを足がかりにして課題に取り組むと、どこか体重が乗るものになるのだと思います。

余談ですが、インプットを増やすと、今までよりも世界を楽しむ視点が増えていきます。知れば知るほど、好きになります。

小技も紹介しておくと「ゲスト名 インタビュー」というキーワードで検索すると、ゲストの思想に触れられる記事が出てきやすいのでオススメです!

③伝えすぎても良くはない。ほどよい剪定を。

伝えたいことを山盛りにすると読み手にとっては難解になってしまいます。いかにシンプルに伝えられるかが重要です。

調べたことや考えたことを羅列するとスライドは30ページくらい、多い時には50ページ以上に及びます。

ですが、1つの企画としてはあまりに枝葉が多すぎて、結局何が伝えたかったのか、聞き手にはわからなくなるのです。

「うまく伝わらなかったなあ」というプレゼンはこちら。中村勇吾さんの『リモートワーク社会を前提とした新しいサービス』という課題に対するアウトプットです。

このスライドを見ても、企画の要点があまり分かりませんよね。

そこで必要なのが剪定です。まさに編集の醍醐味とも言えるフェーズ。以下のような問いかけをしながら、企画をシャープにしていきます。

・1番伝えたいことは?
・この企画が、よくある企画と違うのはどんなとこ?
・どこがおもしろいポイント?

最初につくったものを半分にする勢いで剪定すると良いと思います。

上の課題についても、改めて1番伝えたいことを考えると「オンライン飲み会の活性化を図るサービスをつくりたい」ということでした。なので、そのための工夫を落とし込めると良さそうですね。

剪定を丁寧に取り組むほど、クオリティも上がっていくように思います。

剪定するにあたっては、完成後1日以上置いてから見返すと客観的になれるので、スケジュール管理も大事です。

④抽象は絵に描いた餅。かならず具体に落とし込む。

菅付さんのフィードバックにもよく出てくる「具体に落とし込む」ということ。

アイデアはよくても、具体的なイメージがわかない限りは絵に描いた餅でしかありません。アイデアが実現できそうだという感覚を手繰り寄せるのが「具体例」です。

また、具体例は相手の理解を促進するという役割も担っています。

これは葛西薫さんがゲスト回の時に作成したスライドです。お題は『葛西薫さんの次の個展のテーマとプレゼンテーションを考える』というもの。

どんなテーマなのか、に加えて、実際に展示する作品までスライドに盛り込むことで、実現できそうと思えますし、テーマに対する理解度も膨らみます。

具体例は伝えられることが少ないと思われがちですが、むしろ逆。多くを伝えることができるものなのです。

⑤思った以上にパクれない。積極的に真似をする。

自分だけでアイデアを考えているならば、それは驕りです。もっと世の中に溢れる最高のアイデアをパクりましょう。

とはいえ、当たり前ですがアイデアをそのまんまパクるのはNG。パクるのはあくまで別の業界や、別のジャンルからというのは良識の範囲で。笑

良い企画 = 良質な既存アイデア × テーマの核」です。

与えられたお題に対して、別の業界の成功事例からインスピレーションを持ってくると、短期間で良質なアウトプットにつながります。

唯一ゲスト賞をいただくことができた博報堂の雑誌『広告』編集長である小野直紀さんの回。『雑誌「広告」の「倫理」特集号の装丁・販売方法を考えてください』という課題でした。

この回で、パクることの素晴らしさを体感として得ることができました。

この企画では何をパクったかというと、表と裏がどちらも表紙になるという本の装丁アイデアです。

以前買ったMONO GRAPHYという写真集。これが両面表紙という装丁だったんです。(馬喰町にも店舗があって、とても素敵なのでぜひ。)

このアイデアを、「倫理」における『正義の反対は、また別の正義』という意味合いに掛け合わせました。

それがピシャリと融合したことで、小野さんからも高評価をいただくことができました。

振り返れば悔しさばかり。どうして年間MVP?

この1年間、悔しい結果ばかりでした。結局ゲスト賞をいただくことができたのは、最終プレゼンの1個前のとき。

だからこそ、各回ではゲスト賞と比べた時に何が足りなかったか、考えました。回を重ねていくと、これがゲスト賞になるなって企画が分かるようになってきますし、実際にそのプレゼンがゲスト賞を取ることが多いです。

ゲスト賞を取るプレゼンというのは、課題のコアを抑えながらも、アイデアが既存のものからはかけ離れているもの。この感覚はまだ明確に言葉にできていないので、気になる方はぜひ受講して感じてみてください。

良い企画に対しては「うわ、そんな考え方あるのか」「これはやられたな」という気持ちが芽生えるのですが、その差を埋めるためにオススメなのが次の取り組み。

年間MVPに近づけてくれたひとつ目の要素です。

①フィードバックの目線を持つ

毎回、自分以外にも6~7人が発表します。それぞれの発表もおもしろいのですが、その後がポイントです。

ゲストからどんなフィードバックが行われるかを自分なりに考える、これが成長に役立ちました。実際のフィードバックと照らし合わせることで、一流との差分を知ることができます。

そこで感じた差分を咀嚼して、次のアウトプットに反映する。それを繰り返すうちに、感覚がブラッシュアップされていきます。

これも菅付さんがよく仰っていることなのですが、「つくり手目線に立つことが大事」だと言います。

この応用で「自分がゲストの立場なら、どんなフィードバックをするだろう」を考えるのは良かったなと思います。

これは日常にも活きることで、「この雑誌は自分がつくり手だったら何を取り上げるかな?」「この写真はどう撮ったのかな?」を考えていくと、視点が増えていきます。

次のふたつは取り組むスタンスにまつわるところです。

②とにかく打席に立ち続ける

1年間で分かった強みが「ジャンル問わず、ヒットを出し続けられるアベレージ力」です。

編集スパルタ塾では、幅広いジャンルを対象に格闘していきます。雑誌の編集だけでも、文芸誌があればカルチャー誌もある、政治や哲学を扱う雑誌もあります。

さらに、雑誌のみに限らず、編集の対象は小説やプロダクトデザイン、CMやWebサービスにまで及びます。多岐に渡るジャンルに取り組むため、今まで知っていたことだけでは到底太刀打ちできません。

そのため、リサーチが必要になります。そのプロセスを楽しめる人はきっと打席に立ち続けることができるのだろうなと思います。

マインドマップツールに情報を集約。目に見える形になると楽しみやすくなります。

それと同時に、どのように時間を捻出するかというセルフマネジメントも重要です。

1年課題を出し続けることができたコツは、課題が発表されたタイミングで関連書籍を買うことです。本さえ届いてしまえばこっちのもん。意識が自然と課題に向かいます。

ちなみにプレゼンができなかった高崎卓馬さんの回では、準備期間に乗鞍→岐阜→名古屋→大阪→高知と11日間ほど家を空けていた時期と被り、時間が十分に確保できなかったことを自覚しながら提出した課題でした。

時間がない中でやっつけの課題を出しても、菅付さんには見破られています。裏を返すと、ちゃんと考えた課題はしっかりと評価してもらえているのだと思います。

③楽しむ気持ち

なんだかんだで、楽しんでやるに越したことはありません。

きっと隔週の編集スパルタ塾の日を誰よりも待ち望んでいたのは僕ではないかなと思っています。きついことはたしかなのですが、それ以上にとても楽しい時間でした。

新しい世界をなかば強制的に知れることや、自分のアウトプットを一流ゲストに対して、試すことができること。今振り返ると、とんでもなく非日常的で贅沢な時間でした。

それに加えて、日常における「気づきの感覚」が研ぎ澄まされた感覚があります。新しく得た知識から、自分の好きの触手が広がっていったり、いつの間にか視点が増えていたり。

例えば、1年前にはそもそも雑誌すら読んでませんでしたが、今ではBRUTUSに限らず、FUDGEやVOGUEなどの雑誌にも目を通すようになりました。

他にも、写真1枚1枚がどのように撮られたか気にするようになったり、雑誌の編集点に感心することが増えたり、本も中身だけでなく装丁にまで想いを馳せるようになりました。

何度も言いますが、知ることは、今よりもっと世界を楽しくするためのスパイスです。もしこれから受講する方は、今までよりも知識に貪欲になって、楽しさを増やす1年間にしてください!

本当にオススメなのでぜひ!

編集スパルタ塾は「スパルタ」といいつつも、すごく愛に溢れている場所だと思います。

初回の講義を受けたときの印象では、菅付さんはストイックで取っ付きにくい方なのかと思っていました。

でも、この1年が終わって思うことは、面倒見がとても良くて、だけどちょっぴり不器用な方なのかなということ。(もしかしたらご本人も見てくださるかもしれないので、躊躇しながら書いています笑)

オンライン受講だったので、菅付さんと対面したのは2回だけですが、それでも受講生への愛情を感じました。

だから続けたいと思えたし、こうして長文のnoteを書いてまで薦めたいと思います。

第10期も4/12に初回が開講されます。ピンと来ているのなら、飛び込んじゃった方が良いと断言します。このnoteが「どうしよう…」の背中を押せていれば幸いです。

万が一、このnoteに背中を押されて受講したという方がいたとして、継続がしんどくなったときにはいつでも相談に乗るので、お気軽にTwitterなどでご連絡くださいねb

それでは、良き編集スパルタ塾ライフを!

お読み頂きありがとうございます!まだまだ伸び代なので、ぜひフィードバックなども嬉しいです!