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自分が見ているメディアはなにか他人と話そう。(閉じこもるインターネット)

イーライパリサ著「閉じこもるインターネット」を読んだ。自分が触れる情報、ニュースが無意識のうちに偏っていると感じることがあり、過度なインターネットによる情報の最適化に対して危機感を持ったからだ。

1.最適化に対する危機感を持った2つのきっかけ

まずは、わたしが情報の最適化に対して危機感を持ったきっかけを2つ紹介したい。どちらも選挙に関することだ。

まず1つ目は、2019年夏の参院選だ。SNSやYoutubeでれいわ新選組が話題になったり、20代の若者を中心にNo Youth No Japanという団体がSNS上で投票を呼び掛ける活動が盛んに行ったりした選挙だ。

※現在もInstagramやtwitterを中心に政治に関して気軽に話せる社会、ひとりひとりが自分のスタンスを持った社会に向けて衆院選後も活動が続いている。

選挙当日、私は自分のtwitter上の友人たちの8割9割が投票に行っている印象を受けた。しかし、結果は全体の投票率は約50%、20代では約30%と自分がSNS上で感じていた投票率と大きくかけ離れた数字だった。この時、自分がSNSで見ている世界と社会の差、自分が得ている情報の偏りを改めて強く認識した。自分の声は、偏りの向こうに届かないし、逆に偏りの向こうから自分に声は届かない。社会がひどく分断されているように感じた。

2つ目のきっかけは、トランプ大統領選の勝利の裏でデータ分析などの手法を用いて選挙結果に影響を与えていた選挙コンサルティング会社のドキュメンタリー映画「The Great Hack」を観たことだ。

この映画を観てから、FacebookやGoogleでの自分の行動がいつ誰にどのようにいくらで利用されているのかわからないことが不安になった。無料で便利で魅力的なサービスを使う代償に、自分はなにを失っているのかがわからないことも不安になった。そして、この映画で描かれていたように気付かないうちに情報によって自分の思考が操作される可能性に誰もがさらされていることに対して強い危機感を持った。

2.フィルターバブルの問題点

そこで、無意識のうちに情報が最適化されている現状についての理解を深めたいと思い、本書を手に取った。

著者は、インターネットで自分が検索したことを基にして、最適化されて自分の好みにあった情報ばかりにに包まれてしまう状態のことを「フィルターバブル」と表現する。フィルターバブルの問題点は、①情報の最適化によってテレビや新聞だけに触れていた時よりも一人ひとりが孤立すること。②自分が見ている情報がどの程度偏向しているかがわからないこと。そして、③情報の最適化は無意識のうちに行われていることだと述べていた。

今回は、本書の中から主に2つの観点についてまとめておきたい。

①自分ループの危険性

わたしたちは、過去の検索履歴や投稿履歴によって最適化された情報に包まれている。そして、またその中から気になる情報だけを見る。このように、いつまでも意識しなければ「自分ループ」の中から抜け出せなくなってしまう。

本書ではニュースを例に挙げて説明されていた。「自分ループ」に陥ってっしまうと、興味がなくても自分が知るべき遠くの国の戦争や貧困などの問題に触れる機会が無くなってしまうのではないだろうか。テレビや新聞でニュースを見ていたときは、自分が読まなかった記事を認識するが、インターネット上で最適化された自分好みのニュースだけに触れていたら自分が読まなかった記事を認識することすらできない。

「自分ループ」に陥ることで、周りが見えなくなってしまう。そして、周りが見えていないことすら認識できなくなる。

この先、情報の最適化がこのまま加速した時、どうすれば自分が見たい情報だけでなく、自分が知る必要のある情報を見ることができるのだろう。

②失われる偶然性と創造性

自分が触れる情報が最適化されると、その分偶然性は減ってしまうのではないか。そして、新しいアイデアや人と出会うチャンスが減ってしまうのではないか。人間の創造性が失われてしまうのではないだろうか。

本書では、ある「ねずみの習性」が紹介されていた。ねずみは食べ物を探して、1日に30回も同じ場所を通る習性を持っているらしい。そして、同様に人間も情報に関してその習性を持っている。毎日同じウェブサイトをチャックする。違うサイトを訪れたり、訪れるサイトを増やしたりすることはあまりないだろう。その結果、新しいアイデアや人と出会うチャンスは無意識のうちに減ってしまっている。

3.自分が見ているメディアについて他人と話す

このように、わたしたちは無意識のうちに日々触れる情報が最適化されている。その結果、自分の思考の偏りの認識が難しい状態になっているし、新しいアイデアや人と出会うチャンスは減少している。

このまま最適化の波にのまれて自分ループの中だけで生きるのは、とてもつまらないし、とても危険だと感じる。では、わたしはなにができるだろう。

わたしは「自分が見ているメディアについて他人と話してみよう」と思った。

まずは友人や家族といった近い関係の人とでも良い。自分が普段みている新聞、テレビ、ウェブメディア、SNSでフォローしている人と、他者のそれを比較してみようと思う。自分が認識していなかったモノの存在を知り、新しいアイデアや人と出会うことができると思う。



※参考:著者が出演するTedトーク