彼女が書くと、ニュースはもうニュースじゃなくなる

あまり、読むのが得意ではなくなってしまった。小学生の頃は、お昼休みも図書館にこもりきりの本の虫だったのに。大人になっていつのまにか読むことが苦手に、というか、"へたくそ"になってきた。

興味のない分野の読みもの、とりわけニュースなんかは、読むのが億劫である。SNSで著名人や頭の良さそうな人のあいだでシェアされる、いわゆる"バズってる"記事があると「読まなきゃいけないんだろうな」と思ってページを開くも、数行読んだだけで一気に下までスクロールし、先が長いことを確認すると、「もういいや」とすぐさまブラウザを閉じる。私はものぐさだ。

でもなぜか、この人が手がけるニュース記事だけはなんとか読める。というか、読んでみようかなという気力が湧く。中川明日香さんだ。

明日香さんが書く記事の素晴らしいところは、リード文。文章全体のはじめの部分である、導入文だ。

みんな彼女が書く文章の虜だ。もちろん私も含めて。

なぜ彼女のニュースなら読めるのか?

なぜ彼女のニュースは、こんなものぐさな私をも「まあ、読んでみようか」と思わせてくれるのだろうか?

理由は、彼女が手がける文章構成の魅力だと考えた。

まず、何といってもその素晴らしいリード文で読み手をグッと惹き込み、離さない。まるで自分がそのニュースの登場人物になった気持ちにさせてくれる。リード文で一気に没入させ、気づいたときにはもう記事の中盤(=ニュース本体の入り口部分)に到達している。そして、「もう少し読んでみようかな」と進んでいくと、わかりやすい説明でリード文の"伏線回収"がされる。「もうそろそろ終わるかな」と読むのをあきらめそうになった瞬間に、見計らったように末文に差し掛かかり、全体を風呂敷でくるむように美しい言葉で結ばれる。すべてがちょうど良く、気持ちがいい。

初めて彼女が書いたニュースを読んだとき、「あれ、私にもニュースが読めた、すごいな」と思った。

ニュースっていうのは、そもそも他人事である。だから、他人に興味がないタイプの人間にとっては、興味が湧きづらいのは普通のことだ。でも、彼女のニュースを読んでいると、情景や色、音や匂い、そして自分の姿さえも目に浮かぶ。

彼女が書くニュースはもはやニュースじゃなくて、映画だ。よく考えてみれば映画も他人事だけど、いつの間にか感情移入していたり、登場人物に自分を重ね合わせていたりする。それと似たようなことが、彼女の文章の中で起こっている気がするのだ。

と、勝手に分析してしまったが、彼女が本当は何を思って書いているのか、私はよくわからない。数回しかお会いしたことはないし、特段親しいわけでもないし、彼女について実はよく知らないのだが、憧れる対象の一人であることは間違いない。まあ、つまりただのファンである...

明日香さんが世界中のニュースを書いてくれたら、きっと私は「まあ、読んでみようか」がもっと増えて、そしたら、今よりずいぶん賢くなれるのかもなあ、なんて思ってしまう。

これからも応援しています。

✳︎

上記記事を書いたすぐあとに、UNLEASH(明日香さんが記事を書いているメディア)の編集長・モリジュンヤさんがニュースの書き方についての考えをまとめていました。(私の考察も一部引用されています。)

合わせてぜひどうぞ。


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