【インタビュー】山下陽光さんにお聞きしました

山下さんは、ネットショップBASEにアップすれば即完売のリメイクブランド『途中でやめる』の服を作りながら、『バイトやめる学校』というイベントを全国各地で行い、2017年には、同名の本も出版されています。仲間と手がける『新しい骨董』でも、斬新な視点で、世の中のあらゆる”もの”に価値を見出しています。常に社会を様々な角度から見つめる山下さんが、今気になっていることをお聞きしました。

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ー 最近はまっていることってなんですか?

村上隆ですね。今、熊本市現代美術館で『バブルラップ』という展示をやっているんですけど。

村上隆(むらかみ たかし):日本の現代美術家・ポップアーティスト・映画監督。(有)カイカイキキ代表取締役。

3年ぐらい前に横浜美術館で村上隆のコレクション展をやってて、それがめっちゃくっちゃ良かったんすよ。怒涛の自分のアートコレクションを、これでもかっていうくらい並べていて。買えないお店みたいなかんじで。

奈良時代の屋根の瓦や、GROOVISIONSのChappieちゃんや、古道具坂田で買ったボロ雑巾とか、もう、全然脈絡ねえじゃん!みたいな。

古道具坂田:坂田和實氏が1973年、東京目白に開いた古道具屋。
坂田和實(さかたかずみ):1945年福岡生まれ。上智大学卒業後、商社勤務を経て、様々な国の品物を扱う「古道具 坂田」を開店。1994年には千葉県に、美術館「as it is」を開館。

そして、このあいだ村上隆が、中野のカイカイキキで、バブルラップについて話すってことで、そこに行った友達に内容を聞いたらめちゃくちゃ良くて。

たとえば、日本と西洋の美術の違いについて。これはまあよく言われる話なんだけど...

美術館って、戦争に負けた日本やドイツは、国や公共機関がつくっているけど、アメリカ・ イギリス・フランスとか戦争に勝った国では金持ちがつくっていて、そのあり方は全く違うんだと。

そして、自分(村上隆)の作品は、"みんなのために" とは全然思っていなくて、戦争に勝った国で全ての経済を牛耳っている2%の人たちに向けて作っているんだと。自分はそれで飯を食っているから、戦争で飯を食わせてもらっているようなものだ...と言っていて、覚悟の仕方が違うなと思ったんですよ。

アーティストって元々は、突き抜けた雲の上の存在だったんだけど、現在...特に震災以降は、そういう人たちがどんどん下に降りてきたような感じがしているんですよね。やさしく・友達・一緒・平等...みたいな空気があるなあと。

でも、村上隆って、そういう "目立たないように" とか "みんな仲良く" みたいなの、関係ねー!っていう感じで。やっぱりただもんじゃないなと思って。

そんな村上隆が、「日本で今これだっていうのは古道具坂田だ」と、「古道具坂田はアートとして素晴らしいと」と言っているんですよ。

熊本の展示は、古道具坂田を忠実に再現しているらしいから、是非行きたいなと思っていて。

俺、古道具坂田には2年前に行ったことがあるんですけど、壊れた椅子とかあって、これ何ですか?って聞いたら「椅子だけど店を出た瞬間ゴミになるよ」って言って売るとか、とんでもないことをやってのける人で。

ー『古道具 坂田』では、他にはどんなものを扱っているんですか?

コーヒーを淹れたあとのフィルターのゴミとか。坂田さんは、千葉県に自分の美術館もつくった人なんですけど、そこでは、たとえばおじいちゃんがチラシの裏で作った封筒の展覧会なんかもやったりしていて。もう、何かとやばい人なんですよ。新風しか起こしてない。最近は体調を崩されてよく休んでますけど。

ー 山下さんのやっている『新しい骨董』も似てますよね。これって、坂田さんのことは全然知らないうちからやってたんですよね。

知ってたらやれなかったですよね。知らなくて良かったけど。

自分は『バイトやめる学校』とかやってきたけど、結局みんなバイト辞めないし、これまで、「いかにその人に寄り添えるか」っていうことを考えてたけど...

経済はどんどん悪くなっていくし、「好きなことで生きていく」とかみんな言うけど、それは無理だから、とりあえず食い扶持を見つけて暮らせる状態を作れたら、好きなことをやって生きていけばいいよなと思って、

そう伝えることを、去年ぐらいまでひたすら頑張って、20人くらいバイト辞めたら面白くなるかなとか思っていたんだけど…うーん。

そんな時に、村上隆みたいに振り切れた人の話を聞くと、自己啓発本みたいなものを読むよりも、「信じられん!!!」みたいな振り切れ方をしている人を見たほうが、人はやる気になるんじゃないかと思って。

だからもう、何か自分が好きなことをやりまくろうかなっていうのを最近すごく思っています。

ー と言うと、どんな方向を考えているんですか?

実際今、好きなことはできてるから、なんでもいいんですけど。ただ、お金や時間かかったりする部分に関しては、仕事のやり方を変えようかなとか。

服を作る以外の、たとえばイベントとかでもらうお金って月に3~4万円ぐらいなんだけど、それがもう少しもらえたら…まあ、あまりもらおうと思ってないんだけど、でもそっちがちょっとお金になるんだったら、服の仕事をちょっと休んで他にもやりたいことができるかなと思っていて。

なんか、べつに野心ていうかはそんなに無いんですよ。

まあ、経済的にはなぜかずっと苦しいんですけどね。服はめちゃくちゃ売れてるのに。

ー でも服の値段を上げたりとかはしたくないんですよね?

多分今みんな、洋服ってそんなに欲しくないだろうと思っているんですよね。そこに枯渇状態を作って「去年のこれとは違うよ」って言って売りつけるのもなあと。それならもう、みんな中古で共有し合えばいいじゃんとは思っていて。

でも、それをやらずに服を作り続けてるのは、家族暮らさなきゃいけないっていうのがあるからで。それはお客さんのためじゃなくて自分のためだから、だったら服以外の違うことで稼ぐのがいいんじゃないかなと。

『新しい骨董』しかり、面白そうな事を考えたりしている時が一番楽しいんですよね。

今、ベーシックインカムみたいに、移住したら毎月5万とか10万とかあげるっていうの、全国にいっぱいあるじゃないですか。でもやるかって言ったらみんなやらないじゃないですか。なんかずっと東京にいなきゃいけないとか思っちゃっていて。

ー 山下さんが「福岡家賃安いよ!」と言ったら「本当だ、安い!!」って言われるけど、実際引っ越さないですしね。やっぱり変化することって怖いんですよね。

だって au・docomo・SoftBankの三大キャリアじゃないところに替えるだけで、毎月8,000円も安くなるのにやらないし。それで300円ぐらいの牛丼が毎月タダになるとか言って喜んでるし。

まあ、替える手続きががめんどくさいんですよね多分。で、「お金ない」って言う。そして10円安い納豆探していたりするけど、いやそれ違うんじゃないかなっていう。

家賃とか携帯とか、一番高い固定費を安くしよう!福岡なら家賃5万円安くなるし、5万円安くなれば年間60万円仕事しなくていいんですよ!って言ってるし。

でもやんない人はやんないし、まあ東京の方が楽しいんだろうけど。

ー でも東京はお金ないとつまんないですよね。たまに行くと面白いですけど。暮らすとなるとやっぱり生きていくのに精一杯になっちゃう。

ホリエモンとかって、10年以上前からこの感じに対して、ずっとイライラしてたんでしょうね。フジテレビ買うとか、今だったらすごいわかるのに、あの頃は狂人扱いされていて。

今だったらAbema TVとテレビ朝日が提携してるような状態とか、CM中に雑談してる感じも見られるとか、そういう感じが分かるけれど、ホリエモンはあの時に、そういうことを言ってたんだなと思って。

ー 時代に対して早すぎたんですね。

当時、会社は既得権益を守りたいみたいな感じだったじゃないですか。ホリエモンはそういうのとずっと戦ってたんだなと思って。なんかネットで稼いでるけど狂人、みたいな扱いをずっとされていて。

10年前のホリエモンの文章とか読むと、おもしろいんですよね。今やっと理解できるって言うか。3~4年前でも、もう仮想通貨の話とかガンガンしててちょっと分からないんですけど、10年前だとちょっと分かる。

『本人』っていう松尾スズキがやってた雑誌があって、2009年に出ていた、ひろゆきが表紙のやつを古本で買ったんですけど、今読み直しても面白くて。ひろゆきとホリエモンのインタビューが載ってて、それを10年後の今、やっと対等なレベルで理解できる。

あの人たちは2009年に、2020年ぐらいのテンションしゃべってるんですよね。

「日本はどんどんダメになっていく。もう好きなことで暮らしていくしかない」って、震災も起きてないのにこんなに先が見えてるんだっていう。この頃からブレてないんですよね。

俺、日本のダメな感じって戦後からだと思ってたんですよね。みんな同じじゃなきゃいけないとか。

でも最近、遠藤周作の『沈黙』を Amazon プライムで見て、あれってホント何百年前の話なんだけど一緒なんだよね、同調圧力とか。上がダメと言えば全てダメ。もともとそういう国なんだなと思って。

だからもう変えようがないっていうか。

お金があったり景気が良ければうまく回るから、バブルの時はよかったけど、社会は今お金がなくなってしまって、人の気持ちを踏みにじるようなことがいろいろあって。何を信じていけばいいんだろうと。

ー 今までは、山下さんができることで変えてきたいっていうのがあったけど...?

たとえば、「栃木県の那須塩原って年収二千万の人が二千人いるらしいよ」とかがありえないっていうことは、みんな分かっているし、世の中大体こんなもんだろうっていう想像は、ついてしまっているんですよね。

だから自分は、本当に「学校」をやるか、本当に好きなことをやるか、あとは、ZOZOTOWNの前澤さんみたいにインターネットでやんちゃするとか。

オフラインでめちゃくちゃ面白いことを、仕掛けとしてじゃなくて、本当に面白いことをやるとか。

ー 本当に面白いこと!なんだろう。

分からないけど、たとえば、丸Tシャツやトレーナーを、100枚作ろうが50万枚作ろうが買う人の値段は変わらないんだったら、50万枚アジアでぐわっと作って色んな所に納品して...と考えたら、100枚とか作ってた時の利益率からは考えられないくらいお金が入ってくるわけで。

山下さんのブランド『途中でやめる』の服は、BASEにアップした瞬間に完売する。「丸Tシャツ」「丸トレーナー」は『途中でやめる』の定番商品。

そういうことって今まで俺のやってきたことの中ででやろうと思えば、毎日10万円もらうことも、全然不可能ではないわけで。後々、そのやり方嫌だって言う人は出てくるかもしれないけれど。

でも、金をめちゃくちゃ稼ぐっていうのも面白いのかもしれない。

ー それは今までやってなかったことですよね。

やってないですね。

ZOZOの前澤さんがやった、100万円を100人にって、無茶苦茶よかったじゃないですか!だって子供の頃、100万円あったら何するかって話したじゃないですか。それがリツイートするだけで手に入るかもしれないなんて、やるしかないじゃないですか。あれを非難する意味が一個も分からないんですよね。

ー 本当に分からないですよね。。。

あんな人世の中にたくさん出て欲しいじゃないですか。「前澤くんがやるなら僕も」みたいな人。実はきちんとした人にお金渡してたって言うけどそんなの当たり前じゃないですか。

PayPay100億円キャッシュバックって、ZOZOの100倍お金を使っていて、しかも CM制作費も別なわけだし、ハズキルーペの広告費用って50億円らしいんですよ。

前澤さんて、PayPayよりもハズキルーペよりも何よりも、世界一リツイートされたっていうのがすごいですよね。たった1億円で。

だったら、俺が1万円払うって言ったら、使い方次第で1万円以上の効果が多分あるんじゃないかと。そんなことできる今って、すごい時代だなと思って。

なんかそういうユーザーや消費者が得する世の中になっていく方が絶対楽しいよなと。Facebook とか Twitter とかインスタとか、まあ自分のデータとか吸い上げられてると思うけど、やってる人が楽しいから続くんだし。だからリアルがそうなるべきだと思ってる。

だからうちで牡蠣無料ですよとか(山下さんの自宅で開催しているイベント。牡蠣を無料で提供して、『途中でやめる』の直売やトークなどを行っている。)楽しいしどっかで帳尻合うだろうと。

今、全然合ってないんですけど。笑

これで合わない世の中、何かおかしいんじゃないって思うんですよね。

ー 私も合って欲しいです、そういう人の帳尻が!

まあ、こうやって自分がマイナスになってもプラスになっても、せいぜい10万円とか20万円とかだし、なんかみんなセコセコしすぎてるんじゃないかと。こんなにテクノロジーが進化してるのに、「景気が悪い」の一点張りで「自分だけ損したくない」っていう感じで生きてる人がいるのは切ない。

中国はめちゃめちゃ景気が良くてテクノロジーも進化してるから、かつてない面白いことがどんどん出てきてるんじゃないかって思う。

日本のここ10年とか、みんなテンション下がりまくっていて。でも、たとえば今この瞬間にここから「生放送始めます」とかできるわけじゃないですか。

...とか言っても「あっそう」みたいな感じでしかないし。ちょっと待ってよ、これ10年前できなかったぞって、しかも誰でも今見れる環境にある面白いじゃんって....

やり方次第では本当に働かないで暮らせる感じになってる。でもそれでもやるかやらないか。

ほんと10年前とか、高円寺で素人の乱をやっていて、みんなに「店をやった方がいいよ」って、50万円とか100万円とかかかるけどって言っていて。でも今お金かからないじゃないですか。こんなにハードルが下がって誰でも簡単にできるようになって。

おそらく、PayPayみたいな、誰でも気軽に参加できるサービスとは、これからもどんどんできてくるんじゃないですか。そして金持ちがどんどん太っちゃうみたいな。

みんな、自分たちが変わることよりも、法律で今日から変わりますって決められることに慣れすぎていると思うんですよね。

ー みんな、誰かに決めて欲しいんですよね。

まあ自分も決めて欲しいんですけどね。でも、決めてもらうとなるとそのぶんのお金もかかるんだよっていう...

ー 「決めてくれたら諦められるから」っていうのはある気がしますね。みんなやってるし、みたいな。それでも私は今の社会、だいぶ生きやすくなったなあとは思っていますけど。

俺、イチ抜けになるのが嫌なんです。

自分だけが楽しくやるとか、どうすれば家族だけは楽しく暮らせるかみたいなことはあんまりやりたくないっていうか。できるんだけど、でもそれみんなやってきたことでしょうっていう 。

でもやんない人相手にするよりは、やる気ガンガンのわけわかんないやつとかに...

ーそうですね!やる気あってうまくいってない人をとりあえず最初に...

やる気あってうまくいってないとか惜しすぎますもんね。

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山下さんの服がBASEにアップされるたびに、いつもその斬新さにときめいていたけれど、今回いろいろなお話しを聞きながら、山下さんが培ってきたものや、未だ探求し続けているもの、あらゆる方向に伸びているアンテナ、そういった、境地の片鱗が、『途中でやめる』という服の上に垣間見えているんだなあと感じました。

そして、山下さんの「イチ抜けになるのが嫌なんです」という言葉が強く心にに響きました。もう好きなことをやりまくろうかなと言う山下さんのこれからが、とても楽しみです。

山下陽光(やました ひかる)
リメイクブランド『途中でやめる』主宰。1977年長崎生まれ。東京での古着屋経営などを経て、現在は福岡市在住。イベント『バイトやめる学校』や、最先端の過去を見出す『新しい骨董』なども手がけている。

Twitter https://twitter.com/ccttaa
途中でやめるショップ http://tochuyame.thebase.in/

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いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。マガジン第一弾(36ページ)は、ご連絡頂けたら無料でお送りいたします。maricommu82@gmail.com

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ナカヤママリコ

'82年生まれ。山梨県北杜市出身&在住。実家暮らし独身。会社員を辞め、自宅で花の苗を栽培しています。たまに東京や山梨で音楽イベントやトークイベントの主催もしています。お問い合わせはmaricommu82@gmail.com へお願いいたします。

インタビュー

2018年8月から始めたインタビュー記事です。これから、あらゆるジャンルの方々にお話を伺っていきます。
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