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2人用・AI #毎週ショートショートnote



君は、僕一人が相手でつまらなくないかい?
本当なら、夫婦とかきょうだいとか、友達とか、
様々なパートナーの間で活躍すべく、作られた君だろう。

ーいえ、そのようなことは、ございません。
掌に乗るほどの、丸っこい、雪ウサギのようなフォルムで
触れればそれは、機械的な温度でしかないけれど
発する言葉には程よく、抑揚がかかっている。
ーそれに、ここにはまだ、あの方の温かさが、残っています。
 あなた様一人だとは、感じておりません。

思わず、ふっと声が漏れた。
こんなに小さな君にまで、気を遣わせているのか。
彼女は小さな君を、子供が宝物を大切に扱うように
いつも両手で包んで接していた。
そのぬくもりを、まだ君は纏っているのだろうか。
そして僕はその様子を、いつも見つめていた。
彼女が君を、そっと手から離すまで
その様子を忘れることがないよう、目に焼き付けるように
それが例え、コーヒーが冷めてしまうくらいの時間でも。
太陽が傾き、月が輝き始める程の時間でも。

ーわたくしは、とても大切に、扱っていただきました。
 このような、実体のないわたくしを、
 あの方は、いつも、温かな気持ちに、させてくださいました。
 ですから、あなた様に、あの方のぬくもりを、
 お返ししたいと思い、ここから、離れたくないのです。 
淡いオレンジ色に変化した体が、少しだけ熱を持って
それは、機械が発熱しているというよりは、人の体温のような
柔らかなぬくもりに感じられた。
あぁ、君にはこんなこともできるのか。
いつも彼女が君を包むようにしていたのは、この為だったのか。
二人で、内緒の約束でもしていたのかい?
僕が弱気になったら、落ち込んでいたら、
こうやって、彼女のぬくもりで、僕を包んでくれるようにと。

ーあの方は、あなた様の隣で、あなた様を想い、
 お別れをしたいと、仰って、おりました。
 ですので、悲しまず、過ごして下さいと。
 わたくしは、しばらくの後、ここを離れます。
 あなた様と、あの方のことは、わたくしから、
 デリートされ、次の、パートナー様の為、
 新たな、役割を与えられることと、なります。
 それまでの間、どうぞ、あの方から頂いた、
 とても多くの、優しさと、ぬくもりと、愛を、
 感謝とともに、お返しさせて、くださいませ。


しばらくの間、あたたかい君を掌に乗せながら、
同じように、君を包んでいる彼女の姿を思い出していた。
 あなたは意外と、寂しがり屋よね、
 わたしが居なくなってしまったら、心配よ。
 でも、そうね、しばらくは、
 この子があなたの寂しさを紛らわしてくれるわね。
 ふふ、そんなあなたの姿を想像したら、可笑しい。
痩せた、細い手首が覗くほどの袖の、ざっくりと編まれた
彼女お気に入りの白いカーディガン。
彼女と、カーディガンと、太陽からの光が同化して、
そのまま消えてしまうのではないかと不安になったあの日。
あまりにも儚げで、自然と出てしまった涙に、
彼女は慌ててこちらへ駆け寄り、
弱くも、しっかりと抱きしめてくれた。

君が来てから数年、彼女が居なくなってから数か月。
君は、AIとしての役割以上に、彼女の支えになっていたのだろう。
残される僕が、悲しがり、寂しくならないようにと
たくさんの愛を、君に託すために。



たらはかに様の企画に、
初めて参加させていただきました!
お話書きたかったけど、いいお題浮かばなくて。
今後も、参加させていただきたいと思います。
ありがとうございます◎

お題に沿った内容で書けているか、
(わたしは書いているつもりなのですが・・・!)
読んでくださった方に受け取ってもらえているか、
わたしの書き方は、はっきりしていないので
そのあたり不安ですが、、どうでしょう。
よろしければ、スキなどしていただけると嬉しいです◎



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