まじめに生きるって損ですか_

まじめに生きるって損ですか?

『まじめに生きるって損ですか?(雨宮まみ)』という本を読んだ。

この本は、匿名で寄せられた悩みに、著者である雨宮まみさんが答えるというものだ。

解決はもちろんできることならしたい、したいけれど・・・。心の中とは、いつもそんなすっきりきっぱり解決できることばかりではありませんよね。もはや悩みなのかどうかすらわからないけど、なんだか自分の中でわだかまっていて消えない気持ちや、処理できない感情なんかもあります。

「そんな愚痴のようなものを、解決はせずにただ聞く」というコンセプトで集められた相談者の心の叫びは、多種多様だ。

家族の問題、人間関係の不和、年を重ねることに対する不安。ほかにも、愛されたい、褒められたい、大人になりたくない。のような一見ワガママに聞こえるけど、その人にとってはいたって切実な相談。

本のなかには、身近な人には打ち明けられない、どこにも吐き出せない、あらゆる年代の女性の心の内が並ぶ。

誰にも言えないでいたであろう、言葉はストレートで切実で、その人の本心がかなしいくらいに滲みでている。もうどうしようもできない、そんな切羽詰まった苦しさが感じられる。

親しい人にも言えない心の内は、どこにも行き場がなくなって、澱のように自分のなかにたまっていくしかない。そして消化されずに、残っていく。

けど、言葉に感情を乗せることで救われることもある。

苦しみや悲しみって、そんなに簡単に「わかる」ものじゃないです。つらい気持ちっていうのは、すごく個人的でその細部は自分にしかわからなかったり、自分すらわからなかったりするものです。
もっと苦しい人がいるから、自分の苦しみなんて軽いものだと考えることは、間違っています。自分が苦しいと感じたら、それは「苦しい」っていうことでいいんです。

著者は、最初に言ったように、そんな相談者の悩みをスパッと解決するわけではなく、隣に座って肩を抱き、あたたかい飲み物をすすめながら、どうすればいいか、一緒になって考える。

相談者の状況とぼくの生きている状況は、違う。けど、その赤裸々な愚痴をまったく理解できないとは思わなかった。むしろ、わかるな~と思う部分も結構あったし、なにより著者の優しくも本質をついた言葉に涙が出そうになった。

生きるのはしんどい。

著者は、現代にはびこる「生きづらさ」を肯定して、そのうえでどうすれば、つらさが解消されていくか、気持ちよく呼吸できるようになるかを考えていく。その個人的な苦しみや悲しみを否定せず、受け止める。

たしか臨床心理学者の河合隼雄さんが言っていたと思うのですが、

人を助けにいく人は、強い人が多い。けど助けられる人からすれば、たまったもんじゃない。そこで劣等感のようなものを感じてしまう。自分とは違うんだと。臨床心理士は、どんな人が来ても、その人と同じ強さにならないといけない。

雨宮まみさんは、そういう態度を自然にできた人なのではないだろうか。人の弱さ、脆さを知っている。

だからこんなにも愛にあふれる言葉を返せて、その言葉がスッと自然に心に入ってくる。

みんな、生きているだけで偉いと思います。

本文中に出てくるこの言葉が、いま生きているすべての人に必要だ。



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