散文詩 金魚 279文字
水面に浮かぶ背びれの襞の一枚一枚
普段ならそう見えないはずのそれも
はっきりみえる おわりがきている
動かないエラ
それでも
呼吸を続け絡まった藻に立てかける
水面にまたのけ反った
そしてもう会えない人のことをかんがえていた
会いたかったか
話したかったか
聞いてほしかったか
笑ってほしかったか
見ていてほしかったか
いつからだろう。心が安らぐ時間を見つけられるようになったのは。
なぜだろう。話してみてもいいとおもえたのは。
それらの疑問を打ち消すかのように。
うつくしい魚のからだはあぶくを失い光の藻を纏いきえていった。
水面には一粒のしずくが落ち、波紋が咲き水槽を彩っていた。
END
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