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小説サンプルテキスト



【作品概要】

・対象性別や年代を問わない
・1,000文字以内
・少し切ない物語

【サンプルテキスト】

「今日はケーキの日」

小学校三年生のとき、紙切れを渡された。名刺大に切った広告の裏に、『ショートケーキ一個無料』と書かれていた。
これを貰った理由は、拓也君の誕生日会に行かなかったからだ。彼の家は、町で唯一の洋菓子屋さんだった。ちょうど一週間前、昼休みの教室は興奮に包まれていた。

「みんな聞いて! 日曜日の誕生日会ではね、大きなバースデーケーキが食べられるんだ」

噂好きの女の子が発端となり、自分も出席したいという声が溢れていく。野球少年たちは、練習を休むための言い訳を考えている。おしゃれな女の子はうっとりとしきりだ。とっておきのワンピースが、生クリームで汚れてもかまわないと漏らす。
話は既に、みんな誕生日会に行く形で進んでいた。拓也君はにこにこ笑って言う。

「僕は、全員にお祝いしてほしいな」

クラスメイトは万歳三唱でも始めそうな勢いだ。職員室から担任が飛んできて、昼休みはお開きになった。
それぞれの席に戻る途中、拓哉君とすれ違った。

「ひかるちゃんも来てくれるよね?」

聞こえないふりをして椅子に座る。
今さら言えるわけがない。日曜日は私の誕生日でもあったのだ。

その日、我が家でお祝いの会が開かれた。集まったのは家族だけだ。母親からは友達を呼んでもいいと言われていた。

「私ね、家族だけでゆっくりしたかったの」

心配する母に、嘘を吐いた。
祖母お手製のちらし寿司を食べても、気になるのは拓也君の誕生日だ。予約していた不二家のケーキも、つまらないものに見えた。
次の日、学校に行くと彼は笑顔で言った。

「来てくれなくて残念だったな。これ、あげる。うちのケーキはおいしいんだよ」

「ありがとう」

人気のない女子トイレで、破って捨てた。

【プロフィール】

花見田ひかる(ハナミダヒカル)
2014年 シナリオライターとして活動開始。
ゲームのシナリオ・キャラ設定・プロット等の執筆を中心にお引き受けしてまいりました。
男性向け・女性向け・全年齢向け、いずれも執筆可能です。
大学では小説・脚本の創作手法を学んだため、ゲームのシナリオ以外でも幅広い物語作りのお手伝いが可能です。近年は小説やドラマCD脚本・音声作品の台本を書く機会も多くなっております。
また、別名義にて企業のプレスリリース、WEBメディアのコラム記事・インタビュー記事の執筆も行っているため、エンタメ系から真面目な文章まで対応できます

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シナリオライターの花見田ひかるです。主に自作小説を綴ります。サポートしていただけると嬉しいです!