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ちょこっと深掘り

地方紙に載った記事を『経営者』という観点で、ちょこっと深掘りしてみたいと思います。
今日の記事は、東海新報 2024年3月19日付の「就職内定率は95.7%」です。
(東海新報 https://tohkaishimpo.com/


記事は、岩手労働局がこの春卒業する高校生の1月末現在の職業紹介状況を公表した旨を次のように報じている。

岩手労働局(栗村勝行局長)は、県内の令和6年3月新規高校卒業者に対する1月末現在の職業紹介状況を公表した。同月の内定率は、全体が95.7%、県内が94.6%。前年同期と比較して、全体は1.6ポイント、県内は2.2ポイントいずれも低下した。
県内の卒業予定者は9539人(前年同期比583人減)。求職者は2095人(同125人減)、県内での就職希望者は1492人(同142人減)。1月末時点の求人数は2479件5833人。前年同期と比べて14件、84人それぞれ減った。

東海新報 2024年3月19日付

続いて、公共職業安定所別の求人状況、就職内定者数が示された。
さらに、

県内外就職内定者割合は県内70.4%(同2.8ポイント減)、県外29.6%(同2.8ポイント増)。県内の割合が7割を超えるのは、4年連続となった。

東海新報 2024年3月19日付

と県内就職が高い割合であることが強調され、後段では「大学生は前年を上回る89.5%」という見出しで就職内定状況を伝えています。

記事は、正確な数字を用いて客観的なもので、前年に比較して若干内定率は低下したが、多くの高校生が今年も仕事に就けるんだと安堵するような内容となっています。

確かに就職する側の高校生にとっては良い状況といえますが、経営者からみた場合はどうでしょうか? ちょこっと深掘りしてみます。


岩手労働局では、新規高校卒業者の職業紹介状況を9月末から翌年6月末まで毎月発表しています。それらの情報は、ホームページに「新規学校卒業者の職業紹介状況」として、2020年から毎年データが掲載されています。
(岩手労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/home.html

経営者視点でみると、今後も継続して新規高校卒業者の就職希望者(求職者)がいるのか、それはどのくらいかということがポイントになると思います。

まず、岩手県内の新規高校卒業者と就職者の推移をみてみます。

2024.3卒 卒業者  9,539人 就職者 2,095人 就職者割合 21.96%
2023.3卒     10,122人     2,223人       21.96%
2022.3卒     10,547人     2,347人       22.25%
2021.3卒     10,800人     2,542人       23.54%
2020.3卒     11,432人     2,890人       25.28%

次に2024.3卒と2020.3卒を比較してみます。

卒業者数 2020.3卒 11,432人 → 2024.3卒 9,539人
     1,893人減 △19.84%
就職者数 2020.3卒  2,890人 → 2024.3卒 2,095人
     795人減 △37.95%

これらのことから次のことが言えます。

  • 2020.3卒の就職者は4人に1人だったが、2024.3卒では5人に1人に減った

  • 2020.3卒と2024.3卒の減少幅は卒業者全体(△19.84%)より就職者(△37.95%)と大きい

これらのことは、少子化の進行で新規高校卒業者が減っている上に、進学する者が増え、高校卒業で就職する者の実数が大きく減っているということが分かります。

つまり、新規高校卒業者を採用したい企業にとっては、対象となる母数が減り、採用が厳しくなることを示しています。別の角度から見ると、高学歴化が進行しているとも言え、今後、大学卒業者や専門学校卒業者といった人たちを採用対象にしていかないといけないことも表しており、昨今の賃上げ基調のなかで人件費の占める割合が高くなることも示しています。

こうした状況を踏まえて、近未来の採用をどうするのかを考えておくことが必要となっています。

記事では、県内就職者の割合が4年連続で7割を超えたとありますが、実数をみてみると楽観できるような状況ではないと思います。


いかがだったでしょうか。
記事は、事実を的確に数字で載せていますが、どの視点で見るかによって違いが出てきます。今回の記事では、新規高校卒業者の立場から見た内容と言えるでしょう。経営者視点に引きつけて見ることで、より立体的に事柄が見えてくるのではないでしょうか。

今後も気になった記事をちょこっと深掘りしてみたいと思います。

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