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狭い台所で

 私の狭い台所(2019)

料理を作っている最中に 海苔の缶の上に
鍋の蓋を置いたり、とにかくスペースの確保を
しなければ調理をすることも、まともに出来ない、私の台所。
そこには小さなテーブルを置いた。
そして小さなベンチタイプの椅子。
2人向き合って座るしかできないほどの物。
そんなテーブルも随分探して
やっと見つけてきたのでした。

ほんの5畳ほどの台所。
私の唯一の キッチンスタジオ。
私は そこで 夜中にパンを、焼いたり クッキーを作ったり
時には、梅の実を何キロも洗ったり
そして、梅干や梅酒を作ったり。
最近は 家族の食事を作るだけではなく
仕事先へ、もっていくお菓子を作ったり、すぐ近くに住んでいる 
高齢の母の食事を作ったり
狭いながらも 私のキッチンスタジオは
大活躍している。

シンク流しの上は 出窓になっているが
窓は開けた事が無い。
窓に面するのは、裏の家の基礎の部分であるブロック塀。

地主に裏の家の基礎が2Mもあり、南側にも関わらず、我が家に
日が当たらない事になるとは、告げられていなかった。
まんまと騙された!しかし、この地を買ってしまったから
だから30年近くここに住んでも
その出窓を開けたことはない。
南向きの台所なのに 残念な出来事だった。

結婚してすぐに子供ができて、その子供がよちよち歩きの時に
この家を建てて引っ越してきた。はじめの頃は、私は台所に立つと
何とも言えない喪失感を感じた。
気分が落ち込み暗くなった。
狭いからか。原因はそれだけではなかった。

お見合いで結婚した夫は
引きこもりの、一時流行ったいわゆる、冬彦さん。
私は自分の人生にうんざりしていた。
幼子を散歩に連れて行って、公園で子供の遊ぶ姿を
眺めながら、音楽の勉強などをしたり・・そんな毎日だった。

それでも時は流れ、否応なしに変わっていく現実があった。
その狭い私の城で泣いたり、笑ったり楽しい時もあり
家族で食事をして、ここで生きて来た。

今は、この狭いキッチンに感謝をしている。
「ありがとうね!!」

 

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