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書評:頭がよくなる思考術

書評シリーズ 第2回は「頭がよくなる思考術」です。帯には「6年間ひそかに売れ続けて10万部突破!」とあります。著者は白取春彦さん。ベストセラー「超訳ニーチェの言葉」の作者です。

白取さんは、まず「考える」とはどういうものかを整理しています。その上で「答えを出せる」「迷わない」「楽しく生きる」「クリアな」「創造する」の5つの分野で短くも的確な表現で頭のつくり方を列挙していますので、初めから読んでも、気になるところから読んでも役に立ちます。

「考える」を状況や事情によって6つの傾向に分けています。

  1. 利己的選択の思考・・・自分に最も多い利益をもたらすかの考え方

  2. 経験の反省にもとづいた思考・・・これまでの経験からの想像

  3. 感情的混乱の妄想・・・怒り・悲しみ・忿懣など感情が乱れた時の妄想

  4. 知識の連絡のよる思考・・・一般的な状況理解の時の考え方

  5. 本質把握のための思考・・・事実を基礎に洞察して抽出する思考

  6. 論理的思考・・・専ら数学や論理学における抽象的思考

そして、どれか1つのみではなく、2つか3つが組み合わさって日常の思考となり、この6つを知っていることで自分や相手が今どのような考え方をしているのかを分かるとしています。

しかし、感情的混乱の妄想のときに冷静になれるかどうかが問題ですが……

ここから読んで気になったトピックのいくつかを紹介します。
まず「1 書いて考えよ」です。

「考えてもわからない」と言う人がいる。
「さんざん考えてみたけど、やっぱりわからない」
とまで言う。それは考えてないことへの言いわけだ。

「頭がよくなる思考術」白取春彦(ディスカバー・トゥエンティワン)

冒頭からいきなりのダメ出しです。では、考えるとは何でしょうか?

では、わたしたちが考えるときに使う道具はは何だろうか。言葉である。人間は言葉を使っときにだけ、ちゃんと考えることができるのだ。

「頭がよくなる思考術」白取春彦(ディスカバー・トゥンティワン)

そして、具体的な方法として、紙に文字を書くことを提案しています。そして、昨日までわからなかったことがわかり、結論が出なかったものが自然と出るようになると、効果のほどを伝えています。

確かに紙に書かないまでも、言葉を明らかにすることで物事がよく理解できることってありますよね。

でもそれだけでは十分ではないと言うのです。白取さんは「2 言葉の意味を正確に知れ」と続けます。

言葉を正しく知らないのなら、聞いたこと、読んだことを正確に理解できていないのはあたりまえだし、正しく表現できてもいない。それは同時に、世界をちゃんと理解していないことであり、また自分の意見が正しく伝わっていないことを意味するのである。

「頭がよくなる思考術」白取春彦(ディスカバー・トゥエンティワン)

私たちの日常は言葉に溢れています。活字であれ、音声であれ、ずっと言葉のシャワーを浴びている状態なのです。しかもそのシャワーのスピードが速くて意味を理解する前に次の言葉がやってくる始末です。確かに白取さんの言うとおり、意味を正確にわからないまま、なんとなく雰囲気でわかった気になっていることが多いように感じます。

情報洪水だけでなく、仕事でも家庭でも何らかのやりとりをするときに、同じ言葉を使っているのに、なんだか通じないと思ったことありますよね。それぞれが理解している意味が異なっていることが原因で、しばらくチグハグな会話をしたのち、何か変だぞと思い意味を尋ねると違っていたということがままあります。

そんなとき、他人の意見だけでなく、自分の考えや意見も批判的にみないといけません。白取さんは「4 自分の考えを批判せよ」と注意しています。

本当に現実的に有効なものか、事実を一方的に解釈したうえでの考えになっていないのか、損得と利害の面からのみの考えになってはいないか、何かの主義に偏っていないか、あるいは寄りかかってはいないか、黒白つけるだけの単純な二分法に堕していないか、などいろいろと批判してみるのだ。そうすることによって、最初の考えは徐々に修正され、ベターになっていくものだ。

「頭がよくなる思考術」白取春彦(ディスカバー・トゥエンティワン)

白取さんは非難でなく、批判すると言っています。非難とは「欠点やあやまちなどを責めとがめること」であり、批判とは「良い所、悪い所をはっきり見分け、評価・判定すること」です。

しかし、自分の考えを批判するのはとても難しいことです。

私は何か衝突が起きたとき、「自分が変なのかもしれない」と思うようにしています。その場ですぐにはできませんが、結論を急がずにまずは持ち帰ることにしています。

そして、自分が変だとしたら、それはどんな根拠からなのか考えてみるのです。時間をおいて考えてみると、少し客観的になれます。怒りや憤りを感じていたとしても、相手の立場になれば確かに変かもしれないとか、相手の方がこれこれこういうことで変なのだと落ち着いて考えられるようになるから不思議です。


これ以外にもなるほどと思うことが散りばめられています。ぜひ手に取って読んでみてください。

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