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空海ついて

【空海】
 空海は、平安時代初期の僧です。讃岐「香川県」の豪族の子として、善通寺で誕生しました。幼名を真魚「まお」と言い、神童だったとされてます。弘法大師という名は、死んでから送られた名前です。遣唐使の留学生に便乗して、国から何の補助も受けずに中国に渡りました。中国で師事したのが、恵果という人物です。空海は、恵果に認められ、真言密教の正統な後継者となりました。日本に帰国してからは、嵯峨天皇から信頼され、高野山の土地を与えられています。そこに高野山金剛峯寺を開きました。また、嵯峨天皇は、平安京の東寺も空海に託しています。空海は、東寺を真言密教の根本道場としました。一般の人々向けには、綜藝種智院「しゅげいしゅちいん」という私設の学校を開校しています。空海には、語学の才があり、中国でも名文家として知られていました。また、書の名人として「弘法筆を選ばず」や「弘法にも筆の誤り」という諺でも有名です。

【密教】
 密教とは、秘密仏教の略称です。それは、言葉では伝えられない秘密の教えとされています。 教えは、秘密裏に弟子たちに伝えられました。密教ではない、普通の仏教を顕教と言います。 日本の密教と言えば、真言宗の「東密」と天台宗の「台密」の二つです。密教は、自力本願の代表で、禅に最も近い仏教とされています。悟りに到るには、個人の実践が必要でした。その修行法の一つが「三密」です。
 三密「さんみつ」とは「身密」「口密」「意密」の3つで、それぞれ「行動」「言葉」「心」を整えることだとされています。その時、口に唱えるのが真言です。三密の行により「即心成仏」が達成されるとしています。即心成仏「そくしんじょうぶつ」とは、生身のまま仏になることです。悟りを開けば、自分自身も仏であること気付き、大日如来と同化できるとされています。

【真言】
 真言「しんごん」とは、仏の真実の言葉という意味です。サンスクリット語では、マントラと言います。それは、神秘的な呪文でした。本来、悟りの内容は言葉では表せません。それをあえて、秘密の言葉で表現したものが真言です。方便として、文字や言語を借りて、真理を表そうとしました。真言を唱えれば、無知の闇が除かれ、隠された宇宙の真理「法」を明らかに出来るとされています。
 密教には、虚空蔵求聞持法「ぐもんじほう」という集中力を増大させる暗記法がありました。その方法は、虚空蔵菩薩の真言を、百日間で百万回唱えるというものです。修行中の空海も虚空蔵求聞持法を行ったとされています。空海が真言を唱えている時、口の中に「明星」の化身が飛び込んできました。その時、悟りを開いたとされています。「空海」という名前の由来は、この時、視界に映っていたものが空と海だったからです。

【十住心論】
 空海の主著は「十住心論」です。十住心論「じゅうじゅうしんろん」には、悟りに至る手順が段階的に書かれていました。その過程を10段階に分類し、それを体系化しています。空海は、人間の心の状態を当時の代表的な思想で分類しました。10段階のうち、9段階までが顕教お教えです。最後の10段階目が、密教の教えとなります。密教は、言葉で伝えられる領域を超えた、人間の心が到達できる最高の境地です。それは、個々の顕教を包摂していました。
 最初の異生羝羊心「いしょうていようしん」 は、欲望「煩悩」のままに生きるている段階です。続く、愚童持斎心「ぐどうじさいしん」 で、儒教的な道徳に目覚め、嬰童無畏心「ようどうむいしん」 で、世俗を超えた、老荘的な宗教心を持つようになります。「唯蘊無我心」と「抜業因種心」は、小乗仏教の段階です。唯蘊無我心 「ゆいうんむがしん」が、自己の悟りを求めことで、抜業因種心 「ばつごういんじゅしん」が、自力で悟りを開くことでした。小乗仏教の段階では、まだ他人に教えようとしません。大乗仏教の段階になって。はじめて他人をも救済しようとしました。「他縁大乗心」「覚心不生心」「一道無為心」「極無自性心」が大乗仏教の教えです。それらは、大乗仏教のそれぞれの宗派に分類されます。最後の秘密荘厳心 「ひみつしょうごんしん」が、真言密教の境地です。この段階で、大日如来の悟りを表現した曼荼羅の世界が展開されます。



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